最前線物語 ザ・リコンストラクションの紹介:1980年アメリカ映画。「これは事実である死に基づく架空の生である」という一文が冒頭に付け加えられた『最前線物語ザ・リコンストラクション』は、映画評論家のリチャード・シッケルを中心に集まったチームが、ワーナーブラザースの倉庫に眠っていた『最前線物語』のフィルムを、公開時サミュエル・フラーの同意なく削除された箇所をできるかぎり復元し、既に亡くなっていたフラーの考えていた作品の完成形を想像して作り、2004年に公開された。肩章にちなみ「ザ・ビッグ・レッド・ワン」という異名をもつ、伝統あるアメリカ陸軍第1歩兵師団に属する古参軍曹と彼の部下の4人の若者たちの北アフリカ上陸からドイツ降伏までの戦いを物語るが、第1歩兵師団の一兵士として第2次世界大戦を戦ったフラー自身の体験が作品に反映されている(映画の中でナレーションをするザブがフラーその人を最も彷彿させる)。復元されたシーンには映画カメラマンを演じるフラーの姿も見られる。
監督:サミュエル・フラー 出演者:リー・マーヴィン(ポッサム軍曹)、マーク・ハミル(グリフ)、ロバート・キャラディン(ザブ)、ボビー・ディ・シッコ(ヴィンチ)、ケリー・ウォード(ジョンソン)、ジークフリート・ラウフ(シュローダー)そのほか
映画「最前線物語 ザ・リコンストラクション」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「最前線物語 ザ・リコンストラクション」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
最前線物語 ザ・リコンストラクションの予告編 動画
映画「最前線物語 ザ・リコンストラクション」解説
この解説記事には映画「最前線物語 ザ・リコンストラクション」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
最前線物語 ザ・リコンストラクションのネタバレあらすじ:四半世紀を経て
1918年11月、フランス。磔のイエス像を彫った巨大な木製の十字架の立つ荒野で、斥候に立ったアメリカ陸軍第1歩兵師団の兵士が、両手を挙げてドイツ語で「戦争は終わった」と話す一人のドイツ兵を殺す。塹壕に戻った兵士を待っているのは上官が一人だけ。皆は4時間前の終戦を祝って外に出てしまった。兵士は無用の殺人をしてしまったことを知る。
1942年、その兵士は今も第1歩兵師団の軍曹である。第16連隊I中隊第1小隊第1分隊を率いて北アフリカに上陸しようとしていた。
彼の、新兵ばかりの狙撃兵分隊には、射撃の腕は抜群でいつも漫画を描いているグリフ、農民出身のジョンソン、イタリア系でサクソフォン奏者の都会っ子ヴィンチ、そしてこの物語の語り手で、未公刊の小説の原稿を母親に託し、将来戦争物の小説を書くために兵士になった、葉巻好きのザブらがいた。
最前線物語 ザ・リコンストラクションのネタバレあらすじ:殺人ではない、ただ殺すだけだ
北アフリカ上陸直後、フランス・ヴィシー政権の軍隊と戦闘を交えるが、フランス軍兵士にはアメリカ人と戦う気はなく戦闘は早く終わる。初めての実戦にショックを受けて「殺人はできない」と言うグリフに、軍曹は「自分たちは殺人(murder)はしない、ただ殺す(kill)だけだ」と諭さなければならない。夜はドイツ人が放送するラジオ番組で女性の声がアメリカ軍兵士の戦意喪失を誘っていた。
フランス騎馬隊のアラブ人兵士たちに助けられた円形競技場での戦闘を経て、分隊はカセリン峠を守備するが、軍首脳部の予想に反してドイツのロンメル将軍の戦車隊が峠を通過する。シュローダーという、第1分隊で軍曹が言うのと同様に敵を殺すのは殺人ではないと言う古参兵も歩兵として戦車につきしたがっていた。第1分隊の兵士たちは穴を掘って隠れたが、穴は次々とドイツ軍の戦車につぶされていき、それを見て他の兵士たちは穴から逃げ出す。
