嘘の天才~史上最大の金融詐欺~の紹介:2017年アメリカ映画。元NYタイムズ紙の記者ダイアナ・ヘンリケスのノンフィクション小説を基に、2008年に世界の金融界を揺るがした史上最高額の金融詐欺事件「バーニー・マドフ事件」の全貌を描いたクライムドラマです。監督は『レインマン』(1988年)などの名匠バリー・レヴィンソン、主演は名優ロバート・デ・ニーロ、共演は『アイ・アム・サム』(2001年)などのミシェル・ファイファーです。
監督:バリー・レヴィンソン 出演:ロバート・デ・ニーロ(バーニー・マドフ)、ミシェル・ファイファー(ルース・マドフ)、アレッサンドロ・ニボラ(マーク・マドフ)、ネイサン・ダロウ(アンドリュー・マドフ)、クリステン・コノリー(ステファニー・マドフ)、ほか
映画「嘘の天才~史上最大の金融詐欺~」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「嘘の天才~史上最大の金融詐欺~」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
嘘の天才~史上最大の金融詐欺~の予告編 動画
映画「嘘の天才~史上最大の金融詐欺~」解説
この解説記事には映画「嘘の天才~史上最大の金融詐欺~」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
嘘の天才~史上最大の金融詐欺~のネタバレあらすじ:1.囚人61727-054
「法廷では無感情で器械的だった。だが私の前では彼は穏やかで、常に真面目で信頼できた。それは彼の才能であり呪いだ」NYタイムズ紙の記者ダイアナ・ヘンリケスは振り返ります。2010年8月24日、ようやくダイアナは服役中のある一人の老人を取材することに成功しました。この老人は彼の名はバーニー・L・マドフ、囚人番号61727-054、被害総額650億ドルという史上最高額の金融詐欺事件「バーニー・マドフ事件」を引き起こした人物です。これまで明かされなかった事件の真相を、バーニーが語り始めました。
嘘の天才~史上最大の金融詐欺~のネタバレあらすじ:2.驚愕の事実
2008年12月10日、ニューヨークのウォール街に居を構える老舗証券投資会社「バーナード・L・マドフ証券」で事件が起こりました。「皆を守るために今、ボーナスを出す」「そんな状況じゃない」会長のバーニーの行動に、二人の息子マークとアンドリューは意見しました。「大事な話がある」バーニーは電話で妻ルースに伝えると、二人の息子たちを連れ、自宅に戻りました。「すべて虚構だ。偽装した。大掛かりなねずみ講だ。自首する」バーニーは驚愕の事実を告白しました。なんとバーニーは15年に渡り、多数の顧客を騙して虚偽の取引を行い、約650億ドルを破綻させたというのでした。「自分の失敗を認められなかった。やめられなかった。想定外だ。いつでも抜け出せると思っていたが、無理だった。もがけばもがくほど、深みにはまった」バーニーは巨額の虚偽取引に至ったことを述懐しました。
「すべて一人でやった」とバーニーは罪を認め、一人で肩をつけようとしましたが、事はそう簡単には終わりませんでした。疑惑の目は、長年同じ会社で働いていた息子たちにも向けられました。「全く気付かなかった」「彼は父親であり、崇拝される存在だった」と息子たちは主張しました。なぜなら、バーニーはナスダックを創設し近代市場を創り出した立役者であり、米国証券取引所決済機関や全米証券業協会NASDの会長などを歴任した金融界の重鎮でした。そう、バーニーは最も信頼できる投資家であり、詐欺などするはずがないと、息子たちだけでなく誰もが思い込んでいました。また、そんなバーニーに疑いをかけて口出すことなど誰もできなかったのでした。バーニーが詐欺罪でFBIに逮捕されたというニュースは、前代未聞とたちまち世界の金融界を揺るがし、家族を混乱の渦に巻き込んでいきました。
嘘の天才~史上最大の金融詐欺~のネタバレあらすじ:3.糾弾
バーニーは自社の17階で投資顧問業を展開し、そこで虚偽取引を働いていました。バーニーの命で息子たちは一切そこにはタッチできませんでした。そこを取り仕切っていたのは、19歳からバーニーの下で働いていたフランクでした。「父さんに何かあったら誰が投資顧問を?」「フランクだ」「彼は教養がないし、大学も出てない」「下品でも関係ない。仕事はできる」「金を盗まれるかも」「俺は父さんの資産を知らない」「何かあれば弁護士がすべて対処する。口出しするな」投資顧問業(資産)について少しでも知ろうとする息子たちでしたが、バーニーは頑なにそれを拒みました。
