狂った一頁(くるったいっぺーじ)の紹介:1926年日本映画。衣笠貞之助が川端康成、横光利一らの協力を得て製作した無字幕のサイレント映画。様々な技法を駆使した日本初のアヴァンギャルド映画である。フィルムは火災によって消失したとされてきたが、1971年衣笠の自宅から偶然発見された。オリジナル版は上映時間70分だったが、現存するニュー・サウンド版は衣笠自らの手によって再編集され、59分に短縮されている。自分の虐待が原因で狂ってしまった妻を見守るため、彼女が入院している精神病院に小使として勤める老人。院内は狂人で溢れ、狂気の世界が繰り広げられる。ある日、夫妻の娘が結婚の報告をしにやって来るのだが。
監督:衣笠貞之助 出演:井上正夫(小使)、中川芳江(妻)、飯島綾子(娘)、根本弘(青年)、関操(医師)ほか
映画「狂った一頁」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「狂った一頁」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
狂った一頁の予告編 動画
映画「狂った一頁」解説
この解説記事には映画「狂った一頁」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
狂った一頁のネタバレあらすじ:狂った妻
舞台は大正末期の日本、とある精神病院。嵐の夜、雨が強く叩きつけ稲妻が閃いています。隔離病棟では、1人の女性患者が踊り狂っていました。まるで激しい嵐に呼応するかのように、一心不乱に舞う踊り子。疲れ果てては横になり、また踊り始めます。
その隣の病室には、女性患者が1人横たわっていました。恨めしそうに動く眼球は、赤ん坊の幻覚を映しています。病棟の廊下は長く、暗く、いくつか病室が続いています。病室は狭く、ドアも無く、鉄格子がはまっていて、個室と言うよりは独房のように見えました。
病院に勤める小使の老人が、横たわる女性患者を見ています。2人は夫婦の間柄でした。小使は元船員で、妻を虐待し子どもも置いて長い船旅に出ていました。それが原因で妻は気が触れてしまい、この病院に収容されたのです。小使は贖罪のため病院に勤め、妻を見守りながら仕事をしていました。
狂った妻は小使が誰なのか分かりません。妻は鉄格子の向こうに立つ小使の服を掴み、ボタンを引きちぎって笑い出しました。再び赤ん坊の幻覚。赤ん坊に手を伸ばし絶叫するかつての自分。妻は病室で1人泣き喚きます。
狂った一頁のネタバレあらすじ:親子の再会
そんなある日、精神病院に小使達の娘がやって来ました。母に会いに来た娘は、小使が勤めているとは知らず驚きます。娘には裕福な青年との縁談話が持ち上がっていました。しかし母親が精神を病んでいるため、結婚にこぎ着けられずにいるのです。
病室まで行って声をかけても、妻は娘に気付きません。娘は思い思いに過ごす患者達に怯えながら病室を後にしました。患者の様子は様々です。じっと虚空を見つめる者。暴れ回る者。怒り狂い、何かに怯え、大口を開けて笑う狂人達。ボタンを頭に乗せる妻を、背後の看護師が笑って見ています。
妻にはボタンがかんざしに見えていました。逆さまに映る幻覚の妻は、かんざしをさして綺麗な格好をしています。患者が看護師に付き添われて庭に出て来ました。小使はこれをチャンスと見て、妻と娘を引き合わせようとします。しかし暴れ狂う患者に邪魔され、娘は逃げるように病院から走り去りました。
狂った一頁のネタバレあらすじ:混沌
隔離病棟では踊り子がずっと踊り続けています。病室に戻る途中の妻は、その踊りを見て大はしゃぎしました。患者が山と集まって来て歓声を上げます。患者と医師と看護師が溢れ返り、狭い廊下は大騒ぎになりました。
小使は先ほど娘の邪魔をした患者を見つけ、取っ組み合いの喧嘩をします。座り込んだ妻がそれをじっと見ていました。ようやく騒ぎが収まると、小使は医師から厳重に注意されます。
娘のことを案じる小使は、福引で一等のタンスを引き当てました。タンスを担いで帰る小使に、周囲の人は拍手を送ります。娘の嫁入り道具が出来たと喜ぶ小使。ところがそれは妄想で、現実は何も変わりませんでした。
ある夜、隙をうかがっていた小使は、ついに妻を連れて逃げ出そうとします。しかし嫌がる妻は暴れ回り、結局自分から病室に戻ってしまいました。肩を落として歩く小使は鍵束を落としてしまい、それを医師が回収します。
狂った一頁のネタバレあらすじ:侵食される現実
小使は懲りずに妻を連れ出そうとしました。しかし患者達が集まって来て行く手を阻みます。医師に見つかり、看護師に囲まれた小使。彼は医師に掴みかかり、モップで滅多打ちにして殺してしまいました。
やみくもにモップを振るう小使の前を車が通ります。それには花嫁姿で微笑む娘が乗っていました。妻は車に飛びかからんばかりの勢いで喚き散らしています。娘の嫁入りを邪魔しようとする妻を羽交い締めにした小使は、気付くと酷い暴力を振るっていました。娘が必死に止めようとしますが無駄でした。やがて娘を乗せて車は走り去ります。
小使は頭を抱えて朝を迎えました。どこまでが現実でどこからが夢だったのか、どうにも判然としません。妻への罪悪感と、娘の幸せのために狂人の妻が邪魔だという焦燥感。苦悩は次第に狂気を生み、小使を飲み込んでいきます。
彼は能面を運んで患者達に配っていきます。能面をつけた彼らは楽しそうに肩を揺らしていました。小使の顔はとても晴れやかです。彼は翁の面をつけ、小面をつけた妻の肩に手を添えました。しかし、これもきっと妄想に過ぎないのです。
狂った一頁の結末:狂気の牢獄
精神病院はいつも通りの非日常を繰り返します。狂い続ける患者、付き添う看護師。死んだはずの医師は何事もなく仕事を始めます。
しかし、小使は少し変わってしまったようです。彼の目はどこか狂人めいて、何かをぼんやり見つめていました。現実と妄想の境はもはや曖昧です。鍵束を落とした彼は、管理能力を問われ、隔離病棟に入れなくなりました。
鉄柵の向こうにいるはずの妻を想います。暴れ狂っていた患者が小使にお辞儀をして歩いていきました。小使が静かに掃除を始め、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「狂った一頁」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する