ヴェラ・ドレイクの紹介:2004年イギリス,フランス,ニュージーランド映画。1950年代、中絶が禁止されていた時代のロンドンを舞台に、人助けのために違法と知りつつも極秘で中絶を行っていた一人の主婦の姿を、彼女の家族や取り巻く人間関係などと共に描いたヒューマンドラマです。ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞と主演女優賞を受賞しています。
監督:マイク・リー 出演者:イメルダ・スタウントン(ヴェラ・ドレイク)、フィル・デイヴィス(スタン・ドレイク)、ダニエル・メイズ(シド・ドレイク)、アレックス・ケリー(エセル・ドレイク)、エディ・マーサン(レグ)、ピーター・ワイト(ウェブスター警部)ほか
映画「ヴェラ・ドレイク」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ヴェラ・ドレイク」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ヴェラ・ドレイク」解説
この解説記事には映画「ヴェラ・ドレイク」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ヴェラ・ドレイクのネタバレあらすじ:起
1950年代、未だに第二次世界大戦の勝利の余韻に浸るイギリス・ロンドンの労働者階級が多く暮らす地域。45歳の女性ヴェラ・ドレイク(イメルダ・スタウントン)は、自動車整備士である最愛の夫スタン(フィル・デイヴィス)、息子で仕立て屋のシド(ダニエル・メイズ)と娘で電球工場で働くエセル(アレックス・ケリー)との4人家族です。スタンはかつて大戦時に兵役に就いていたことがあり、戦争が終わった今では慎ましやかながらも穏やかな家庭を築き上げていました。性格が明るく何かと世話好きなヴェラは家計を支えるために富裕層の家に家政婦として働き、病気で寝たきり生活を送る年老いた母親の介護も行い、同じアパートに住む体の不自由な人の世話まで買って出るなど、困っている人を見ると助けずにはいられない人柄で周囲の人々から慕われる存在でした。
ヴェラ・ドレイクのネタバレあらすじ:承
しかし、ヴェラには誰にも言えない裏の姿がありました。ヴェラは秘密裏に望まない妊娠をした女性に非合法での人工中絶の手助けをしていました。当時のイギリスでは法律により医師の判断によるもの以外の中絶は一切禁止されていたのですが、医師による中絶は非常に高額であり、また避妊の技術は確立されておらず、富裕層や一般庶民、貧困層問わず望まぬ妊娠をしてしまう女性たちが少なからず存在していたという事情があったのです。ヴェラは約20年間に渡って秘密の中絶施術を行っており、しかも一切報酬は受け取らず無償で行っていました。これもまた、純粋に人助けをしたいというヴェラの善意からでした。
ヴェラはこの日も、婚約者にレイプされ精神を病んでいるヴェラの雇い主の娘スーザン(サリー・ホーキンス)の中絶を請け負っていました。しかし、ヴェラの裏仕事の受付役である幼馴染のリリー・クラーク(ルース・シーン)は、ヴェラの知らないところで依頼者女性から金を取っていました。
ヴェラ・ドレイクのネタバレあらすじ:転
ヴェラが表と裏の稼業に精を出している間にも、内向的で彼氏すらできなかった娘エセルにようやくレジー(エディー・マーサン)という恋人ができ、これまで子供ができなかったスタンの弟フランク(エイドリアン・スカーボロー)の妻ジョイス(ヘザー・クラニー)が待望の妊娠というめでたいことが続いていました。
そしてこの日は、エセルがレジーからのプロポーズを受け入れ、婚約とジョイスの妊娠を祝うパーティーが催されようとしていました。ところが、ヴェラ一家のアパートに招かれざる客、ウェブスター警部(ピーター・ワイト)とヴィッカーズ巡査(マーティン・サヴェッジ)、ベスト婦警(ヘレン・コーカー)の3人が踏み込んできました。ヴェラが先日中絶を施した女性の体調が急激に悪化、女性の母が医師に相談したところ、とうとう今まで隠し通していたヴェラの裏稼業が明るみになってしまったのです。ヴェラは警察に連行され、ウェブスター警部による取調べを受けました。
ヴェラ・ドレイクの結末
ヴェラは起訴され、裁判を前に保釈されました。この日は折しもクリスマス、パーティーの席上でシドは母の違法行為を厳しく糾弾、ジョイスも嫌悪感を露骨に表してヴェラと距離を置き始めました。しかし、スタンは妻の秘密を知りながらも彼女の全てを優しく受け止め、エセルとレジーは家族のありがたみに感謝の意を示しました。戦争で家族を失っていたレジーはヴェラに「ありがとう。最高のクリスマスだよ…」と優しく語り掛けました。
ヴェラに下された判決は、見せしめの意も込めて禁固2年6ヶ月という厳しいものとなりました。ヴェラが収監された刑務所には、彼女と同様に違法中絶の罪で服役している者たちも収監されていました。ヴェラの家族たちは、いつまでも彼女の帰りを静かに待ち続けていました。
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