永遠に僕のものの紹介:2018年アルゼンチン,スペイン映画。1971年、ブエノスアイレスで殺人や強盗など数々の罪を犯して世界に戦慄を巻き起こした17歳の少年がいた。その容姿はブロンドの巻き髪に、吸い込まれるような大きく澄んだ瞳、艶やかに濡れた柔らかな唇、磁器のように滑らかな白い肌。美しすぎるヴィジュアルに、悪魔も逃げ出す傲慢な魂をたたえた少年、カルリートス。欲しいものは手段を問わず何でも手に入れ、目障りな者は誰でも構わず殺す。アルゼンチンでは知らない人がいない実在の連続殺人犯「カルロス・エディアルド・ロブレド・プッチ」をモデルに、衝撃の実話を官能的に描く。プロデューサーは、カンヌ映画祭監督賞やアカデミー賞外国語映画賞などを受賞したペドロ・アルモドバルとその弟のアグスティン・アルモドバル。自身の美意識を引き継ぐものとして本作の監督に選んだのは、南米を中心とし世界各国の映画祭で様々な賞を受賞してきたルイス・オルテガ。主人公カルリートスと相棒ラモンの不穏で切ない名前のない愛にも注目。
監督:ルイス・オルテガ 出演:ロレンソ・フェロ(カルリートス)、チノ・ダリン(ラモン)、ダニエル・ファネゴ(ホセ/ラモンの父)、メルセデス・モラーン(アナマリア/ラモンの母)、ルイス・ニェッコ(エクトル/カルリートスの父)、ピーター・ランサーニ(ミゲル)、セシリア・ロス(オーロラ/カルリートスの母)ほか
映画「永遠に僕のもの」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「永遠に僕のもの」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
「永遠に僕のもの」予告編 動画
映画「永遠に僕のもの」解説
この解説記事には映画「永遠に僕のもの」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
「永遠に僕のもの」ネタバレあらすじ:起
1971年、ブエノスアイレス。真面目で善良な父エクトル(ルイス・ニェッコ)と愛情に満ち溢れた優しい母オーロラ(セシリア・ロス)を両親に持つ、17歳の美しい少年カルリートス(ロレンソ・フェロ)。彼は毎日のように強盗をし、欲しいものを思いのままに手に入れてきました。家に持ち込まれた見慣れない品を見て、カルリートスが盗みを繰り返していることに気付いていた両親でしたが、まだやり直しができることを信じて転校させることにしました。
新しい環境になかなか馴染むことができなかったカルリートスでしたが、校内で少し浮いた存在のラモン(チノ・ダリン)を見つけます。カルリートスはいきなりケンカを売ります。ラモンの気を引くためにしかけたことでしたが、その荒々しいラモンの魅力に一目で心を射抜かれてしまいました。ラモンもまたカルリートスの美しい容姿で平然と罪を犯すギャップに強く魅せられたのでした。
「永遠に僕のもの」ネタバレあらすじ:承
ラモンはカルリートスを自分の両親に引き合わせることにしました。ラモンの父ホセ(ダニエル・ファネゴ)は裏社会に生きる前科者。しかしそんな極悪なホセを前にしてもカルリートスは臆することなく、むしろ盗みを持ち掛け、ラモンと3人で銃砲店に侵入することに。そして軽々と大成功を収めました。ホセはラモンに向かって「あのガキは天才だ」と伝え、カルリートスに舌を巻きながらも、ルールを無視して勝手な行動に走る無謀さに危険も感じていました。そして、その予感は的中します。
ある時、ラモンと二人で裕福な一人暮らしの屋敷に忍び込んだカルリートスは、起きてきた主人を何の感情もなく撃ち殺しました。また、宝石店へ押し入ったときには、盗みを急ぐラモンに対して「そう焦るな。楽しまなきゃ」とカルリートスは不敵な笑みを浮かべて諭しました。
カルリートスにとって盗みは特別なことではなく、ごくありふれた日常の一部だったのです。
「永遠に僕のもの」ネタバレあらすじ:転
