アメリカン・スナイパー(原題: American Sniper)の紹介:2014年アメリカ作品。元アメリカ軍の伝説の狙撃手クリス・カイルの自伝『ネイビー・シールズ最強の狙撃手』をクリント・イーストウッド監督が映画化した伝記ドラマで、アメリカの戦争映画としては最大のヒットとなった作品です。イラク戦争に4度従軍したクリスの波乱の生涯を、過酷な戦場体験から発症したPTSDとの苦闘を交えて描きます。アメリカンスナイパーは2014年に全米公開され、戦争映画としては、『プライベート・ライアン』を超えた史上最高の興行収入となります。
監督:クリント・イーストウッド 脚本:ジェイソン・ホール 出演者:ブラッドリー・クーパー(クリス・カイル)、シエナ・ミラー(タヤ・カイル)、マックス・チャールズ(コルトン・カイル)、ルーク・グライムス(マーク・リー)、カイル・ガルナー(ゴート=ウィンストン)、ジェイク・マクドーマン(ライアン・“ビグルス”・ジョブ)ほか
映画「アメリカンスナイパー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アメリカンスナイパー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アメリカンスナイパーの予告編動画
映画「アメリカンスナイパー」解説
この解説記事には映画「アメリカンスナイパー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アメリカンスナイパーのネタバレあらすじ:起
テキサスの片田舎に生まれ育ったクリス・カイル(ブラッドリー・クーパー)は、厳格な父ウェイン(ベン・リード)から狩猟を教わりながら育ちました。ウェインはクリスに対し、人間には善良で無力な“羊”とそれらを食い物にする“狼”がおり、お前は羊を守る“牧羊犬”になれ、狼にはなるなと教えました。時は流れて1998年、カウボーイに憧れていたクリスは、テレビのニュースでタンザニアとケニアのアメリカ大使館爆破事件を見たことをきっかけに、愛国心と父の教えから海軍に志願、当時30歳という遅咲きの年齢ながらも厳しい訓練に耐え抜いて狙撃手としての才能を開花させ、海軍の特殊部隊ネイビー・シールズに配属されました。やがてクリスはバーで出会ったタヤ(シエナ・ミラー)という女性と交際を始め、二人は2002年に結婚しました。しかし、そんな幸せな日々も2001年9月11日に勃発したアメリカ同時多発テロ事件の余波によって急変しました。
アメリカンスナイパーのネタバレあらすじ:承
遂に戦争が始まり、カイルもまた結婚式を済ませるとすぐさま戦地へ招集されました。初めての海外派兵、初めての任務で、カイルは爆弾を所持していた子供と女性をやむなく狙撃することになりました。第1回の派兵では計8名の敵兵を狙撃する戦果を挙げたクリスは、テロリスト集団を率いるザルカーウィー(ミド・ハマダ)抹殺の作戦に参加、そこでかつてオリンピックへの出場経験を持つシリア出身の凄腕スナイパー、ムスタファ(サミー・シーク)と遭遇しました。その後、一時帰国したカイルはタヤとの間に長男コルトン(マックス・チャールズ)をもうけ、同じく軍人の道を選んだ弟ジェフ(キーア・オドネル)は兄に尊敬の念を抱きました。2度目の派兵、曹長に昇進したクリスはイラクでは懸賞金18万ドルがかけられた賞金首となっていました。ここでも戦果を着実に挙げ続けるクリスはいつしか軍の内部で“レジェンド”として讃えられるようになっていきましたが、この頃からクリスは心身共に蝕まれていきました。
アメリカンスナイパーのネタバレあらすじ:転
ちょうど長女を出産したばかりのタヤは戦地から帰国するたびに精神を病んでいく夫の姿に深く苦悩し、「人間らしさを取り戻してほしい」と除隊を嘆願しましたが、ムスタファとの決着をつけたいクリスはそれでも3度目の派兵へと向かいました。そこでは、同僚のビグルス(ジェイク・マクドーマン)が1km先からムスタファに顔面を撃たれ、一命は取り留めたものの視力を失ってしまいました。更には戦争に疑問を感じ始めていた仲間のマーク・リー(ルーク・グライムス)は無念の戦死を遂げ、兄の後を追ってイラクへ派兵されたジェフもまた心に深い傷を負って除隊しました。マークの葬儀に参列したクリスは、止めるタヤにあと1回だけと告げると4度目の派兵に向かいました。
アメリカンスナイパーの結末
