ダンサー・イン・ザ・ダークの紹介:2000年デンマーク映画。1960年代アメリカ。遺伝性の病気で視力が徐々に失われていく主人公が同じような病気になるかもしれない息子のために懸命に働き、手術代を稼いでいくという話。主人公セルマを演じるビョークの美しい歌声に対比するかのように畳み掛けるような不幸がセルマに降りかかるのが印象的な作品です。ダンサーインザダークでは歌手ビョークが主役をつとめ、その美しい音楽と、ストーリーの救いのなさ、衝撃的な結末ゆえに賛否両論が起きた問題作。ゴールデングローブ賞、アカデミー賞にノミネート、2000年の第53回カンヌ国際映画祭ではパルム・ドールを受賞。
監督:ラース・フォン・トリアー 出演者:ビョーク(セルマ)、カトリーヌ・ドヌーブ(キャシー)、デヴィッド・モース(ビル)、ピーター・ストーメア(ジェフ)、ヴラディカ・コスティック(ジーン)、ほか
映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ダンサーインザダークの予告編 動画
映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」解説
この解説記事には映画「ダンサー・イン・ザ・ダーク」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ダンサーインザダークのネタバレあらすじ:起・息子の手術代のため
チェコからの移民セルマ(ビョーク)はシングルマザー。一人息子のジーン(ヴラディカ・コスティック)を懸命に育てています。セルマは先天性の目の病気を患っていました。それは息子にも遺伝するもので、セルマは何とか手術を受けて失明を食い止めようと、その手術代のために、もうほとんど目が見えないのに身を粉にして働いていました。
工場で働くセルマの同僚キャシー(カトリーヌ・ドヌーブ)はそんなセルマを何かと気にかけ、助けてくれました。セルマに想いをよせるジェフ(ピーター・ストーメア)の求婚もセルマは断ります。セルマには自らの幸せなどどうでもよく、息子の目を治すことで頭が一杯でした。
セルマが仕事をしていると職場にビル(デヴィッド・モース)がやってきます。ビルは警察官で自分の家の隣のトレーラーにセルマを住まわせてあげており、セルマにとっては恩人でした。ビルはジーンを連れています。学校を抜け出したジーンをビルが見つけたのです。言い付けを守らなかったジーンを叱り、怒ったまま仕事に戻ったセルマ。
セルマが仕事から戻るとジーンが待っていました。セルマはこれ以上は怒らず、習いたてのダンスをジーンに披露するとご機嫌です。セルマは仕事終わりにダンスを習いに行きます。踊っていると嫌な事を忘れられるミュージカルがセルマは大好きでした。
ダンサーインザダークのネタバレあらすじ:承・貯めた貯金を奪われて
視力はさらに落ちて見えなくなりますが、ミュージカルの主役にも抜擢され、ジーンの手術代もあと少しまでに迫っていました。
ある日、仕事を終えたセルマをビルが待っていました。親の遺産を受け継いで余裕があるはずのビルが、お金を貸して欲しいと言い出してきたのです。疑問に思ったセルマの顔を見て、ビルは事情を話し始めます。
ビルの妻はかなりの浪費家で遺産を使い果たしてしまったのです。妻に逃げられたくないビルはそれを言い出せないでいました。セルマは自らが失明したことを明かし、互いに頑張ろうと励ますのでした。ビルはそれを聞くと目が見えないセルマを利用し、お金の場所を特定し、セルマのお金を奪ってしまいました。
ダンサーインザダークのネタバレあらすじ:転・失意のどん底へ
大きな失敗をしてしまい工場をクビになり、ミュージカルを降りてしまったセルマ、失意のまま家に帰るとセルマの家に隠していたお金が消えていました。犯人はビルでした。これまでジーンの手術代のために懸命に貯めていたお金を盗られたセルマは堪らずビルの家に向かいます。
ビルの家に着いたセルマ、二階にいたビルはなんとセルマに銃を向けています。何故そんなことをするのか分からないセルマは悲しくなり泣き出してしまいます。セルマがビルから銃を奪い去ろうとすると一発の銃弾が発砲され、ビルの腹部に命中してしまいます。
瀕死のビルが、「殺さないとお金を返さない」とセルマを脅し、セルマは仕方なくビルを殺してしまいます。
ダンサーインザダークの結末
強盗殺人罪で逮捕されたセルマ、彼女は頑なにビルの秘密だけは話しませんでした。そんなセルマに銃絞首刑が下されてしまいます。
面会にやって来たキャシーに手術代で弁護士を雇うよう勧めますが、セルマは受け入れませんでした。何よりジーンの手術が大事だったのです。
そして執行の日、一歩ずつ絞首台へ歩を進めるセルマにキャシーはメガネを渡し、ジーンの手術が成功したことを告げました。思い残すことのないセルマは妄想の中で幸せそうに歌い、踊りますが、その途中で無情にも刑は執行されてしまうのでした。
そこには静けさとやりきれなさだけが残されていました。
以上、映画ダンサーインザダークのネタバレあらすじと結末でした。
「ダンサー・イン・ザ・ダーク」感想・レビュー