しかし、少しずつカルリートスとラモンの関係に変化が出てきます。
ラモンが突然「俳優を目指す」と言い出したのです。言葉では応援していると言いつつも、心の中では歓迎できないカルリートス。TV番組で歌うラモンを観ながら、どこか遠い存在に感じてしまっていたのでした。
そしてまた別の日、ラモンが運転する車が検問に引っかかる事態が起こりました。同乗していたカルリートスは身分証を持っていましたが、ラモンは家に忘れてしまい警察に連行されてしまいました。カルリートスは署長を買収するための金を取りに自宅へ行き、再び署へ戻りますが、ふとよぎる嫌な予感。ラモンを残したまま警察署から立ち去ってしまったのです。
数日後、保釈されたラモンには新しい相棒ミゲル(ピーター・ランサーニ)がいました。ラモンに謝るどころか「罠に気付いた」と言い訳するカルリートス。はじめは突っかかっていたラモンも行動を共にするうちに少しずつカルリートスを許していきます。
しかし、カルリートスはミゲルから、ある事実を聞かされました。ラモンの保釈金を払ってくれたのは、以前盗品を買ってくれた美術収集フェデリカで、ラモンは足を洗って彼と一緒にパリ旅行を計画していると。
いまだにラモンとフェデリカが繋がっていたことすら気付かなかったカルリートスは、自分のものを取られたような激しい嫉妬心に身を焦がします。そして、助手席で寝ているラモンを見つめると、ハンドルを対向車に向かって切りました。故意の事故、そして最愛のラモンの死。しかしカルリートスの目には涙もありませんでした。
ラモン亡き後、カルリートスはミゲルと組んで強盗を重ねますが、些細ないざこざでミゲルも撃ち殺してしまいます。
「永遠に僕のもの」結末
しかし、そんなカルリートスにも運が尽きる時がやってきます。
捜査の手は伸びついにカルリートスは逮捕。数々の強盗と殺人を犯した、この天使のように美しい少年はセンセーショナルに報道されました。
逮捕されてもいつもと変わらない表情のカルリートス。面会に来た両親から精神障害を主張するよう提案されるものの、自分は他の人と何も変わらないと、カルリートスは聞き流します。さらに意図的にスプーンを飲み込み医務室へ行くと、看守の目を盗んで脱出に成功。脱獄を告げるサイレンがけたたましく鳴る中、カルリートスは街へと消えていきました。
電車に乗ったカルリートスは大粒の涙をこぼします。この世のものとは思えないほど極悪非道な行動をとってきたカルリートスが、初めて見せた人間らしい涙でした。
カルリートスは逃亡の末、ラモンの家へやってきました。しかしすでに空き家になっていました。しかたなくそこで一夜を過ごし、翌日自宅へ電話をしました。母オーロラは「帰ってきて」と懇願しましたが、カルリートスは母のどこかよそよそしいような様子の異変に気付きます。「ラモンの家にいる」とだけ告げると、カルリートスは電話を切りました。
置き捨てられたラジオのスイッチを入れると、スピーカーから流れてくる音楽に合わせてカルリートスは華麗にステップを踏みはじめました。間もなく警察隊がカルリートスのいるラモンの家に到着し、幾重にも取り囲んで突入の準備を整えます。
しかしカルリートスはお構いなく踊り続けます。幸せそうにすら見えるその姿はまさに天使のようでした。
以上、映画「永遠に僕のもの」のあらすじと結末でした。
ポスト・ティモシー・シャラメと評されたロレンソ・フェロの怪しい魅力がふんだんに詰まった一作です。
彼が演じるカルリートスはまだあどけなさの残る少年でありながら、気の向くまま強盗に入り、人を殺し、その一方で女の子と遊んで青春を謳歌しています。法にも良心にも縛られることない彼ですが、唯一思い通りにならないのが同級生のラモン。彼とは共犯関係という、ある種最も親密な関係でありながら、その心は手に入らない。ついには彼を殺め、その魂を自分のものとしながらも、カルリートスはどこまでも孤独です。たった一人で踊り続けながら、どこにもない場所をにらみつける彼のまなざしが、強く印象に刻み付けられています。