ガス人間第1号の紹介:1960年日本映画。いまではへんてこりんなタイトルの極みともいえる「ガス人間第1号」。当時、東宝映画では、ガス人間とともに液体人間、電送人間を企画し、いずれも映画化にこぎつけています。特撮の名手、円谷英二を擁する東宝は、ゴジラ映画の名匠、本多猪四郎監督とタッグを組ませ、珍奇、奇怪な素材を好んで実写化しています。一連の東宝怪獣映画の登場は、子供たちを小躍りさせました。対して、本作を含む怪奇人間シリーズは、男女の心の機微を描くなど、大人の鑑賞にも耐えられるだけの工夫が施されています。
監督:本多猪四郎 特技監督:円谷英二 出演者:八千草薫(春日藤千代)、三橋美智也(岡本刑事)、土屋嘉男(水野)、佐田契子(新聞記者)、松村達夫(新聞社デスク)小杉義男(稲生刑事)、左卜全(老皷師)ほか
映画「ガス人間第1号」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ガス人間第1号」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ガス人間第1号の予告編 動画
映画「ガス人間第1号」解説
この解説記事には映画「ガス人間第1号」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ガス人間第1号のネタバレあらすじ:起
東京の吉祥寺で銀行強盗事件が発生しました。犯人は銀行の車を奪って逃走し、都下からさらに下る五日市街道を走り抜けています。曲がりくねった道、急なカーブをものともせず、逃走車はパトカーの追跡にも動じません。
逃走車を追うのは、警視庁警部補の岡本(三橋美智也)です。岡本は制服警察官とともにパトカーに同乗しています。闇を裂いて走る逃走車は山間部へ向かいますが、カーブでハンドルを切り損ないます。車は車道を外れ、崖下へ転落して行きました。
岡本警部補が落下した車の中を窺います。しかし、車内はもぬけの殻です。どこへ逃げたのか、あたりを窺うと、濃い闇の中に1軒の民家が見つかります。
「春日」と表札にあるその屋敷は、春日流の家元、春日藤千代(八千草薫)の自宅兼稽古場です。薄明かりを灯しただけの稽古場では、老皷師(左卜全)の伴奏ひとつで若い家元が舞の稽古をしています。その美しさに岡本刑事は思わず息を呑みますが、銀行強盗の行方は、その場を限りに途絶えてしまいました。
ガス人間第1号のネタバレあらすじ:承
日を置かず、また事件が発生します。おなじ五日市街道沿いの中野にある銀行です。犯人は顔も見られずに逃走しました。吉祥寺の事件との関連は定かではなく、事件は暗礁に乗り上げます。
一方で、「落ちぶれた家元」と揶揄されていた春日家の金回りがよくなっているとの評判です。疎遠になっていた弟子たちのもとへ家元が訪ね、高額の出演料を払い、一門の発表会へこぎつけようと参加を呼びかけています。
岡本刑事と親しい新聞記者の京子(佐田契子)が藤千代と強盗犯との関連を推理します。すると岡本の頭の中でも、逃走犯を見失った直後に出くわした藤千代の姿が重なります。
銀行から奪われた1万円札の一部が町に出回ります。しかも五日市街道です。いったい五日市街道の先に何があるのかと京子の推理は進みます。その後に警視庁が春日家を任意で捜索しました。案の定、藤千代の部屋から1万円札の束が見つかります。
警視庁の取調室で藤千代が事情聴取を受けています。藤千代は金の出所を明かしません。自ら金を使ったことは認めます。しかし、それ以上のことには口を閉ざしています。
ガス人間第1号のネタバレあらすじ:転
藤千代の黙秘が新聞紙上をにぎわすと、「銀行強盗犯は僕です」と名乗る青年(土屋嘉男)が警視庁へ出頭してきます。藤千代に金を渡したのも僕です、と実直そうな青年が言います。銀行へ行き現場検証をしましょう、と刑事一同へ誘いかけてきます。
銀行の金庫室を囲んだ刑事たちを前に実際の手口が披露されます。彼は着衣のまま鉄格子を通過します。15センチ幅で仕切った鉄格子ですから、本来なら人は通れません。しかし彼は、瞬く間に気体になります。気体のまま進み出ます。そして金庫を開け、金を取り出し、気体のまま鉄格子の外へ出てきます。わずか数分の間に気体と実体とを繰り返し、金をせしめてしまうのです。
はたして奇怪なこの男、どこからやって来たのでしょう。マスコミから「ガス人間」と名づけられ、一躍有名人になった彼が以下のように新聞社のインタビューに答えています。
経済的な理由から大学進学をあきらめ、航空自衛官を志願するも、体力不足を理由に不合格。図書館の書肆をしているところへ生物化学者を名乗る大学教授が現われた。パイロットへの夢をもう一度生かさないかという。教授は夢をあきらめた青年を説得し、(生物化学的な実験で)人体改造をしてあげようというのだった。
手当は2万円。実験台の上で寝ていればいいという。しかし後で聞くと実験によって命を失った者が相当数いた。
実験室で10日間眠らされたあと、目を開くと教授が恐れおののいている。理由はあとでわかった。僕は気体になることができ、肉体を再生することもできる人間離れした生き物に変わったのだ。つまり、教授が予期すらしなかった「ガス人間」の第1号になったというわけだ・・・。
このガス人間、強力な武器を身につけることになりました。身の危険が迫り、怒りで感情を高揚させると、ガスで相手の首に取りついて、窒息死させてしまうのです。銀行でも警視庁でも、この方法によって犠牲者を出しました。ガス人間を生んでしまった当の授受もこの方法で扼殺されました。
ガス人間第1号の結末
春日流家元藤千代が舞を披露する発表会の日が近づいています。ガス人間の登場とその自白で無罪放免となった藤千代は、発表会の演目「情鬼」に取り組んでいます。女の情念が鬼に化身する舞では娘のしとやかさと鬼の面の形相とで対比が際立ちます。
発表会の成功を誰よりも望むのが、いまではガス人間となった青年、水野です。水野は藤千代を愛しています。風前の灯火となった春日流の再興を願い、大金で援助しようと考えたのも、藤千代への強い思いからでした。藤千代もまた、心底から味方してくれる水野を慕いはじめています。
水野の行動とは裏腹に、世間ではガス人間の存在がひとり歩きしています。金品の強奪や悪事をガス人間に着せてシラを切る輩まで現れ、社会不安を呼んでいます。このままガス人間を生かしておくと、より混乱を招いてしまう。警察の判断はガス人間抹殺です。決行は藤千代の発表会当日、藤千代が借り切ったホールに無臭無毒のガスを充満させて・・・、と決まりました。
発表会の前売り券は全席警察が買い占め、会場には招待客の水野ひとりが座っています。舞はすでにはじまっており、藤千代は可憐な娘姿から鬼に変身し大詰めを迎えています。踊り終えた藤千代が感極まって水野に抱きつくと、水野も藤千代をきつく抱きしめます。しかし藤千代の手にはライターが。
ライターの着火とともに会場がけたたましく吹き飛びます。黒煙と炎が上がるなか、警察は予期せぬ事態に手をこまねいています。すると黒煙のなかからロビーへ人影が現われます。ガス人間です。無理心中を図った藤千代はそこにはいません。彼はひとり、人並み以上の生命力で這い出てきました。しかし力尽きたのか、安堵したかのように息を引きとります。
(完)
以上、映画「ガス人間第1号」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する