藤十郎の恋の紹介:1955年日本映画。菊池寛の原作の映画化。料亭の女将・お梶が名優・坂田藤十郎に寄せる人知れぬ思慕の情が露わになるとき、事件は起こった。映画の中で近松門左衛門が執筆する「大経師昔暦」に基づいて川口松太郎が書いた戯曲『おさん茂兵衛』を映画化した。溝口健二監督『近松物語』(1954年)では、長谷川一夫は茂兵衛を演じている。
監督:森一生 出演者:長谷川一夫(坂田藤十郎)、京マチ子(お梶)、小沢栄(近松門左衛門)、進藤英太郎(都万太夫)、柳永二郎(宗山清兵衛)その他
映画「藤十郎の恋(1955年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「藤十郎の恋(1955年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「藤十郎の恋(1955年)」解説
この解説記事には映画「藤十郎の恋(1955年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
藤十郎の恋のネタバレあらすじ:起・藤十郎 vs. 七三郎
元禄十一年、京都では地元の名優坂田藤十郎が抜群の人気を誇り、江戸から上ってきた中村七三郎の芝居はどれも不入りが続いていた。この春の七三郎の出し物は藤十郎お得意の濡事と知り、芝居小屋の主である都万太夫座をはじめとする藤十郎のとりまきたちは今回も七三郎は藤十郎の敵ではないと、たかをくくっていた。
七三郎は藤十郎の芝居の初日をのぞき、帰りに料亭「宗清」の主の美しい女房お梶と出くわす。またも不入りの七三郎に同情するお梶に対して藤十郎は、江戸の役者の良いところを見せる七三郎の芝居を高く評価した。そして藤十郎の見立ては正しく、藤十郎の新作は七三郎の人気に押されて不入りを記録する。
藤十郎の恋のネタバレあらすじ:承・近松門左衛門の力作
新作では新機軸を打ち出さなくてはならない。藤十郎は大阪から近松門左衛門を招く。こんな時お梶は宗清の部屋を藤十郎に貸し弁当を運んで助ける。お梶は商用で大阪にいることの多い夫の清兵衛の留守をまもる貞淑な妻だが、藤十郎とは幼馴染で、かつて祇園祭で共に連れ舞を踊ったこともあった。
藤十郎と近松が外出すると、不義密通を犯した男女が馬に乗せられて引き回されるのに出くわす。近松は大経師女房おさんと手代茂兵衛が密通して処刑された事件を思い出し新作「大経師昔暦」を書く。新作を読んだ万太夫や藤十郎の一座の者たちは皆それを称賛する。
ただ、藤十郎だけは、脚本は高く評価するものの、経験したことのない不義密通を演じることに恐れをなしていた。しかし万太夫は既にお梶を通じて清兵衛から製作資金を得、近松も自作の上演を強く望み、「大経師昔暦」の上演が決まる。
藤十郎の恋のネタバレあらすじ:転・突然の告白
藤十郎は初日を前にして、茂兵衛をいかに演じるか悩み続け、相手役の女形にも怒りをぶつける。初日を延期できないかと口にし、稽古を止めて芝居小屋を出、宗清の一室に休む。お梶がその部屋に来るが、藤十郎は祇園祭で連れ舞を舞った時以来お梶のことを思い続けてきたと告白する。一人前の役者になったら告白しようと思っているうちにお梶が嫁に行ってしまったと。
お梶は、いったんは身を退いたが、藤十郎に今のことばが真実であることを確認すると、行燈の火を消し、近くに他人がいないのを確認して藤十郎の方に体を寄せる。だが、藤十郎はそこで立ち上がって去ってしまった。芝居小屋に戻り舞台にロウソクを灯させて稽古を再開するのだった。
藤十郎の恋の結末:芝居小屋の死
芝居の初日、お梶は体調がよくないと言って、夫に一人で万太夫座に行かせる。だが、こっそり芝居を見に行く。そこでお梶は、茂兵衛に思いを告げられた おさんが、自分が藤十郎の前でしたように、行燈の火を消して他人が近くにいないか確認するのを見るのだった。芝居は好評だった。
お梶は幕間に、藤十郎にこの芝居のために人妻と関係したのではという話をする男を藤十郎がしかりつけるのを耳にする。そしてお梶は自分自身に刃を突いて死ぬ。お梶の死に顔を見て取り乱しかける藤十郎を近松が亡骸とそれを囲む人々から引き離す。藤十郎は芝居のために偽りの恋を仕掛けたと言い、これ以上芝居はできないと言うが、近松は芝居をここで捨てていちばん悲しむのはお梶だろうと言う。藤十郎は波立つ感情を抑えて舞台へ出るのだった。
以上、映画「藤十郎の恋」のあらすじと結末でした。
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