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絶望的に美しいダンスミュージカル映画。劇場で鑑賞後涙が止まらなくなり、それを見られていたのか退出後劇場前に立っていた男の人が軽くタップを踏んで元気づけくれたのがいい想い出。セルマ役のビョークの演技が彼女が提供した楽曲と供に本当にいい。
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作品中ではいつに時代のアメリカなのか直接的にわからなかったと思います。なぜ60年代と思ったのか、またどのシーンどのセリフでそのヒントを得たのか教えていただけないでしょうか。
直観では80年代かなとも思ったのですが、裁判員が全員白人の男性なので60年より前かなとかよくわからない状態になってます。
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>女子さん 公式のパンフレットなどでも紹介されていますが、ダンサー・イン・ザ・ダークの舞台は60年代のアメリカ(正確には1964年のアメリカ・ワシントン州の小さな町)と紹介されています。
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まず映画が始まった時、私は即座になぜ、こんな素人がホームビデオを撮ったような、手持ちのカメラワークなのか、少々違和感を覚えた。
しかし、その答えはまもなく明らかになる。
主人公が歌ったり、踊ったりする場面では,逆にそのために、プロフェッショナルなカメラワークが一層引き立つことになるのだ。この映画のテーマのひとつは、歌い、踊ることの楽しさ,素晴らしさだと思う。
それがあるおかげで、救い難い悲劇のために、物語が陰鬱になることから救われている。
主人公は、心にいつも歌と踊りを宿しており、その大切さが観客にひしひしとつたわってくるのだ。こんな素晴らしい映画のネタをあまりバラしてしまいたくないので、今回の紹介はあと一点だけで簡単に終わらせようと思う。
主人公は、自分が失明しようとも、子供がその遺伝で失明することを避けるため、手術代を苦しい生活費からコツコツと貯めている。
たとえ自分の命を断とうとも、子供の目が見えることを優先する。
この、親の愛が観客に深い感動をもたらす。これ以上のことは書かないので、ご覧になっていない方は、ぜひご覧になっていただきたい、と言いたいけれど、かなり重たい、トラウマになるようなものなので、ご覧になる方は充分気をつけてくださいね。
なかなかない、素晴らしい映画なのは事実だと思います。
カンヌ国際映画祭パルムドール、及び主演女優賞受賞。
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人間が形成している社会は、一つ一つの個体(一人の個人)から成り立っている。 つまり「個人の集合体」が「社会であり世界」なのである。「運不運」や「寿命の長短」などは、人格者であろうがなかろうがそれとは一切関係がない。 だから世の中には、宝くじの一等を引き当てる「幸運な人」もいれば、トラックに当て逃げをされる「不幸な人」もいる。 今ここにある「自分の人生」をどう評価し、如何なる解釈をするかなども全ては個人の判断に委ねられている。 この映画の主人公は「自分の人生」のことをどう考えていたのだろうか。 セルマは昼夜を問わず日々せっせと働き、息子のために生活を切り詰めてコツコツとお金を貯めていた。 そして最終的には息子の将来のために自らを犠牲にしたセルマ。セルマは自分の命と引き換えにしてジーンの失明を阻止したのだ。 彼女は同僚のキャシー(ドヌーヴ)の忠告にも説得にも耳を貸さなかった。 セルマは小柄で優しく地味だが、とても芯が強くてタフな頑固者でもある。 そしてセルマの最期の悲し過ぎる選択も、セルマ個人の人生観が如実に反映されている。 彼女はどうしても自分の生き方を否定することだけは出来なかったのである。 数奇な運命に翻弄され、過酷な環境に身を置いたセルマ。 私はそのセルマの精一杯の抵抗が健気でいじらしい。 刑場の踏板が開いた瞬間にセルマが落下し、彼女は頸部を絞める頑強なロープで吊るされて死に至る。 余りにも残酷で哀しいけれど、これが冷厳たる現実なのである。 セルマは一見するとストイックで控え目だが、本当の彼女の魂はどこまでも貪欲で溢れる熱情を秘めている。それが映画の中ではミュージカルの歌と踊りという形で表現されるのである。歌と踊りを通してセルマとビョークが一体となり「魂の叫び」を発するのである。 セルマを演じ切ったビョークは誠に素晴らしかった。 正に「一世一代の名演」であり大芝居であった。 ラストシーンを見た瞬間に「人間とは何か?」と言う問いかけが頭の中でこだましていた。
ラース・フォン・トリアーの作品はどれも元気がある時にしか見れない。もうどうしようもないくらいに救いの無い作品ばかりだからだ。コレもそう。ただ一度見だすとその重々しい空気に引き込まれて抜け出せなくなる。主演のビョークが素晴らしい!