軍曹は重傷を負って捕虜になり、チュニスにあるドイツ軍の病院に収容される。シュローダーも同じ場所に入院していた。チュニスの解放後、軍曹はアラブ人の身なりをして、グリフ、ザブ、ヴィンチ、ジョンソンのたった4人だけなった第一分隊に帰ってくる。
最前線物語 ザ・リコンストラクションのネタバレあらすじ:シチリアからノルマンディーへ
1943年7月、戦いの場はシチリア島に移る。上陸直後第1分隊は手榴弾をリレーして敵施設を破壊する。補充兵が名前も覚えられないうちに死んでいくのに、グリフ、ザブ、ヴィンチ、ジョンソンは生きて戦い続け、いつしか軍曹の「四騎士」と呼ばれるようになった。
敵の大砲を捜す任務を与えられた第1分隊は廃墟で母親の遺体を運ぶ少年に出会う。ヴィンチが通訳をし、母親の亡骸を墓地に運び棺をくれるという条件と引き換えに少年は分隊にドイツ軍砲撃陣地の場所を教える。ドイツ軍は丘の上の民家の中に自走砲を隠し、家の前で女性たちに農作業をさせ、陣地を偽装していた。
分隊はドイツ兵を一挙に射殺して陣地を制圧する。解放されたおばさんたちからご馳走の歓迎を受ける。少年には上質な棺を用意されることになった。女の子が軍曹の鉄兜を花で飾り、お別れのキスをするが、銃声で平穏は破られる。シュローダーが発砲したのだった。
7カ月のイングランドでの予行演習を経て第1分隊は、1944年6月、ノルマンディー上陸作戦に参加するが、海からオマハ・ビーチに上がったところで連隊は立ち往生する。第1分隊は鉄条網を突破するためにパイプ爆弾を使うしかなくなる。
一人ずつ順番に兵士が敵の銃弾にさらされながら前に進んでパイプをつないで延ばしては戦死していく。そしてグリフの番が来て、ついに彼は生きて鉄条網を爆破する。ザブは砂浜の死体をかき分けて連隊長に登り口の開通を報告する。
最前線物語 ザ・リコンストラクションのネタバレあらすじ:戦車の中の出産
分隊はフランスの町で一息つく。ザブは出版された自著『ダーク・デッドライン』を補充兵カイザーが読んでいるのを見る。でもカイザーは目の前にいる男が自分の読んでいる本の著者であるとは信じない。一方、ドイツ軍のシュローダーはパリで夫が戦死したフランス人からマッサージを受ける。体にはシチリアで軍曹から撃たれてできた傷があった。
第1分隊は偵察隊として巨大な十字架のある、軍曹の第一次大戦の苦い思い出のある荒野に来た。そこには今は第1歩兵師団の記念碑も立っていた。ドイツ軍のシュローターは部下に死体に混ざって死んだふりをして米兵を待ち伏せすることを指示する。一見すると敵は全滅しているように思われたが軍曹はだまされず、ドイツ兵は十字架の上で指示を出していたシュローターを除き全滅する。
ところがその時、分隊の前にサイドカーに乗った夫婦がやってくる。夫はすぐ死んでしまうが妻は出産寸前だった。軍曹は負傷兵の手当てに衛生兵並みの手際のよさを見せるジョンソンに赤ん坊を取り上げることを命じ、戦車の中に妊婦を運び込む。グリフが妊婦の体を押さえ、軍曹がいきむように彼女に言い、細菌対策として指にコンドームをつけたジョンソンが無事に赤ん坊を取り出した。暗くなるころシュローターは戦場から脱出する。
最前線物語 ザ・リコンストラクションのネタバレあらすじ:ベルギーからドイツへ
1944年9月、第1分隊はアメリカ軍本隊に先だってベルギー領内に入る。敵が接収している、今は精神科の療養所として使われている修道院を攻め落とさなければならない。患者がいるので爆撃はできなかった。レジスタンスの女性ワルーンが精神病者としてしのびこんでいて、軍曹が庭に入るのを見ると彼女は次々とドイツ兵ののどを掻き切って軍曹たちを施設内へ手引きする。
