山の音(やまのおと)の紹介:1954年日本映画。夫の浮気に悩む女性と、彼女を細やかに労わる舅の姿を描いたヒューマン・ドラマ。老齢に差し掛かった尾形信吾は、嫁菊子に亡き憧れの女性の面影を重ね、いつも優しく接していた。菊子も信吾の優しさを頼りにしていたが、行き過ぎた気遣いはやがて望まぬ結果を招いてしまう。原作は川端康成の同名小説だが、結末は異なる。
監督:成瀬巳喜男 出演者:原節子(尾形菊子)、上原謙(夫・修一)、山村聡(尾形信吾)、長岡輝子(妻・保子)、杉葉子(谷崎英子)ほか
映画「山の音」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「山の音」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「山の音」解説
この解説記事には映画「山の音」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
山の音のネタバレあらすじ:尾形家の様相
舞台は戦後復興期の日本、鎌倉。老いを自覚し始めた尾形信吾は、息子修一の妻である菊子にとても目をかけていました。菊子は明るく笑顔を絶やさない女性ですが、どことなく子どもっぽくもあり、そういう魅力を気に入っていたのです。ところが修一はそんな菊子を放って、よそに愛人を作っていました。信吾と同じ会社に勤めていますが、夜遊びばかりでいつも遅くに帰宅します。妻保子からは、修一と一緒に帰って来るべきだと何度も訴えられましたが、信吾が修一を咎めることはありませんでした。一方で、修一の不義理に心を痛める菊子を不憫に思い、いっそう彼女を労わります。修一と一緒に出勤した信吾は浮気を咎めてみますが、修一はどこまでも冷淡で反省するつもりも無いようでした。
山の音のネタバレあらすじ:信吾の労わりについて
そんなある日、嫁いだ娘相原房子が幼い子ども2人を連れてやって来ました。夫と諍いを起こし家出したらしいのです。房子は来るなり菊子にまだ子どもがないことを指摘。修一も、菊子自身が子どもなのだから子を扱うのは無理だと言い放ちます。顔を曇らせる菊子を不憫に思う信吾は、積極的に彼女を労わりました。しかし保子から、過剰な労わりはかえって良くないと苦言を呈されます。信吾が優しくするために菊子は嫉妬することも出来ないと言う保子は、自分の姉についても言及しました。信吾はかつて、若くして亡くなった保子の美しい姉に憧れており、その面影を菊子に重ねているのです。更に、昔から修一を可愛がる一方で房子を常に蔑ろにしてきたことも注意しました。話し合いのため家に戻った房子は再び家出をして、今度は信州の田舎に逃げ込みます。電報でそれを知った信吾達は、修一を迎えに行かせました。
山の音のネタバレあらすじ:愛人について
信吾は会社の女性事務員谷崎英子に声をかけ、修一の愛人について聞き出そうとします。彼女はしょっちゅう修一から夜遊びに誘われ、浮気相手のことも知っていました。谷崎は嫌々、相手の名前は絹子だと答えます。戦争未亡人で、洋裁で生計を立てているそうです。同じく戦争未亡人の池田と一緒に暮らしており、修一はしょっちゅう彼女達の家に出入りしていました。谷崎によると、修一は常々菊子は子どもだ子どもだと話していたそうです。それを聞いた信吾は憤り、ますます菊子を不憫に思うのでした。
山の音のネタバレあらすじ:悲壮な決断
修一が房子達を連れて帰って来ました。早朝、信吾は洗面所で鼻血を流す菊子を発見します。気丈に振る舞う菊子を信吾は心配しますが、修一はやはり冷淡な態度でした。信吾は谷崎に頼み、池田と話し合いの場を持ちます。池田も酒を呑んでは無茶を言う修一を嫌い、絹子と別れさせるべきだと考えていました。池田は夫婦仲を改善させるため、若夫婦と別居してはどうかと提案します。翌朝、信吾は友人の見舞いに行くという菊子と一緒に家を出ました。そして別居について相談しますが、菊子は信吾と離れるのは心細いと言います。修一と家で2人きりになるのは恐ろしいと震える菊子は、その日を境に体調を崩し情緒不安定になりました。信吾が修一と問いただすと、なんと菊子は病院で堕胎手術を受けたらしいのです。ずっと子どもを望んでいたはずの菊子でしたが、修一が浮気をしている間は産まないと宣言。しかし微塵も動揺していない修一に、信吾は何故菊子の嫉妬をほぐしてやらないのかと説教しました。
山の音の結末:別れと再起
信吾は谷崎から聞いていた絹子の家を訪ね、彼女と話し合おうとします。しかし絹子は、修一とはもう別れたと言いました。絹子は修一の子を妊娠しましたが、それを知った修一が産むなと言って暴力を振るったらしいのです。絹子が修一の子ではないと言い張った結果、修一は訪ねて来なくなりました。信吾はせめてもの気持ちと金を渡しますが、絹子はそれを手切れ金だと解釈します。その夜、信吾が酔って帰った家には菊子の姿がありませんでした。実家に寄った際、体調を崩したので数日静養することにしたそうです。信吾は保子と房子に、菊子が堕胎したことを教えました。仰天して菊子を批難する2人に、信吾は珍しく大声で叱責します。数日後、菊子から電話で呼び出された信吾は新宿御苑で待ち合わせをしました。菊子は修一と別れる決意を固めていました。信吾は自分の些細な労わりが、菊子をかえって束縛することになったと謝罪します。そんな信吾に菊子は泣き崩れました。信吾も保子と共に、故郷の信州へ帰ることを考えていました。たまには手紙をくれと言う信吾。涙を流す菊子は信吾と共に歩き出し、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画山の音のあらすじと結末でした。
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