セクシャリティーの紹介:2018年カナダ映画。生まれてすぐに父が蒸発、その顔も見たことなく成人した一人の女性が、父の死をきっかけに女としての本能を揺さぶる衝撃的な体験に囚われていく姿を描いたドラマです。映画『ショートバス』に主演していたスックイン・リーが監督と脚本を担当しています。
監督:スックイン・リー 出演者:サラ・ガドン(タイラー)、ロザンナ・アークエット(ジョアン)、ラオール・トゥルヒージョ(オクタヴィオ・クリスティアン・ソレル)、ディミトリス・キトソス(アポストリス)、レイチェル・クロフォード(ヴァネッサ・テイト)ほか
映画「セクシャリティー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「セクシャリティー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
セクシャリティーの予告編 動画
映画「セクシャリティー」解説
この解説記事には映画「セクシャリティー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
セクシャリティーのネタバレあらすじ:起
本屋で働く女性、タイラー(サラ・ガドン)は、ある日突然に店舗閉鎖を理由に解雇されてしまいます。最後の給料を受け取ったタイラーは冬の寒々しい景色のなか帰路につきました。情緒不安定を患う母ジョアン(ロザンナ・アークエット)の待つ家に帰ったタイラーは自分がクビになったことを言い出せないでいると、家に女弁護士のテイト(レイチェル・クロフォード)が訪ねてきました。テイトはテイラーの実の父であるオクタヴィオ(ラオール・トゥルヒージョ)の代理人であり、オクタヴィオ本人が亡くなったことを知らせに来たのです。オクタヴィオは生まれたばかりのタイラーとジョアンを捨てて蒸発、ジョアンはその日以来一度も会っておらず絶縁していたのです。しかし、オクタヴィオは遺産相続人としてタイラーのみを指名しており、ジョアンには十分に養育費は支払ったとして相続人から除外していたのです。そしてオクタヴィオは過去にタイラーに連絡を取ろうとしましたが、ジョアンがその事を隠蔽していたことも明らかになりました。タイラーはジョアンに遺産を相続させる手続きを要請、オクタヴィオの所有していた古いアパートは売却することが決まりました。
テイトが帰ったあと、タイラーは父のことについてより知りたいとジョアンに言い出しましたが、ジョアンは育児を放棄した身勝手な男だとして猛反対しました。その翌朝、タイラーはジョアンがまだ寝ている間に、テイトから受け取ったオクタヴィオのアパートの鍵を持って家を抜け出し、長距離バスに乗って父の足跡を辿る旅に出ました。バスの後部座席にはフードを被った謎の人物が座っていましたが、タイラーが目を離した隙にいずこへと姿を消していました。
セクシャリティーのネタバレあらすじ:承
夜の街でバスを降りたタイラーは地図を頼りに父のアパートを探しましたが、その跡を先程のフードの人物がつけていました。何とか謎の人物を振り切ったタイラーは目的地のアパートにつくと、部屋は玄関に靴下が脱ぎ捨てられており、テーブルには散乱したタバコの吸い殻、汚いままの台所、カビの生えた浴槽、枯れた観葉植物など荒れ果てた状態でした。しかしタイラーの気付かない間に、洗面台の蛇口が勝手に動き出していました。
タイラーはそのままアパートで一夜を明かし、父が遺した山積みの書物を手に取り、各部屋を散策していると、突然このアパートの別の部屋の住人である中年の女が上がり込んできました。気が付くと洗面台の水はいつの間にか流しっぱなしであり、中年女はこの部屋は欠陥物件であるとして今すぐ業者を呼んで修理するようタイラーに言い捨てて去っていきました。
蛇口をひねった時に手を怪我してしまったタイラーが手当てをしていると、今度は部屋に家に残してきたジョアンから電話がかかってきましたが、タイラーはなぜそこに来たのか説明を求めるジョアンを遮って電話を切りました。その後、タイラーは机の引き出しから、見知らぬ男が生まれて間もない女の赤ん坊の頬にキスをしている写真を見つけました。やがてタイラーはアパートを飛び出して帰ろうとしましたが思いとどまり、再びアパートに戻って掃除を始めました。すると突然どこからともなく「大掃除だったな…」という声が聞こえてきました。タイラーが振り返ると、書斎の机にはなぜか死んだはずのオクタヴィオが座っていました。オクタヴィオは成仏できないままこのアパートに留まっていたのです。
オクタヴィオはタイラーに、ジョアンが今まで語ってくれていなかった過去について語り始めました。メキシコ出身のオクタヴィオは自分の肖像画を描いてくれた画家の友人のもとでモデルをしていたジョアンと出逢い、その美しさに惚れ込んだというのです。1968年、オクタヴィオとジョアンはメキシコの民主化を求めるデモに参加しましたが、軍隊の発砲を受けてオクタヴィオの弟が殺され、二人は祖国を捨ててこの国に辿り着いたのです。オクタヴィアは自らの右手の傷とタイラーの傷を重ね合わせると「私たちは見知らぬ者同士でも血の繋がった親子だ。今は対立していてもいつか分かり合える時が来る」と語り掛け、タイラーは自らのルーツを求めてここに来たのだと指摘しました。次の瞬間、オクタヴィオの姿は忽然と消えていました。
