たそがれ酒場の紹介:1955年日本映画。クラシック、軍歌、民謡、流行歌といった様々な歌と共につづられる、ある大衆酒場の夕方の開店前から閉店後までの一日間。従業員や客たちの悲喜こもごもの人生が浮かび上がる。内田吐夢監督の戦後復帰2作目だが、一つのセットでほとんど撮影された野心的な作品。不遇に終わった脚本家灘千造のデビュー作でもある。江藤を演じた小野比呂志は成城大学(当時)の音楽教授、丸山を演じた宮原卓也はバリトン歌手だった。2003年製作の『いつかA列車(トレイン)に乗って』は舞台を現代のジャズバーに移したリメイク。
監督:内田吐夢 出演:津島恵子(エミー・ローザ)、野添ひとみ(ユキ)、小杉勇(梅田)、宇津井健(鱒見)、高田稔(中小路)、多々良純(汲島)、江川宇礼雄(山口)、ほか
映画「たそがれ酒場」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「たそがれ酒場」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「たそがれ酒場」解説
この解説記事には映画「たそがれ酒場」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
たそがれ酒場のネタバレあらすじ:起
椅子がまだテーブルの上に乗っかっている開店前の酒場に、常連客の「先生」こと梅田茂一郎が入ってきたときは、店のピアノ弾きの江藤に厳しく指導されながら、専属歌手の丸山健一(ケンちゃん)が声楽を学んでいるところだった。
やがてユキたち女性従業員が入ってきて、開店準備を始める。準備をしながら、今日はユキがケンちゃんのアコーディオンに合わせて歌の練習をする。
梅田はパチンコで生計を立てていて、景品をこの店のマネージャーに金と交換してもらうが、今日はそのとき、知られざる江藤の前歴をマネージャーに話す。彼は留学から戻って以来日本を代表する歌劇団を率いていた。
しかし弟子の中小路が歌劇の革新を目指して新歌劇団を作り、ついでに師の妻も奪ってしまった。夫は妻を刺して懲役刑になり、今は江藤釿也と名を変え、酒場で働いているのだった。
開店時間になる。常連の汲島鉄夫がやってきて、テーブルというテーブル、客という客にたかってまわる。やはり常連客の岐部は、渋い顔をして入って来た客が、北支で上官だった元大佐、鬼塚だと気づく。
酒を酌み交わして二人は戦後の社会に八つ当たりし、店がかけるおとなしい音楽にケチをつけ、傍のテーブルを占めた大学教員と学生が、学生が教員にプレゼントしたレコードの歌に合わせて歌うのにも文句をつける。だが岐部が外のデモに文句を言いに行っているうちに、鬼塚は帰っていった。
たそがれ酒場のネタバレあらすじ:承
愚連隊の森本が手下と酒場に来て、ユキをテーブルに呼ぶ。彼は今日、「ユキをどちらがとるか、鱒見とけりをつけに来た」と言う。ユキの恋人である鱒見はなかなか現れなかったが、店に来るとポケットからとりだしたナイフをつきたてて、ユキから手を引くことを森本に誓わせ、友人の金を森本から取り返す。
帰り際に鱒見は、「いっしょに大阪へ逃げよう、10時半に東京駅で待つ」というユキへの伝言を入り口近くのカウンターにいる梅田に託す。だがその時、ユキを妹が訪れ、「日雇い作業員をしている母親が怪我をした」と知らせた。
お金に困ったユキはマネージャーに3000円の給料の前借りを頼むが、マネージャーは店のマスターから前借を許さないように命じられていると言う。梅田が「店の閉店までにパチンコで私が3000円儲けてくるから」と言って、ユキの前借りが認められる。後から伝言をきいたユキは大いに迷うが、「大阪からお金を返します」と梅田に言ってこっそり店を出て行った。
たそがれ酒場のネタバレあらすじ:転
この店の最大の売り物であるストリップショーのダンサー、エミー・ローザがやってきて楽屋で休む。彼女はバレエの素養のある才能あるダンサーだが、両親を養うために今の仕事をしている。丸山は仕事で彼女の裸に照明を当てなければならないのが辛いと訴える。
今や歌劇界の重鎮となった新日本歌劇団の中小路竜介が店に入って来たのに梅田は気づく。梅田はあえて歌劇カルメンの「闘牛士の歌」をリクエストする。大衆酒場で「闘牛士の歌」?と思った中小路の一行だが、丸山の実力に目を見張る。梅田と汲島がダンスをして盛り上げる。
後で中小路はテーブルに丸山を呼び、「明日の朝、8時に事務所に来てほしい、いっしょに北海道に公演旅行に行こう」と誘う。中小路と師の過去のいきさつを知らない丸山がこの話を江藤にするが、江藤は弟子の新日本歌劇団加入を許さない。エミーはケンちゃんが世に出るチャンスを奪うなんて許せないと非難する。
たそがれ酒場の結末
初めてこの酒場に来た山口は、戦時中南方で共に働いた梅田がいるので驚く。山口はその時も今も毎朝新聞記者だが、梅田は当時「梅田画伯」と呼ばれる有名画家だった。山口は梅田が絵筆を折ったのは、妻子を戦災で失ったからだと思っていたが、梅田の戦争画に焚きつけられて戦い命を落とした人々がいたことが、絵をやめた真の理由であることを知る。
酒場随一の出し物エミー・ローザの踊りが始まる。照明を落とした店内でケンちゃんと汲島のライトに照らされて、黒い仮面・白いドレスのエミーがテーブルをめぐりながら踊るが、一人の男がナイフを取り出してエミーに切りつけ、丸山たちに取り押さえられる。
エミーがストリップをするようになったのは元はと言えばその男のせいだった。マネージャーとエミーが参考人として警察に行った後、梅田は山口に「3000円で絵を買ってくれ」ともちかける。山口が承知すると、梅田はポスターの裏に山口の似顔絵を描いて彼に渡す。
マネージャーが警察から帰ってきて閉店の時間であることを客に告げる。へべれけの汲島が店から追い出される。売り上げを集計する時にユキがいないことに仲間が気づく。
マネージャーも帰り、店には3人だけが残る。江藤は丸山が中小路の元に去るのをまだ許していなかった。梅田は「江藤の全てを奪った中小路が憎いのはわかるが、ケンちゃんの将来を考えてくれ」と言って江藤を説得する。
丸山も江藤と中小路の過去を知ることとなったが、江藤はとうとう弟子が自分の元を去ることを許す。しばらく先生に歌を聴かせる機会がないからと、江藤は梅田のためにピアノを弾いて丸山が歌い始める。
その時、大阪に行ったはずのユキが入ってくる。鱒見には会ったが、結局母や妹を捨てることができなかった。梅田はユキを送って帰ることにして店を出ていくのだった。
以上、映画「たそがれ酒場」のあらすじと結末でした。
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