アメリカン・グラフィティの紹介:1973年アメリカ映画。『スター・ウォーズ』シリーズでブレイクする前のジョージ・ルーカス監督がフランシス・フォード・コッポラの製作のもと製作した青春群像劇です。ルーカスが青春時代を過ごした、ベトナム戦争の影が忍び寄る前の1960年代前半のアメリカを舞台に、人生の旅立ちを翌日に控えた高校生たちの忘れえぬ甘い想い出を描きます。1979年には後日談となる続編『アメリカン・グラフィティ2』が公開されています。
監督:ジョージ・ルーカス 出演者:リチャード・ドレイファス(カート・ヘンダーソン)、ロニー・“ロン”・ハワード(スティーヴ・ボレンダー)、ポール・ル・マット(ジョン・ミルナー)、チャールズ・マーティン・スミス(テリー・フィールズ)、キャンディ・クラーク(デビー・ダナム)、シンディ・ウィリアムズ(ローリー・ヘンダーソン)、ウルフマン・ジャック(ウルフマン・ジャック)、ハリソン・フォード(ボブ・ファルファ)、ボー・ホプキンス(ジョー・ヤング)、キャスリーン・クインラン(ペグ)、スザンヌ・ソマーズ(サンダーバードのブロンド美女)、マケンジー・フィリップス(キャロル・モリソン)、ジャナ・ベラン(ブッダ)ほか
映画「アメリカン・グラフィティ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アメリカン・グラフィティ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アメリカン・グラフィティの予告編 動画
映画「アメリカン・グラフィティ」解説
この解説記事には映画「アメリカン・グラフィティ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アメリカン・グラフィティのネタバレあらすじ:起
1962年9月、アメリカ・カリフォルニア州の田舎町モデストにあるドライブイン「メルズ・ドライブイン」。この夜、仲良しの4人組のカート・ヘンダーソン(リチャード・ドレイファス)、スティーヴ・ボレンダー(ロニー・“ロン”・ハワード)、テリー・フィールズ(チャールズ・マーティン・スミス)、ジョン・ミルナー(ポール・ル・マット)は、それぞれの愛車でこのドライブインに乗り付けてきました。
高校を卒業したばかりのカートとスティーヴは他所の土地の大学に進学することになっており、翌朝にも町を離れる予定なのですが、ここにきてカートは大学入学を延期してまでも地元に留まろうかと迷い始め、スティーヴはそれでもカートを一緒に連れていこうと考えていました。車のラジオからは人気ラジオDJのウルフマン・ジャック(本人)の番組が流れていました。
スティーヴはカートの妹ローリー(シンディ・ウィリアムズ)と付き合っているのですが、スティーヴは現れたローリーに離ればなれになっている間は互いに恋愛は自由にしようと持ちかけ、ローリーは不機嫌になりました。スティーヴはウェイトレスのブッダ(ジャナ・ベラン)を口説いていたテリーに自分の車シボレー・インパラを預かってほしいと頼み、喜んだテリーは早速町へ繰り出していきました。
アメリカン・グラフィティのネタバレあらすじ:承
カート、スティーヴ、ローリーは母校のダンスパーティーに行くことにしました。途中でカートは1956年式のサンダーバードに乗ったブロンド美女(スザンヌ・ソマーズ)と出くわして一目惚れし、パーティー参加に乗り気ではなかったカートは彼女を捜すことにしました。
その頃、ジョンは夜道で女の子をナンパしていましたが、助手席に乗せたキャロル・モリソン(マケンジー・フィリップス)という子が何と13歳だと知るやジョンは何とか彼女を車から降ろそうとしました。しかし、強気なキャロルは中々車から降りようとはしませんでした。
パーティー会場に着いたスティーヴとローリーは、周りに合わせてダンスを踊り始めました。ローリーはまだスティーヴを許してはいませんでしたが、これまでの思い出を語り合ううちに泣き出してしまいます。
得意になってインパラを走らせていたテリーの前にボブ・ファルファ(ハリソン・フォード)が現れ、ジョンに自分の挑戦を受けるよう伝言を伝えてきました。ボブは町一番の走り屋であるジョンを何としても打ち負かそうと付け狙っていたのです。その後テリーは、たまたま通りを歩いていたデビー・ダナム(キャンディ・クラーク)という女性をナンパすることに成功しました。テリーはデビーのために何とか酒を手に入れ、彼女と酒を飲みながら語り合っていましたが、外に出た間に車を盗まれてしまいました。
アメリカン・グラフィティのネタバレあらすじ:転
カートはかつての恋人と再会し、その女友達の車に同乗したのですが、ジョー・ヤング(ボー・ホプキンス)率いる不良グループ「ファラオ団」に絡まれて同行させられることとなりました。カートは「ファラオ団」の盗みに加担させられそうになり、翌日に再会を約束させられて何とか解放されました。その直後にカートはあのサンダーバードを見つけましたが、結局逃がしてしまいます。
その頃、スティーヴはローリーと寄りを戻そうと試みましたが逆に彼女を怒らせてしまい、ローリーはスティーヴを置いて走り去ってしまいます。その後、ドライブインに向かったスティーヴはブッダから誘われるものの断りました。しかし、偶然にもスティーヴとブッダのやりとりを目撃してしまったローリーは勘違いしてしまい、腹いせにとたまたま通りがかったボブの車に乗ってしまいます。その後、スティーヴはカートと会い、一転して町に残る決意をしたことを語りました。
その頃、ジョンはキャロルと何だかんだ楽しい時間を過ごしていましたが、夜明けも近づいてきたので、彼女から住所を聞き出して送り届けました。
