地獄の紹介:1979年日本映画。姦通の罪を犯した母に導かれ、近親相姦の果てに地獄へ落ちる女の姿を描いた幻想怪奇譚。水沼アキは、母生形ミホが夫の兄と不倫して産まれた不義の子だった。生まれてすぐに捨てられたアキは、20年後ミホの怨念に導かれるように生まれ故郷を訪れる。そこでアキは異母兄と結ばれてしまい、多くの人を道連れに地獄へ落ちていくのだった。
監督:神代辰巳 出演者:原田美枝子(水沼アキ/生形ミホ)、岸田今日子(生形シマ)、石橋蓮司(生形松男)、林隆三(生形幸男)、栗田ひろみ(生形久美)ほか
映画「地獄」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「地獄」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
地獄の予告編 動画
映画「地獄」解説
この解説記事には映画「地獄」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
地獄のネタバレあらすじ:地獄を背負った赤ん坊
舞台は昭和30年、架空の地生形村。名家生形家の次男雲平に嫁いだミホは、義兄竜造との不倫の果てに子どもを身籠りました。許されない関係を結んでしまった竜造とミホは、山を越えて村から逃げ出そうとします。しかし小屋で休憩していた2人の前に、激怒した雲平が現れ猟銃を発砲。竜造は被弾した上に殴り殺されてしまいました。ミホはトラバサミに足を取られ、倒れ込んでしまいます。雲平は出産間近のミホの腹を踏みつけ、その場に置き去りにしました。翌朝、村人達に発見された時ミホは既に事切れていました。ところがミホの腹が蠢き、尻に赤い痣を持つ女児が誕生します。ミホの遺体は何かに引っ張られるように崖から落ち、地獄の入口へ飲み込まれていきました。赤ん坊は生形本家に連れていかれ、竜造の妻シマが育てることになります。しかしミホの子など憎くて育てられません。そこで使用人の山尾治が一計を案じ、離れた町で拾って来た捨て子をミホの子と偽って育てることにしました。本当のミホの子は、山尾によって東京の養護施設に預けられます。
地獄のネタバレあらすじ:動き出す運命
20年後。ミホの子どもは水沼アキと名付けられ、サーキットでレーサーを務めていました。出場するレースにはシマの長子松男の姿もありましたが、2人は当然自分達の関係を知りません。アキはレースの最中突然靄に包まれ、不気味なミホの幻影と声を聞きます。アキは動揺のあまり松男のマシンと接触、大事故を起こしてしまいました。休養することになったアキは、汽車で移動中再びミホの声を聞きます。すると突然ドアが開き、アキは列車の外に投げ出されそうになりました。間一髪アキを救ってくれたのは、偶然乗り合わせていた松男の弟幸男です。自分達が異母兄妹であるとも知らず、惹かれ合ってしまうアキと幸男。幸男は都会を離れ故郷へ帰る途中でした。幸男が連れ帰ったアキを見たシマは、ミホと瓜二つの顔に恐怖します。アキの入浴中、山尾に尻の痣を確認させたシマは、20年前捨てた赤ん坊が戻って来たと確信しました。一刻も早く村から追い出さなければと言うシマに、山尾は村の男達にアキを襲わせようと提案します。
地獄のネタバレあらすじ:ミホの恨み
アキはミホの形見の着物を着て寺に向かっていました。生形村に伝わる笠卒塔婆には金輪がついています。その金輪を回して自然に止まれば極楽行き、一度止まった後逆に回り出せば地獄行き、という伝承があるそうです。アキが試してみると、金輪は次々逆回りを始めました。地面が揺れ、アキは崖から滑り落ちそうになります。首に巻いていた包帯が引っかかり、首吊りの状態で苦しむアキ。その眼下には地獄の入口が渦巻いており、責め苦に喘ぐミホの姿があります。彼女は雲平とシマへの恨み言を吐き、自分の恨みを受け継いでくれと訴えました。