セクシャリティーのネタバレあらすじ:転
不審に思ったタイラーはアパートの管理人に確認してみたところ、やはりオクタヴィオは亡くなっているとのことでした。タイラーはオクタヴィオの墓参りに出かけ、そこで先日目撃した謎の人物を見かけると、タクシーでバイクに乗った人物の後を追いました。そこは会員制クラブであり、タイラーは受付の初老の男からいきなり「胸は小さい。尻はいい」と言われ、事情を飲み込めぬまま唐突に不採用だと告げらて追い出されました。
タイラーは長かった髪を短く切り、父の遺したスーツを着てイケメン男子に成りすまそうとしたところ、再びオクタヴィオが姿を現して「運命について考え続けろ。たとえ無駄に終わったとしても追究すべきだ。生者と死者のために」と告げて姿を消しました。
男装したタイラーが再びクラブに潜入すると父のIDで中に入れたことから、タイラーはオクタヴィオはこのクラブの会員であったことを知ります。タイラーは自分が女であることを隠して、探していた人物・アポストリス(ディミトリス・キトソス)と出会います。
オクタヴィオは生前英語の講師をしており、その教え子だったというアポストリスは、オクタヴィオには詩の才能があったというのです。その後、アポストリスは部屋に友人たちを招き、ドラッグをキメてはダンスやクラシック演奏などに明け暮れました。そしてアポストリスはタイラーに捧げると言って、友人たちにオクタヴィオの著書の詩集を詠み始めました。しかし、父の詩集に不快感を覚えたタイラーは部屋の外に出、追いかけてきたアポストリスに対して父の批判を始めました。しかし、アポストリスがタイラーの気を和らげるジョークを言ったことから二人は打ち解け合い、この日はアポストリスの部屋に泊まることにしました。実家の漁業を継ぎたくないというアポストリスに、タイラーは母の元に戻りたくないという本音を打ち明けました。そして、人生の楽しみ方がわからないというタイラーに、アポストリスは「ゆっくり探せばいい。何であろうと我慢してはダメだ」と諭しました。
セクシャリティーの結末
翌朝、タイラーはアポストリスと共にオクタヴィオのアパートに戻りました。オクタヴィオの肖像画を見たアポストリスは「(オクタヴィオは)君を愛していたはず…自慢の息子だからね」と呟きました。一人で洗面台に向かったタイラーの前にまたしてもオクタヴィオが現れ、「お前はアポストリスのことが好きなようだね。なぜ女であることを明かさない? いつかはバレるよ」と指摘しました。一方のアポストリスはオクタヴィオが遺した本を読み漁り、古代ギリシャの哲学者のコスプレをして楽しんでいました。アポストリスは手にした哲学書の中から“特殊なセックス”を取り上げた一文を取り上げると、タイラーに「君が好きだ」といって情熱的なキスを交わしました。しかし、アポストリスがタイラーの服に手をかけようとしたところ、タイラーは「触るな!」と拒絶しました。洗面所に閉じこもったタイラーは「何もしなくていいよ」というアポストリスの声に導かれて部屋に行ってみると、そこではアポストリスとオクタヴィオがセックスをしているところでした。実はオクタヴィオとアポストリスはゲイであり、オクタヴィオはそのことをジョアンには内緒にしていたのです。衝撃を受けたタイラーは部屋を飛び出してバルコニーに向かいましたが、部屋に戻ってみるとオクタヴィオの姿はなく、アポストリスが一人でベッドに横たわっていました。タイラーは服を脱ぎ、自らが女であることを証明すると一緒にベッドに入りましたが、結局何をするでもなくアポストリスはひっそりと姿を消しました。
オクタヴィオのアパートにジョアンが訪ねてきました。しかし、ジョアンは髪を短く切って男装したタイラーの姿に衝撃を受けました。タイラーはジョアンにオクタヴィオがゲイであったことを明かしましたが、実はジョアンもそのことを知っており、そのために家から追い出したことを明かしました。しかし、ジョアンが帰ろうと促してもタイラーは家に戻るつもりはありませんでした。
結局、オクタヴィオのアパートは売りに出され、家財道具や遺品も全て運び出されてリフォームすることになりました。タイラーはアポストリスのもとを訪れましたが、アポストリスはタイラーが嘘をついていたことに怒って口論となり、タイラーは彼の部屋を飛び出していきました。タイラーは追いかけてきたアポストリスと激しくキスを交わしましたが、アポストリスは彼女を受け止めることはできませんでした。
やがてオクタヴィオのアパートは50万ドルで売約が成立、業者が入っての家財道具の撤去が始まりました。タイラーは業者のトラックから、無造作に放り投げられて破かれた父の肖像画を拾い上げ、大金が手に入ると喜ぶジョアンと口論となりました。そしてタイラーは居合わせたテイトに遺産相続の同意書の訂正を求め、アパート買い取り金額の半分をもらうと主張しました。そして数々の書物はアポストリスの尽力で大学に寄贈されることになり、翌日の朝に帰るというタイラーはアポストリスに笑顔で別れを告げましたが、ジョアンについていく気はありませんでした。荷物をまとめたタイラーは、ひとりバルコニーで父を弔っていました。
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