用心棒の紹介:1961年日本映画。黒澤明監督がダシール・ハメットの長篇「赤い収穫」「ガラスの鍵」を翻案した時代劇。イタリアで盗作されて「荒野の用心棒」となり全世界でマカロニ・ウエスタン・ブームを巻き起こすことになる。やくざと元締めが対立する宿場町に一人の浪人者がやってくる。入った居酒屋の主人に早くこの町を出ていった方がいいと言われるが、男は用心棒として自分を売り込み始める。やがてその男をめぐって2つの勢力が対立を深めていく……。
監督:黒澤明 出演:三船敏郎(桑畑三十郎)、仲代達矢(新田の卯之助)、司葉子(小平の女房ぬい)、山田五十鈴(清兵衛の女房おりん)、加東大介(新田の亥之吉)、ほか
映画「用心棒 (1961年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「用心棒 (1961年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「用心棒 (1961年)」解説
この解説記事には映画「用心棒 (1961年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
用心棒のネタバレあらすじ:起
風の吹きすさぶ野道を一人の浪人がやってきます。肩を揺らすのが癖のその浪人は分かれ道で落ちていた棒きれを放り投げ、それが差す方向へと歩き続けます。当て所がないのは明らかでした。町へ行き着く途中、宿場で争い事が起こったことを耳に挟みますが、自分もその加担をするヤクザものだと間違われてしまいます。その宿場へ着くと、早速口利きをしようと御用聞きがやってきますが、それを無視して浪人は飯屋に入ります。
用心棒のネタバレあらすじ:承
その飯屋の親父から、絹問屋とその仕事を奪おうとする造り酒屋が対立し、その手下のゴロツキたちが抗争を繰り広げている事情を聞くと、浪人は初めて嬉しそうな顔を見せます。対立を煽って両方を自滅させようというのです。まもなく、造り酒屋側に向かった浪人は、わざとゴロツキたちを挑発して忽ち3人を切り捨てます。そのことで絹問屋側の用心棒となった浪人はまんまと両方を決闘させることに成功しますが、役人が来ることによってその計画は頓挫。
用心棒のネタバレあらすじ:転
長い休戦期間を過ごすうち、造り酒屋側の親分の弟、卯之助が帰ってきて、とりあえずの手打ちへと事を運びます。あてが外れた浪人はまた策を練らなければなりません。やがて、ある農夫の妻が無理やり造り酒屋の主人の愛人にされていることが分かり、本当は心優しい浪人はそれを見過ごせず、策略を使って妻を助けますが、それが卯之助たちにバレてしまいます。
用心棒のネタバレあらすじ:結末
拷問を受ける浪人。しかし隙を見て逃げ出し、町の外れのお堂に隠れます。世話をしてくれた飯屋の親父が卯之助たちに捕まったことを知ると、浪人は再び町へ。卯之助たちと対決し、皆殺しにします。造り酒屋と絹問屋も同士討ちで死に、ようやく町は静かに。浪人は「あばよ」と一言残して去っていきます。
当時としては、これぞ娯楽大作、これぞ映画の楽しさ、これぞ映画の醍醐味、という感じではなかったかと想像する。
最初、犬が人の手首をくわえて歩いてくる場面や、主人公が宿場町に入り、あっという間に3人切り捨て、1人は腕がぶっ飛ぶ場面など、黒澤作品以降のもので育った私たちはそれほどショックではないが、当時初めてこの映画を観た観客は、度肝を抜かれたに違いない。
着物に袖を通さずに歩き、いざとなると豹のような見事な動きとアクションを披露する三船敏郎は、実に素晴らしいと思う。
映像も、ワンカットワンカットが考え抜かれていて、どこを切り取っても完璧な『写真』になっている。
そして何より物語が面白い。リメイクされたマカロニウエスタンを先に見ていた私などは極端には感動しなかったが、当時の観客はこの物語に夢中になったことだろう。
私は様々なテレビドラマに触れ、様々なアニメを見、そして色々新しい映画を観て、ある程度成長してから黒澤作品を観た。
だから残念なことに、そのずっと以前から存在した黒澤作品を本当に堪能することが難しい。
黒澤映画を外国からのもらいものだ、などと評する人もいるが、しかし黒澤作品が初めてやってみせたことというのは、実は数知れなくあると私は思う。皆が後から追随しただけなのだ。
現代の私たちは、この点を忘れてはならないと思う。
そしてこれだけ多くの傑作、しかも完成度の高い傑作を世に送り出した監督は、黒澤明をおいて他にいないのではないか。
今さらどんな賞を受賞したかとか、そんな記述は黒澤作品には意味がないだろう。
この「用心棒」も、日本が世界に誇る、黒澤明という巨人の、傑作のひとつである。