一人っ子の国の紹介:2019年アメリカ映画。中国で1979~2015年まで施行されていた一人っ子政策に興味を持った監督、ナンフー・ワンが自ら取材したドキュメンタリー作品。ナンフーは一人っ子政策が始まった6年後に誕生した。一人っ子政策真っ只中の中国で育ち、その後アメリカに移住し男児を儲けた。中国から離れたこと、自身も母親になったことで一人っ子政策に疑問を抱くようになる。彼女は生まれ育った村に帰り、当時を知る人々にインタビューを行う。中国の一人っ子政策に対する民間人の様々な意見をありのままに描いている。
監督:ナンフー・ワン、ジアリン・チャン 出演:ナンフー・ワン、ほか
映画「一人っ子の国」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「一人っ子の国」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
一人っ子の国の予告編 動画
映画「一人っ子の国」解説
この解説記事には映画「一人っ子の国」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
一人っ子の国のネタバレあらすじ:起
監督のナンフーは1985年に誕生しました。女児であったが、ナンは「男」、「フー」は柱という名を付けられ、大黒柱になることを望まれます。その後ナンフーには弟が生まれるが、2人目を持つことに対し祖父が村長と闘ったことを知りました。
元村長のワン・トゥンデは、村長として国が掲げる一人っ子政策を推進しなければなりませんでした。しかし村では皆が男児を欲しがるので、第一子が女児だった場合などは従おうとしません。一人っ子政策を広める手段として、伝統芸能である舞踊に目を付けます。
計画生育宣伝委員であるリュウ・シアンウェンは、一人っ子政策を題材にした舞踊の脚本を書きました。国ではリュウのような人が多々おり、テレビやステージなどでも一人っ子政策を推進する内容の演目が取り上げられていました。
ワンは政策に乗り気ではありませんでした。しかし政策である以上従わざるを得ません。彼は女性が不妊手術を拒否したところ、強制的に連行させられた村の話も聞いていました。自分の村を守るために、ワンは不妊手術をしない女性の家を取り壊す強行手段を取っていたのでした。
一人っ子の国のネタバレあらすじ:承
ワンの話を聞いて、ナンフーは不妊手術を行った助産師を尋ねます。ナンフーを含め村のほとんどの子どもを取り上げたユアン・フアルは、現在不妊治療を専門に診ています。出産も中絶もしていません。一人っ子政策の不妊手術が壮絶なあまり、彼女は罪悪感に苛まれていました。不妊治療を低価格で請け負い、受け取ったお金も積極的に寄付することで罪滅ぼしをしようとしていたのです。彼女も政策には乗り気ではなかった一人でした。
しかし、全ての人が政策に対し後ろ向きであった訳ではありません。計画生育委員のジャン・シュウキンは中絶・不妊手術を推進し、国から何度も表彰されました。ジャンは政策がなければ中国は資源不足で滅びていただろうと語ります。それは戦争に似ていて、人口戦争だと表現しました。
芸術家のワン・ペンは、政策の凄惨さを芸術で表現しました。彼は河原などに放棄されている胎児にショックを受け、忘れてはならないと作品に残そうと毛沢東思想のページに胎児を365人描き、不妊・中絶手術が身近なものであると訴えかけたのです。
一人っ子の国のネタバレあらすじ:転
なぜ胎児が放棄されていたかは、祖父たちへのインタビューで明らかになります。第二子以降が誕生しても女児ならば捨てていた、男児は家を継ぐが女児は他家に嫁ぐので他人だと話します。生まれた赤ん坊が女児だったとき、人身売買業者に無償で渡すケースもありました。
元人身売買業者のドウン・ユエノン彼は国で最も大規模な人身売買業者の一員として、拾った赤ん坊を国外に売ったことで逮捕・服役していました。ドウンは電車で広東省に赴き、捨てられている赤ん坊を拾っては連れ帰っていました。そして施設に売っていたのです。施設は子どもを国外で養子縁組させ、お金を儲けていました。
一人っ子の国の結末
中国から3人の女児を引き取った夫婦がアメリカに住んでいます。ブライアン・スタインとロン・ランス・スタインは、リサーチ・チャイナという会社を設立し、政策施行時に養子になった子どものデータを保管しています。要望があれば子どもの行方を捜すサービスも行っています。彼らはドウンとその母親にも接触し、裁判記録のコピーを持っていました。
そして、彼らは施設が違法に赤ん坊を拾ってきたことを突き止めます。1992年から現在までで少なくとも13万人が国外へ養子に出されています。合法なものはごくわずかで、ほとんどが違法な人身売買でした。
人身売買は身内が売るケースもあれば、他人が子どもを攫うケースもありました。ジャーナリストのパン・ジアオミンは人身売買に関するデータを多数持っていましたが、当局に止められてしまいます。彼の持つデータの中には、計画生育委員が家を襲い、子どもを連れて行ったと語る映像がありました。
それでもスタイン夫妻のおかげで、再び繋がれた家族もいます。リサーチ・チャイナの調査により、離れ離れだった双子が、中国とアメリカで生き延びていることが分かりました。
様々な思惑が入り混じった一人っ子政策は、年代や立場によって解釈が変化するものでした。
以上、映画「一人っ子の国」のあらすじと結末でした。
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