アンドレ・チャンとオリーブの木の紹介:2020年シンガポール映画。ミシュランで星二つを獲得していたレストラン・アンドレのシェフ引退と、星の返上を決意した真相を、アンドレの持つ料理哲学と料理人として歩んだ道から深彫りする。
監督:ジョサイア・ヌグ 出演者:アンドレ・チャン、ほか
映画「アンドレ・チャンとオリーブの木」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「アンドレ・チャンとオリーブの木」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
アンドレ・チャンとオリーブの木の予告編 動画
映画「アンドレ・チャンとオリーブの木」解説
この解説記事には映画「アンドレ・チャンとオリーブの木」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
アンドレ・チャンとオリーブの木のネタバレあらすじ:起・オーナーの決断
シンガポールにあるミシュラン二つ星のレストラン『アンドレ』のシェフ、アンドレ・チャンは、開店記念日のお祝いの席で、来年シェフを引退し、店は閉店、星も返上すると宣言した。
細部までこだわり自分自身を表現する店に立ち、最後まで心を込めてもてなすと決めた。盛り付けまですべて自分で行うほど完璧主義なアンドレは、レストランは食べるだけではなく、体験する場所と考えており、料理哲学オクタフィロソフィの本も出版している。料理に哲学とはと言われるがその考え方はシンプルで、ユニーク・ピュア・テクスチャー・メモリー・ソルト・サウス・アルチザン・テロワールの八要素で構成されている。
台湾に中国にも『ル・コルドン・ブルー』のような、料理学校ではなくミシュランガイドに載る夢を叶えるために、アンドレは15歳で外国へ渡り、本場フランスで修行をし、見習いから9年間『ジャルダン・デ・サンス』で働いた。南仏を第二の故郷と言う彼は、自分のレストランのテラスに、そこから持ってきたオリーブの木を植えている。
アンドレ・チャンとオリーブの木のネタバレあらすじ:承・アンドレを支える人々
レストランは、アンドレが全工程関われるようシンプルになっており、大声を出したり、走り回ることもなく静か。アンドレの元で働いた経験は転職の強みとして、これからの世代の可能性を広げている。
そのため、経験者を雇う事はめったになく、野菜の切り方や魚の捌き方をゼロから学ぶこともある。スタッフのユンは、食べに来た時にここで働きたいと直談判、帰りの航空券はなく、アンドレの所で働くために来たという情熱に、かつての自分のようだとアンドレは衝撃を受けた。以降、ユンと同じ方法で入ってくる者が増えた。
世界中を周ったパティシエのマーティンは、シンガポールへの帰国直前に強盗に切りつけられ、右手に重傷を負い、アンドレの元で働く事を諦めかけていたが、アンドレは「動けないなら頭脳で」と、毎日組み合わせを考え厨房を見て料理をしたくなって欲しいと、復帰までパティシエを雇わなかった。
アンドレのレストランには、急にメニューを変えても完璧にサービスできるくらいのチーム力がある。
アンドレ・チャンとオリーブの木のネタバレあらすじ:転・妻、そしてパートナー
レストランの内外観を整える妻のパムは、レストランの経営で重要な役割をしている。子供は作らないと決めていたアンドレはパムに犬を贈り、パムはその犬を息子のように可愛がっている。
そんな彼女は、初めてアンドレのレストランへ行った時にトレー運びを手伝い、三年間トレーを運び、今では経営を担う。閉店を決めるまで、夫婦共に仕事中毒だと自覚はなかった。好戦的なパムと真逆なアンドレ、二人の共通点は味覚だった。
二人は、アジアへの店舗拡大の際にやってきた事がきっかけで出会い、当時、才能はあれど、まだ貧乏なシェフだった彼との結婚には大反対された。
その後、10月10日の結婚記念日に開店し、閉店の発表をした。
アンドレ・チャンとオリーブの木の結末:自問自答の結果
完璧主義を貫いた結果、星を貰う等、料理を認めてもらう事が重要ではないという悟りにいたり、完璧にするための最後の1%、自分自身の魂が足りていなかったという結論に至った。
そして夢を追って一つの所に長くいなかった若かった頃の自分への埋め合わせとして、欲しかった自分の家を、台湾の自分が生まれた町に建てた。台湾には高級レストランの需要はまだないからこそ、変えようという使命感があった。
台湾にはアンドレが手掛ける『RAW』という店があり、次の世代のシェフのコーチのような立場で関わっている。
閉店の日、アンドレは店内で、自分の作った映像を閉店理由と次の挑戦についての答えとして披露。生まれ故郷の台湾、修行をしたフランス、そして彼を成長させた三つ目として、アンドレの名を世界に紹介してくれたシンガポールを挙げた。
2018年にダイナーズクラブ特別功労賞を中国人として初めて受賞。パムに支えられながら、アジア料理界の発展を目指し、現在も挑戦を続けている。
以上、映画「アンドレ・チャンとオリーブの木」のあらすじと結末でした。
アンドレ・チャンとオリーブの木のレビュー・考察:幸せなシェフとは
こだわりの一流店のシェフ、成功者の彼が、シェフを引退する理由とは何か。彼にとって「成功」とは何か。ミシュランの星付きになる夢を叶えた後、アンドレはそれを維持して満足でせず、次の挑戦に向けて新しいスタートラインに立った印象を受ける。さらに、星付きのレストランになったことで、なぜ自分は料理をするのか、料理で表現するとは、という原点に立ち戻ったのではないだろうか。ミシュランの星はレストランにとって、目に見える形での評価の一つと言える。ただ、アンドレのアジア料理界の発展という夢は、星付きレストランという形では収まりきらなかったのだと思う。
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