銃撃戦になるが患者たちは気にせず食事を続ける。一人だけ銃をとって乱射する患者がいたが修道院は制圧される。その夜、第1分隊は修道院に一泊するが、ザブにけしかけられたグリフはワルーンにセックスの相手をしてもらう。
1944年10月、ドイツ。映画カメラマンが米軍兵士と占領地のドイツ人の子供たちを撮影しているころ、第一師団はヒュルトゲンの森にいる。母からの手紙を読んだザブは自分の小説が映画会社に原作として売れたことを知る。しかし小説読者のカイザーは仲間に名前を覚えられないまま霧のたちこめる森の中で戦死する。
第1分隊はベルギーの小さなホテルに滞在。兵士たちに終戦の期待が高まる。ザブは小説が映画の原作になって得た金を手にし、ホテルの女主人に女の子を集めさせて分隊のための盛大なパーティを開く。しかし、パーティがお開きになってすぐ出動命令が出る。ドイツ軍が反攻してベルギーに入ったのだ。
明日は第一分隊が再びドイツに入るという日、軍曹たちの食事中、ホテルの女主人が拳銃を手にもって一人の兵士に突然ドイツ語で話しかけ、ドイツ語で答えた兵士は倒される。女主人は食事のしかたを見て、スパイとして紛れ込んだドイツ兵に気づいたのだ。
第1分隊は、ヒトラーを支持して集まって彼らの行く手を遮る民間人たちを銃で脅かして退散させたりしながら、敗走するドイツ軍を追って移動を続ける。ルーズベルト大統領が亡くなるが、戦争の終わり――それまで合法的な殺しだったものが殺人になってしまう時――が近づいているのを軍曹は感じる。
ある日、城跡に隠れる敵スナイパーによって味方が撃ち殺されるが、それを捕まえてみるとヒトラー・ユーゲントの男の子だった。仲間を殺した奴は殺せというザブたちだが、軍曹にお前がやるのかと言われると誰も子供を殺すことができない。軍曹は子供のお尻を、子供がお父さんと言って泣くまで叩き続ける。
一方、シュローダーはアメリカ軍が司令部を置くと予想される城の女主人である伯爵夫人に、アメリカ軍を城に入れてから爆弾を爆発させる指示をするが、伯爵夫人は彼を誘惑し、彼女が彼を撃って軽傷を負わせるからアメリカ軍の捕虜になってはどうかと口説く。彼女はヒトラーを田舎者と思って嫌いながらも、ヒトラー暗殺計画に加担していた夫を撃ち殺したと告白する。彼女の関心事は城の維持だけだった。ヒトラー信奉者のシュローダーは伯爵夫人を撃つ。
最前線物語 ザ・リコンストラクションの結末:強制収容所の解放、そして戦争終結
1945年5月、第1分隊はチェコスロバキアで戦う。強制収容所で死を待つばかりの人々、焼却炉の人骨を見てショックを受けたグリフは焼却炉に隠れていたドイツ兵を見つけると、撃ち返せない敵兵をいつまでも撃ち続ける。一方、軍曹は衰弱した少年の世話をするが、少年は軍曹の背中で息を引き取った。
ドイツは降伏した。その告知を読んだシュローダーは夜の森に行き、両手を挙げて、強制収容所で死んだ少年に聴かせたオルゴールの音に耳を傾けている軍曹に戦争は終わったと言いながら投降しようとするが、終戦を知らない軍曹のナイフに刺される。
そのとき軍曹を捜しに来た四騎士から軍曹は戦争が終わったことを告げられる。軍曹はまた同じ失敗をしたかと思われたが、シュローダーがまだ生きていることにグリフが気付き、皆で彼を運んで命を救う。
この物語の語り手としてザブは彼の物語を生き残った者たちに捧げる。戦争では生き残ることが唯一の栄光だから。
以上、映画「最前線物語 ザ・リコンストラクション」のあらすじと結末でした。
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