気絶したアキが目を覚ますと、そこは炭焼小屋でした。隣には救出してくれた松男の姿があります。アキは取り憑かれたように松男に迫り、肉体関係を持ってしまいました。松男と共に生形本家へ帰ったアキは、幸男に自分がミホの子であること、淫らな血が自分にも流れていることを話し「助けて」と縋りつきます。幸男はそんなアキを抱きしめキスをしました。その後も度々様子がおかしくなるアキ。彼女は自分の身代わりとして育てられた久美にミホの着物を着せ、落としてしまったお守りを探して欲しいと頼みます。しかし着物姿で外出した久美はアキと間違えられ、村の男達に強姦されてしまいました。犯された上に自分の出生まで知った久美は酷く傷つきます。絶望の中、幼い頃から惹かれていた幸男に抱いて欲しいと迫りましたが、彼は「アキを愛してる」と告げ去っていきました。
地獄のネタバレあらすじ:地獄へ
シマはミホの形見の三味線を見せるため、アキを蔵に呼び出しました。ミホは温泉場を流れて歩く女芸人だったそうです。アキが生まれる3年前、雲平はミホを見初めて村に連れ帰り、周囲の反対を押し切って結婚しました。恨み言を吐き続けるシマが床下を開けると地下室があり、アキはそこへ突き落とされます。壁には防腐剤を入れられ、朽ちることも出来ない竜造の遺体が埋め込まれていました。アキは三味線と一緒に閉じ込められてしまいます。習った覚えもない三味線と歌を奏でていると、竜造のミイラが涙を流し始め、壁が崩れて地下道の入口が現れます。地下道は古井戸の底へ繋がっており、助けを呼んだアキは偶然通りかかった雲平に救出されました。雲平から久美が自殺したことを知らされ、ショックを受けるアキ。雲平はミホに未だ囚われており、殺したい、抱きたいと呟いてアキを押し倒します。アキは三味線のバチで雲平の眼球を切り裂きました。雲平は目が見えなくなって尚、三味線の音を頼りにアキを探し崖から落ちて死亡します。雲平の死にシマは急いで地下室へ降りていきますが、竜造の遺体は白骨化し、地下道の入口も崩れて閉じ込められてしまいました。頼みの綱であるハシゴもアキに外されてしまいます。シマが「地獄で待ってるわ」と告げると、アキは「そうよ、ミホが地獄で待ってるわ」と悲痛な声で言い返しました。アキは幸男と共に家を出て、かつてミホ達が辿った道を逃げていきます。地下室でシマの遺体を発見した松男は猟銃を手にアキ達を追いかけました。宥めようとする山尾を撲殺し、猟銃を連発する松男。すると岩が崩れ、松男は下敷きになって死亡しました。アキと幸男は崖近くの小屋で結ばれますが、崖が崩れ小屋もろともに落ちていきます。必死に幸男に縋るアキは、地獄の入口に飲み込まれていきました。
地獄の結末:地獄巡り
地獄へ落ちたアキは、一目母に会いたいと願い出ました。閻魔大王はそれを聞き入れ、荼吉尼天を案内役に付けます。アキは様々な地獄とその責め苦を目撃していきます。シマと山尾は巨大な石臼ですり潰されていました。幸男と松男はアキの幻を、竜造と雲平はミホの幻を求めて木に上り、刃に切り裂かれています。そしてアキはついにミホと対面しました。ミホは恐ろしい食肉獣と化しており、アキが我が子ということすら分かりません。アキは荼吉尼天から戦えと指示されますが、ただ「やっと会えた」と呟きミホの餌食になろうとしました。するとミホもアキに気付いたようです。声を出してはいけないという地獄の掟を破ったアキは、罰として桜の木に変えられてしまいました。ミホがその木に何度も体当たりを食らわせると、割れた隙間から眩い光が溢れ出します。やがて光の中から赤ん坊となったアキが現れ、気が付くと彼女は現世へ転生を果たしていました。アキを呼ぶミホの声が聞こえ、この映画は終幕を迎えます。
以上、映画地獄のあらすじと結末でした。
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