映画「天河伝説殺人事件」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
天河伝説殺人事件の紹介：1991年日本映画。内田康夫の人気推理小説を映画化した作品。奈良県の秘境天川村を舞台に起こる連続殺人事件をルポライター浅見光彦が解明していくミステリー映画です。監督は「犬神家の一族」の市川崑。岸恵子や岸田今日子、石坂浩二や加藤武といった市川監督と縁の深い俳優陣が脇を固めています。
監督：市川崑 出演者：榎木孝明(浅見光彦)、財前直見(水上秀美)、岸田今日子(水上菜津)、岸恵子(長原敏子)、日下武史(水上和憲)、大滝秀治(仁礼神官)、加藤武(仙波警部補)、伊東四朗(剣持譲介)、石坂浩二(浅見陽一郎)ほか
この解説記事には映画「天河伝説殺人事件」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
新宿の高層ビル街、一人の中年男性が階段から転げ落ち絶命します。被害者は京都にある能衣装の会社に勤める川島幸司という男で、川島の傍らには奈良県の天河神社に伝わる神器「五十鈴」が落ちていました。川島の死因を毒殺と断定した警部補仙波は奈良県の天川村へと向かい、捜査を開始します。同じころ吉野を訪れていたルポライターの浅見光彦は地元の駐在から密猟を疑われ困っていたところを偶然通りかかった旅館天河館の女将長原敏子に助けられます。東京に戻った浅見は国語学の研究者である先輩剣持譲介から能についての史跡を巡る記事を書いてみないかと依頼され、取材のため再び天川村へと赴きます。能楽の発祥の頃より深く関わりがあるという天河神社に向かう道中で初老の男性と遭遇し、声を掛けるものの冷たくあしらわれてしまいました。その後天河神社に着いた浅見は神社の宮司から雨降らしの面と呼ばれる貴重な真蛇面を見せてもらうのでした。
雨降らしの面は天河神社と縁の深い能楽の家元水上家からの預かりものであり、水上家の宗家が能楽の演目道成寺を舞う時にだけ使用される貴重なお面であると宮司は言います。水上家では早世した嫡男和春の十三回忌追善能が近く行われることが決まっており、宗家の和憲は追善能で「道成寺」を舞うのではないかと宮司は浅見に教えてくれるのでした。その水上家は後継者問題に揺れていました。宗家水上和憲の息子和春がすでに他界しているため、跡取り候補は和春の子供である和鷹と秀美の二人に絞られていますが、長老の高崎義則は男子である和鷹を推し、母の奈津は秀美を推します。和鷹は和春がある女性に産ませた子供であり、奈津とは血のつながりはありません。それ故奈津は我が子の秀美に何としても宗家を継がせたいと執念を燃やしているのでした。その後水上家に吉野の山中で高崎が何者かに殺害されたという知らせが入り、秀美や和鷹は現場へと向かいます。高崎は浅見が天河神社へ向かう道中で遭遇した初老の男性でした。高崎と最後に会話した人物が浅見であったことが明らかになり、浅見に容疑者の疑惑がかけられますが、その後アリバイが成立し釈放されます。浅見は秀美から高崎の死の真相を探るため協力してほしいと頼まれます。その後川島と高崎が東京で会っていたことが判明し、仙波は五十鈴の所有者を探し始めます。宗家の後継は和鷹に決まりますが、これを聞いた奈津は激しく落胆します。秀美は翌日に迫った追善能でなにかよからぬことが起こるのではないかと心配し、浅見に同行を依頼します。
翌日追善能の幕が開き、宗家による道成寺の演目が始まります。事件は演目の見せ場である「釣鐘落とし」の場面で起こりました。鐘の中に勢いよく飛び込んだ宗家でしたが、再び鐘がつるし上げられるとうずくまりその場からまったく動かなくなってしまいます。会場が混乱に包まれる中、慌てて舞台に上がった秀美が宗家に駆け寄り、雨降らしの面を取ると、道成寺を舞っていたのは宗家和憲ではなく和鷹であったことが判明します。和憲は後継者となる和鷹に経験を踏ませるため独断で道成寺の演目を演じさせたことを明かしますが、和鷹はそのまま息を引きとります。浅見は和鷹が雨降らしの面の内側に塗られた毒物を舐めたことによって中毒死したのではないかと推測しますが、肝心の雨降らしの面は何者かによって持ち去られ、決め手となる証拠がありません。秀美は母奈津の犯行を疑いますが、浅見はもう一人の母、すなわち和鷹の母についても調べる余地があると告げます。天川村を訪ねた浅見は敏子が京都出身であることを突き止め、川島とのなにか接点があるのではなかろうかと推理し始め、京都へと向かいます。一方浅見と天河村で落ち合おうと約束していた秀美が天河館を訪ねてきます。そして秀美は敏子から話があると言われ、神社の神輿蔵へと連れて行かれます。秀美は敏子が和鷹の実の母なのではなかろうかと感じ始めますが、敏子ははぐらかしその場を立ち去ろうとします。そこへ駆け付けた浅見は京都で川島の娘と会い、川島の中学生時代の同級生名簿を見せてもらったことを敏子に話し始めます。
敏子と川島は中学時代の同級生でした。両親を早くに亡くし、親戚の元で苦労していた敏子は京都の中学の恩師から天河館の仕事を紹介され、中学卒業後に天川村へとやってきます。そしてある時天河神社で行われる薪能のため天河村を訪ねていた和春と恋に落ち、和鷹を身籠ります。しかし二人の結婚は許されず、敏子は生まれて間もない和鷹をも手放さなければならない状況へ追い込まれていきます。敏子は和鷹を必ず水上家の後継者にするという約束の証として和憲から五十鈴を貰ったのでした。敏子はその後ひっそりと天川村で暮らしてきましたが、水上家に深い関わりがあることを知った川島が敏子を利用しようと企み始めます。秘密を知られた敏子は五十鈴を奪われ、川島はその五十鈴を使って今度は高崎を脅し始めます。川島が胃潰瘍でカプセル入りの薬を常用していたことを知っていた敏子は毒物とその薬をすり替え、川島を毒殺します。さらに高崎に犯行を知られ、人殺しの子供である和鷹を宗家にすることはできないと拒絶された敏子は高崎をも手にかけてしまったのでした。さらに今度は和憲の殺害をもくろみ、追善能で使う雨降らしの面に毒を塗りますが、皮肉にも面を被ったのは和鷹であり、敏子は愛する息子をも殺害してしまったのでした。浅見は事件の全容を知る和憲が今宵の天河神社で行われる薪能ですべてを終わりにしようとしているのではないかと直感します。薪能が終わると和憲は敏子にこれまで苦しい思いをさせてきたことを詫びます。しかし敏子は和鷹を手放した自分を責め、持っていた毒物で自殺を図るのでした。その後水上家の宗家には秀美が正式に選ばれることになりました。浅見は街で秀美を見かけ声を掛けようとしますが、秀美は赤いスポーツカーに乗り込んで颯爽と去っていくのでした。
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