「窃盗だとは思ってなかった」「人々は貯蓄を失い、破滅させられたのに。あなたは皆を裏切ったのよ」「だが彼らには少し欲深い面もあって、見ないふりをしていた。彼らも共犯だと言える。彼らは誠実さに欠け、責任を負う気がなかった」記者ダイアナの質問にバーニーは自身の罪を認めながらも、投資家たちを批判しました。「随分厚かましいことを」と言うダイアナに、バーニーは「私の最大の弱点は、人の幸せを願うことだ」と呟き、そのせいで窮地に陥ったと告白しました。
ただ実際は、バーニーを信じて資産を投資した投資家たちは、資産を一瞬で失い、中には自殺する者まで出ていました。稀代の詐欺を働き、投資家たちを不幸のどん底に陥れたバーニーをマスコミは厳しく糾弾しました。そしてその影響は息子や妻・ルースにまで容赦なく及びました。ある夜、耐えられないと嘆くルースと共にバーニーは大量の睡眠薬で自殺を図りました。
「1987年10月19日の暗黒の月曜日は…歴史に刻まれるでしょう。株価大暴落による…」「不正操作だ。弱者を食い物に。大打撃だ。10億以上も失った。オプション戦略で損失を埋め合わせる。偽装しろ。絶対に誰にも話すな」バーニーは詐欺を始めた時のことを思い出します。「自責の念は?娼婦や慈善団体も餌食にした。ホロコーストの生存者も…同胞さえもダマして金を巻き上げた」ユダヤ人社会で一目置かれている存在のバーニーでしたが、彼らの凶弾を浴びます。それらは全て悪夢でした。二人の自殺は未遂に終わりました。
嘘の天才~史上最大の金融詐欺~のネタバレあらすじ:4.崩壊
「SECが電話すれば詐欺は暴かれたはずだ。だが、かけなかった。彼らは追及しなかった」バーニーが述懐するように、2005年夏、SECの定期捜査が入ったとき、捜査官はバーニーの圧力に押され、何もできずに帰っていったのでした。それから未曾有の経済危機が叫ばれ、バーニーは手を引こうと思っていましたが、彼の投資顧問部門だけには金が流れ込んできました。それはバーニーが金融界の重鎮であり彼の言葉に嘘はないと、多くの富豪・金持たちは盲目的に信頼していたからでした。ただ、バーニーがあまりに夢のような高利回りを謳うので、疑念を抱く投資家たちもいました。また彼の会社にまともな大手監査法人が監査を行っていないと疑問を抱く投資家もいました。バーニーはそんな投資家たちは切り捨て、自身を信じる投資家たちの心理を巧みに掴み、虚偽の契約に引きずり込んでいったのでした。
逮捕されたバーニーは法廷で全ての罪を認めました。「全ての財産を奪われた」と訴える被害者たちに、バーニーは謝罪しました。2009年6月29日、アメリカ地方裁判所は「非道な罪」と断罪し、詐欺・資金洗浄などの罪でバーニーに対して150年の禁固刑を下しました。
政府はバーニーの資産を競売にかけました。モントークのビーチハウス、マンハッタンのペントハウス、パームビーチの家、数々の高級車やヨット、ボート、時計、宝石などです。もちろんその手は家族である二人の息子たちにも及びました。容赦ない糾弾を受け続け、果ては長男マークの娘のお小遣いにまで差し押さえの手が伸びてきました。長男のマークはそのせいで、精神に異常をきたし、暗い自宅アパートに引きこもるようになりました。バーニーの家族は、完全に崩壊状態に陥りました。そんな2010年12月11日の早朝、ニューヨークの自宅アパートで長男マークが首を吊って死んでいるのが発見されました。この日は奇しくも父バーニーの逮捕から丸2年の日でした。
嘘の天才~史上最大の金融詐欺~の結末:破綻
「子供を失って事態が好転するとは思えない。未来への希望もないわ」逃げるように転居した妻ルースは、バーニーに面会に行き、別れを告げました。バーニーはその後、ルースに何度も電話をかけましたが、ルースと話すことは叶いませんでした。弟アンドリューは2013年、ダイアナの依頼で「マドフ事件の報道が人生にどう影響したか」という内容で、大学で講演しました。「私の中で父は死んでいる」学生からの問いに、アンドリューは静かに答えました。
「私は人を殺していない。話をしただけだ。財産の半分以上を私に託すなと警告していた。だが人間は強欲だ」「でもあなたの警告は事実じゃなかった。あなたは財産を奪った」「質問させてくれ…。私の心は破綻しているか?」ダイアナにバーニーは静かに問いかけました。
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