悪名の紹介:1961年日本映画。今東光の長編小説を映画化。勝新太郎にとって座頭市に次ぐ人気シリーズとなった。脚色は溝口健二の作品で知られる依田義賢。やはり溝口との名コンビを謳われた名カメラマンの宮川一夫が撮影を担当している。
監督:田中徳三 出演:勝新太郎(朝吉)、田宮二郎(モートルの貞)、水谷良重(琴糸)、山茶花究(吉岡親分)、中村玉緒(お絹)、中田康子(お千代)、藤原礼子(お照)、浪花千栄子(麻生イト)、ほか
映画「悪名」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「悪名」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
悪名の予告編 動画
映画「悪名」解説
この解説記事には映画「悪名」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
悪名のネタバレあらすじ:起
昭和初期の大阪・河内地方。農村地帯ではありますが、楠公時代からの武張った気風が残っており、血をたぎらせた若い男たちにとって軍鶏博打や喧嘩が大きな娯楽でした。
そんな若い衆の1人が八尾に住む朝吉。軍鶏を盗んだことでお千代と知り合い、やがて男女の関係となります。ところが彼女はれっきとした人妻。さらに「あんたの子供を妊娠した」と言われ、つい誘われるままに有馬温泉に駆け落ちしてしまいます。
ところが彼女はとっくに赤子を流産していました。もともと男好きだったお千代は有馬で芸者となり、浮気のし放題です。
悪名のネタバレあらすじ:承
朝吉は騙されたと知ってクサります。もうお千代とは別れるつもりで駅に行ったところ、偶然河内の悪友たちに遭遇。遊びたくなって一緒に松島の女郎屋にしけこみますが、そこで出会ったのが地元の吉岡組のヤクザ・モートルの貞でした。
いざこざを起こした一行は翌朝、女郎屋の前で吉岡組の待ち伏せにあうものの、朝吉は貞を叩き伏せます。これで貞は怒るどころか朝吉に心服し、以後弟分となります。さらに吉岡親分もその強さと義侠心を気に入り、客分としてしばらく組で面倒を見ます。
悪名のネタバレあらすじ:転
朝吉は吉岡組に居着くかたわら、松島で最初に相手になった琴糸のもとへも通い詰めます。弱いものには優しい朝吉は結果的に琴糸を足抜きさせた形となり、吉岡親分と揉め、それをきっかけに貞も組を飛び出してしまいます。
2人は琴糸の関係で知り合ったお絹とお照の2人としばらく旅館に逗留し、朝吉の方は軽い気持ちでお絹と結婚の約束を交わします。
その間に女郎屋を仕切っている松島組が朝吉を探し続け、吉岡親分も彼を客分にしていたというので巻き添えを食います。
悪名の結末
さらに琴糸も松島組に捕まってしまい、それを知った朝吉は有馬へ戻ると、お千代の手引で軍資金を調達。貞と一緒に琴糸が売られた因島へ出かけます。月に一度の外出日である鯖大師の縁日に琴糸を連れ出した朝吉と貞は、借りた漁船で海へ出ますが、潮の流れのせいで脱出はできません。
旅館に一旦隠れると、早速遊郭を仕切る一家がやってきます。朝吉はお千代から拝借してきたピストルで一同を脅しつけ、琴糸を一旦大阪に連れて帰ります。その時は対立する一家の女組長・麻生イトが手助けをしてくれました。
1週間で因島へ戻す約束でしたが、朝吉はそのまま琴糸を東京へ送り出し、自分ひとりが島へ帰還。激怒したイトは散々ステッキで朝吉を打ち据えるものの、彼の根性に免じて命は取らず、そのまま放免してやるのです。
以上、映画「悪名」のあらすじと結末でした。
この映画「悪名」の原作は、今東光の人気小説で、河内出身の八尾の朝吉と、キザなチンピラのモートルの貞が、弱い者を苦しめるヤクザ相手に、大暴れをするという、シリーズ1作目の作品だ。
勝新太郎が、それまでの白塗りの二枚目をかなぐり捨てて、喧嘩と博打には滅法強く、女に惚れっぽい、破天荒な暴れ者を熱演していて、勝新太郎にとって初めてのヒットシリーズになっている。
そして、1961年のこの「悪名」から、1974年の「悪名 縄張荒らし」まで、全16作が映画化されていて、この第1作は、朝吉が村を飛び出してから、モートルの貞と知り合い、大阪で売り出すまでを描いている。
人妻と駆け落ちしたり、馴染の女郎の琴糸(水谷良江)を足抜けさせようとして失敗したり、お絹(中村珠緒)と結婚したり、エピソードも盛りだくさんながら、シリーズ中でも、丁寧な作りになっていると思う。
特に、朝吉の窮地を救ってくれた、女親分(ミヤコ蝶々)は、貫禄充分で印象的でしたね。