一方、テリーは偶然にも盗まれた車を発見、取り戻そうとしますが車を盗んだ者たちに絡まれてしまいます。テリーのピンチを救ったのは通りがかったジョンでした。スティーブはテリーから車を返してもらうとローリーを探しに走り、テリーはデビーに自分は見栄を張っていたと釈明するも以外にも彼女から気に入られて再会を約束しました。
その頃、カートは町外れのラジオ局に向かい、ウルフマンに会ってサンダーバードの女へのメッセージを託しました。そしてカートはウルフマンの助言を受け、当初の予定通りに大学に入る決心をしました。
アメリカン・グラフィティの結末
ボブからの挑戦を受けたジョンは郊外のパラダイス・ロードで決着をつけることになりました。レースの話を聞いたスティーヴは現場に向かい、カートはドライブインの駐車場でサンダーバードの女がウルフマンのラジオを聞いて電話をしてくれるのを待っていました。
空も明るくなり始め、ジョンとボブはテリーの合図でスタートを切りました。しかし、ローリーを乗せたままのボブの車は勢いあまって転倒してしまい、ボブとローリーが脱出した直後に車は爆破炎上してしまいます。レースに負け、車も失ったボブがうなだれているなか、スティーヴはローリーの元に駆け寄りました。ローリーはスティーヴに行かないでと抱きつき、彼女の想いを受け止めたスティーヴは町に残ることを約束しました。その頃、カートはウルフマンのメッセージを聞いたサンダーバードの女から電話をもらっていましたが、出発の時間が迫っていたため結局会うことはできませんでした。
スティーヴとローリー、ジョン、テリーは空港へカートを見送りに行き、彼らと別れを告げたカートは飛行機に乗り込みました。離陸した飛行機の窓の下には、飛行機を追うように走るサンダーバードが映っていました。
その後、ジョンは1964年12月に飲酒運転の車との事故に巻き込まれて命を落とし、ベトナム戦争に出征したテリーは1965年12月の戦闘中に消息を絶ちました。スティーヴはモデストに残って保険外交員となり、カートは作家となってカナダで暮らしています。
以上、映画「アメリカン・グラフィティ」のあらすじと結末でした。
「アメリカン・グラフィティ」感想・レビュー
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時代は1962年、アメリカが最も輝いて美しかった頃のカリフォルニアの小さな町の一夜の若者たちの姿を、41のヒット曲にのせて描いた映画が、ジョージ・ルーカス監督の 「アメリカン・グラフィティ」ですね。
ジョージ・ルーカス監督が29歳の時に撮ったこの映画は、カリフォルニア州モデストで育ち、車と映画が大好きだったというルーカス自身の失われた10代の青春時代へのノスタルジーであり賛歌なのだと思います。
カリフォルニア山間部の小さな町を舞台に、夕陽の沈む頃から朝日の昇るまでの、ある一夜の出来事をこの映画は描いています。
この日は夏の終わりであると同時に、明日、東部の大学に出発しようとしているカート(リチャード・ドレイファス)とスチーブ(ロン・ハワード)にとっては、”故郷で過ごす最後の日”という特別な意味を持っていたのです。
時代は1962年。若き大統領ジョン・F・ケネディのもとで、アメリカが最も輝いて美しかった頃です。
ヴェトナム戦争はまだ泥沼化しておらず、少年たちは長髪ではなくポマードをたっぷり使った”グリース”で、女の子たちは”ポニー・テイル”の時代。まだ、フリーセックスもドラッグもない時代。
彼らの若さは車と、そしてアメリカン・ポップスの音楽で表現していた時代。
この時代、彼らの世界はあくまでシンプルで、音楽はあくまでもスイートなのです。映画のリズムは、当時の伝説的なディスクジョッキー、ウルフマン・ジャックのラジオ番組とそこで使われるヒット曲で描かれていきます。
「イージー・ライダー」と並んで既成の音楽の使い方としては、やはり斬新なものがあり、「ロック・アラウンド・ザ・クロック」からビーチボーイズの「オール・サマー・ロング」まで、当時のヒット曲が実に41曲も使われているのです。
旅立つ朝、故郷の町を飛行機で去って行くカートの姿にかぶさってスパニエルズの「グッド・ナイス・スイートハート」が流れるところでは、胸にこみ上げてくるものがあり、思わず目頭が熱くなってきます。
カートが追い続け、遂に手に入らない、”白いサンダーバード”は失われつつある青春の象徴なのかも知れません。
ドラマが終わって、最後に4人の主人公のその後を言葉とスチールで示すエンディングの演出もまた素晴らしい。
あのひょうきん者のテリー(チャーリー・マーティン・スミス)が、「ヴェトナム戦争に従軍し、行方不明」と語られる時、我々観る者はこのドラマの背後に、”語られない、もうひとつの大きなドラマ”を予感するのです。
製作がフランシス・フォード・コッポラ。無名時代のハリソン・フォードが出演していたのも嬉しいし、おませな13歳を演じたマッケンジー・フィリップスが非常に印象に残りました。
「1962年の夏、あなたはどこにいましたか。」というキャッチコピーが表している様に、1962年のカリフォルニア州にあるモデストを舞台とした若者たちの「ワンナイトもの」の映画です。たった一晩かもしれませんが、青春時代を謳歌する若者にとっては今夜の出来事次第で、その後の人生が変わってしまうかもしれない!というくらい重要な一晩なのだという、誰しもが一度は経験したであろう「青春の煌めき」がぎっしりと詰まっている作品です。群像劇でありながらも、各登場人物の内面の掘り下げ方も深く、巧みな場面転換も功を奏して、一晩しか描いていないにも関わらず、全く飽きません。また、劇中には当時流行していた歌謡曲が数多く挿入されており、思わず口ずさんでしまう場面もある程です。きっと、どこか昔の自分に似ている人物を目で追いながら、過ぎてしまった青春に郷愁に駆られることでしょう。