張込みの紹介:1958年日本映画。松本清張(原作)、橋本忍(脚色)、野村芳太郎(演出)という名トリオが初めて手を組んだ作品で、それまでプログラムピクチャーばかり撮ってきた野村監督の出世作となった。ごく短い原作を長編化した橋本忍の構成力と野村監督の粘りのある演出が見事。
監督:野村芳太郎 出演:大木実(柚木隆雄)、宮口精二(下岡雄次)、高峰秀子(横川さだ子)、田村高廣(石井)、浦辺粂子(肥前屋の女将)、菅井きん(下岡の妻)、ほか
映画「張込み(松本清張原作)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「張込み(松本清張原作)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「張込み(松本清張原作)」解説
この解説記事には映画「張込み(松本清張原作)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
張込みのネタバレあらすじ:起
夜の11時6分、横浜駅の6番線から、鹿児島行きの急行列車「さつま」号が発車しようとしていました。フォームの階段を登ってきた男2人がなんとか列車に飛び乗り、ひと息つきます。彼らは空席を探しますが、満員のため、通路に座らざるを得ません。ひとりがやっと座れたのが京都。もうひとりは大阪で席にありつきました。
途中で仕事仲間らしい男2人と一緒の席に座りますが、彼らは小郡で降りてしまいます。男たちは暑さにまいりながらも、さらに列車の旅を続けます。開門海峡を渡り、列車は九州へ。ようやく男たちが下車したのは佐賀駅です。
ふたりは翌朝、警察署に赴き、自分たちの名刺を署長に取り次いでもらいます。中年の方が下岡雄次、若い方が柚木隆雄、彼らはともに警視庁の刑事部捜査第一課に所属する刑事でした。彼らがわざわざ佐賀までやってきたのは、深川でおこった強盗殺人事件の捜査のためです。
犯人のひとりは山谷のドヤ街で逮捕したのですが、もうひとりの石井という男は逃亡中で、昔付き合っていたさだ子という女のところに身を寄せる可能性がありました。そこで、さだ子の嫁ぎ先の佐賀まで下岡たちが赴いてきたのです。
張込みのネタバレあらすじ:承
下岡と柚木はさだ子の家まで来ると、その向かいにある肥前屋という旅館に宿泊することにします。ここで張り込みをおこない、石井が直接現れるか、何らかの方法で連絡を取ってくるのを待とうというのです。下岡か柚木のどちらかが必ずさだ子に貼り付き、買い物に出かける時もしっかりと跡をつけます。
そうやっているうちに、さだ子の生活の詳細が刑事たちにも分かってきました。夫の横川は中年の銀行員で、さだ子はその後妻。20もの年齢差があります。子供3人のうちの上2人は前妻の子なのですが、幸い、母子の間はしっくりいっています。ただ夫が気難しく、暴君じみたところがあり、さだ子は妻というより女中という感じでした。
また横川はひどくケチで、さだ子は家計のやりくりに苦労しています。それでも表立った不和はなく、いたって穏やかな暮らしぶりでした。とても凶悪犯と関係があるようには思えません。刑事たちは、無駄足かもしれないと思いつつ、根気よく張り込みを続けます。
張込みのネタバレあらすじ:転
やがて予定の1週間が経ち、もう張り込みをやめて東京に引き上げることになりました。ところがその土壇場で、向かいの家で動きが起こります。流しの傘直しが玄関に入ってすぐに引き上げた後、急にさだ子が外出し、市場とは違う方向に歩き出したのです。
どうやら傘直しが何か言付けを伝えたようです。下岡は列車の切符を買いに行っていたので、柚木だけがその跡を追います。祭りの人混みで一旦はその姿を見失うものの、駅で聞き込みをして男女がバスに乗ったと知り、タクシーで追跡。懸命に急いだものの、結局終点までバスに追いつくことはできません。
ただ、乗務員からの情報によると、2人は山間の宝泉寺温泉まで歩いていったようです。柚木は電話で下岡に連絡を取ると、自分も徒歩で温泉場に向かいます。幸い、途中出会った人は、さだ子と石井を目撃していました。方角を聞いてそちらに向かった柚木は、川のほとりでようやく彼らを発見します。
張込みの結末
てっきりさだ子は脅されて拉致されたと考えていたのですが、石井と一緒にいる彼女の顔は輝いており、普段夫と暮らす様子とはまるで違います。実は石井は自分の現状について嘘をつき、仕事で沖縄に向かう途中に立ち寄ったと話していたのです。自分ひとりでは逮捕もできず、柚木はさらに跡をつけますが、また見失ってしまいます。
温泉場の手前まで来てようやく追いつくと、ふたりはキスを交わしていました。やがてさだ子は石井の嘘を悟り、いっしょに逃げようと持ちかけます。その後、ふたりは旅館の方へ向かい、柚木もその跡を追って町中へ。橋で待っているところに、下岡と佐賀県警の応援要員が到着します。
裏口を警官たちが押さえた上で下岡と柚木は旅館に入り、廊下にいた石井を逮捕。柚木が湯から上がってきたさだ子と対面し、すぐに家に帰るように促します。最初呆然としていたさだ子でしたが、石井が連行されていくのを目撃し、その場に泣き崩れてしまいます。
柚木はその姿を見て「この人は、これでまた退屈な日常に戻っていくんだ」と思いながら、その場を去っていくのです。
以上、映画「張込み」のあらすじと結末でした。
時々挿入される、警察署での会議などのシーンが、後の「砂の器」に通じていますよね。