次々と仲間たちが心身に傷を追って戦地を去り、追い打ちをかけるようにビグルスの訃報を知ったクリスの精神は限界を通り越していました。それでもクリスの部隊は1,920m先にムスタファが潜伏していることを突き止め、クリスがビグルスの想いも込めて放った銃弾は見事にムスタファを仕留めました。しかし、四方を敵に包囲されたクリスの部隊は近隣の建物を銃撃して砂塵を巻き起こし、混乱に乗じて脱出に成功しました。タヤとの約束通りに海軍を除隊したクリスはPTSDが悪化、一時は社会に馴染めず苦悩の日々を送りました。それでもクリスはタヤの勧めにより精神科医のカウンセリングを受けるようになり、同じく精神を病んだイラク帰還兵らとの交流を経て少しずつ人間の心を取り戻していきました。しかし2013年2月2日、退役軍人の若者と射撃訓練に出かけたクリスはその若者に撃たれ、38年という短い生涯を閉じました。クリスは英雄として讃えられ、盛大な葬儀が行われました。
以上、映画アメリカンスナイパーのネタバレあらすじと結末でした。
アメリカンスナイパーのレビュー・感想1
アメリカンスナイパーはなんといっても、自身も朝鮮戦争に従軍した経験を持つ、クリント・イーストウッド監督の演出による中東戦争のリアルな戦闘描写です。戦場での緊迫したスナイプシーンでは、観る方も思わず息を呑んでしまうほど緊迫した映像です。また驚くべきは、主演のブラッドリー・クーパーの役作りのリアルさでしょう。『特攻野郎Aチーム THE MOVIE』や『ハングオーバー! 』シリーズではコミカルな優男ぶりが印象的な2枚目俳優ですが、アメリカンスナイパーのために体重を増やして、まさに実在の凄腕ソルジャーになりきってシリアスな演技をみせました。戦争の悲惨さを改めて思い知る、重厚な力作『アメリカンスナイパー』です。
アメリカンスナイパーのレビュー・感想2
アメリカでは、この映画「アメリカンスナイパー」を「好戦的」とか「アメリカ軍を正当化し、戦争を美化している」と言うリベラル派の批判がある一方で、保守派は保守派で、「愛国的」と好評価をしており、リベラル派と保守派で論争となっているそうですが、映画を観ると、論点がいささかおかしいのではないか、と思います。クリント・イーストウッドの映画キャリアを見れば、彼が脳天気に「アメリカ万歳」を謳い上げる事などないのは判る事でしょう。少なくともこれは、アメリカを讃える映画ではありませんし、クリント・イーストウッドはクリス・カイルを決して手放しに英雄として描きません。反戦ではなくとも、厭戦と言うのがこの映画の持つスタンスではないでしょうか?勿論、強靱な肉体と気高いスピリットを備えたクリスは英雄となる資質を持つ人物なのですが、これは、そんな彼が砂漠の戦場で彼の思い描く英雄像を破壊されていく様を描くものなのです。
アメリカンスナイパーのレビュー・感想3
イラク戦争の初陣で彼が射殺したのは年端もいかない少年と、息子を殺されて一矢報いようとしたその母親です。敵役として現れるイラク過激派の“虐殺者”と呼ばれる男が、カイルらの目前で見せしめとして米軍協力者の息子をドリルでなぶり殺すシーンがありますが、実はクリスもやってる事は変わりません。そうして事態は相対化され、クリスと、そして観客に疑問を投げかけるのです。果たしてクリスは思い描く番犬になり得たのか、いや、他人の土地に乗り込んで女子供まで殺すと言うのは、それこそ狼の仕業ではないのか、と。 ただ、これを「好戦的」との見方が出来てしまうのは、皮肉にもこれまたクリント・イーストウッド監督ならではのサービス精神。アメリカンスナイパーの原作では出て来ない、イラク側の元オリンピック選手と言うスゴ腕狙撃手を登場させ、クリスとの対決ムードを高めていくのです。クライマックスの戦闘など、見方によっては西部劇ばりの“決闘”であり、こうした部分が批判されるのは頷ける所です。
アメリカンスナイパーのレビュー・感想4
クリスを演じるのはブラッドリー・クーパー。 本作アメリカンスナイパーの製作をも務めるブラッドリー・クーパーは、増量して体格までクリスに近付けると言う徹底した役作りにより、クリス・カイル本人(エンドロールに本人の写真が出ます)と見紛うばかりの風貌を備えるに至り、それは、遺族に涙さえさせるものだったとか。そしてこのアメリカンスナイパー製作中に起きたクリス(本人)の死により、正に運命的な完成度を持つに至ります。あたかもベートーヴェンの交響曲「英雄」が、その栄光だけでなく死と葬送が必要としたように、この映画も、戦場から戻ったクリスを描き、その死と葬送までを描く事で、正に神がかり的な完成度を得ました。これは、クリント・イーストウッド監督の描く「英雄」であり、そして、それはアメリカ人の思い描く英雄がアメリカそのものによって破壊され、死に至るまでを描くものなのです。
以上、映画アメリカンスナイパーのレビュー・感想でした。
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