瀧の白糸の紹介:1933年日本映画。北陸一の美人と謳われる水芸の太夫・滝の白糸は、向学の念を抱く青年・村越欣也と結ばれます。士官の道を志す欣也を東京へ送り、仕送りを続ける白糸に、浮世は辛く哀しい運命を突きつけてきます。製作は入江たか子プロダクション。監督は、名匠・溝口健二。昭和2年『キネマ旬報』ベストテン第2位。日本の映画史に残るサイレント映画の傑作です。
監督:溝口健二 出演者:入江たか子(滝の白糸:水島友)、岡田時彦(村越欣弥)、村田宏寿(南京出刃打)、菅井一郎(岩淵剛蔵)、浦辺粂子(銀子)、滝 鈴子(撫子)ほか
映画「瀧の白糸(1933年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「瀧の白糸(1933年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
瀧の白糸の予告編 動画
映画「瀧の白糸(1933年)」解説
この解説記事には映画「瀧の白糸(1933年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
瀧の白糸のネタバレあらすじ:起
北陸にこの人ありと謳われる水芸人一座の座長、滝の白糸。美人の誉れ高く、芸も一流です。鉄火肌の気性で鳴らす彼女は、見世物師たちからも慕われています。いま一座は金沢の浅野川のほとりで打つ見世物興業に参加しています。
芝居小屋は連日満員です。白糸大夫のあで姿をひと目見ようと贔屓客も多く押しかけ、毎年この時期の浅野川河畔は、金沢の初夏を彩る風物詩にもなっています。
滝の白糸は本名を水島友といいます。友は24歳になる今日まで、水芸一筋に生きてきた芸人です。一座をひきいて、いらぬ苦労を背負い込むのも、芸に磨きをかけたい心意気の現われです。芸がすべて、芸こそ命・・・。村越欣也という若い馬丁に遇うまでは。
村越欣也は、乗合馬車の馭者です。客として白糸を乗せた日、欣也は、ひょんなことから男気を見せることになりました。白糸は欣也の凛々しさにうっとりと魅了されます。が、しかし、その日を限りに欣也に遇う機会がありません。ただ面影を偲ぶばかりです。
瀧の白糸のネタバレあらすじ:承
浅野川にかかる卯辰橋の上で白糸と欣也が再開するのは、それから幾日も経った月夜のことでした。夕涼みに現れた白糸の目に欣也の姿が映ります。欣也は橋の欄干にもたれて寝入っています。月の光が欣也の端正な横顔を照らし出しています。
目覚めた欣也、白糸を覚えていません。「あんた不実だね、ほら、あの時」と切り出した白糸に、「ああ、あの時の」。得心した欣也は、しかし不機嫌です。「あんた、どうしたの、訳を聞かせてよ」。「じつは、あれから」と、欣也は男気を見せたばかりに会社をクビになっています。
「いまは泊まるところもなく、こんな橋の上で寝ています」としょげる欣也に、「これからどうするつもり?」と白糸が訊ねます。すると欣也は、法律を勉強して士官になりたいのだと口にします。「それじゃ、あんた、東京へ行かなくちゃ」。もちろん、そうできるなら。
白糸は心を乱されます。自分のために職を追われてしまった男。その人のくすぶる志を援助したい。白糸は切り出します。「お前さんに貢ぎたいけど、そんなこと言ったら、お前さんは怒るかしら?」。さらに「東京へ行って学問をしなさいな」と白糸は励まします。しかし欣也はためらいます。「いまの私には、報いる術がない」。「あたしを可愛がってよ」。白糸はそう言って、欣也を求めます。村越欣也25歳。明治23(1890)年の夏のことでした。
瀧の白糸のネタバレあらすじ:転
月日は流れ、欣也は東京で2年余り、猛勉強に励みます。白糸はその間、片時も仕送りを絶やしません。旅芸人一座には辛い冬もつきものです。粥をすするのが精いっぱい、そんな晩さえあります。しかし白糸は、欣也の出世のためなら、と資金援助を欠かしません。
金策がいよいよ尽きた晩、白糸は高利貸しの岩淵剛蔵を訪ねます。色好みの岩淵から金を借りるのは厄介です。しかし白糸は、それでも「欣さんのためなら」と、魔の手を振り切り300円の大金を借り受けます。
卑劣きわまりない岩淵は、この時ばかりと、白糸を追い込みます。資金繰りに苦しむ別の一座の座長、南京出刃打(なんきんでばうち)を抱きこみ、帰路に就く白糸の大金を奪わせます。「もう一度、金を借りにくる。その時こそ、おれは白糸を手に入れる」。
案の定、白糸は岩淵の邸へ現れます。「憎っくき、岩淵」と、白糸は出刃包丁を振り上げます。岩淵はその手をつかみ、白糸に抱きつきます。抗う白糸。岩淵を突き放すと、なおものしかかる岩淵の体に刃先が立ち、岩淵はその場で息絶えます。白糸はあるだけの金をかき集めて立ち去ります。
瀧の白糸の結末
官憲に捕らえられた白糸は、以来ずっと口を閉ざしています。いま欣也が出世の階段を上りはじめています。口を滑らせて、よもや出世の妨げになってはならいと白糸は考えています。
いよいよ岩淵殺しの裁判を控え、新進気鋭の検事代理が金沢へ東京から赴任してきます。切れ者と評判の検事代理と滝の白糸。傍聴席は芝居でも見るかのように固唾を呑んでいます。
検事代理は村越欣也。「本官が改めて尋問するが、包み隠さず事実を申せ」。その凛々しさ。威厳に満ちた落ち着きを見て、白糸はうっとりと微笑みます。この姿をいつか見る日が来ると信じて、白糸は、何物にも耐えてきたのでした。
さらに検事代理が続けます。「・・・そなたも滝の白糸、名代の芸人、・・・そなたには多くの贔屓があるはずだ・・・、もしも本官がその贔屓であったなら、嘘偽りは命に代えても決してさせないつもりだ」と、以上の要旨を滔々と述べ、涙ながらに弁論します。
白糸は、説得に応じてすべてを話します。村越検事代理の目の前で。金を盗まれたことを。金を盗んだことを。金はすべて、思う人への学資で使い果たしていることを。そして、金を集めることの困難さと苦労を最後に口にします。滝の白糸の水島友は、嘘偽りなくすべてを話し終えて舌を噛みきります。「白糸死す」の報せを受けた村越欣也は、浅野川のほとりでピストル自殺します。
以上、映画「瀧の白糸」のあらすじと結末でした。
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