地下室のメロディーの紹介:1963年フランス映画。フランス映画界の二大スター、アラン・ドロンとジャン・ギャバンが共演した犯罪映画です。フランス・カンヌのカジノから大金を奪おうと企む引退寸前の老ギャングと若いチンピラの顛末を描きます。
監督:アンリ・ヴェルヌイユ 出演者:ジャン・ギャバン(シャルル)、アラン・ドロン(フランシス・ヴェルロット)、ヴィヴィアーヌ・ロマンス(ジャネット)、モーリス・ビロー(ロイス・ノーダン)、ジャン・カルメ(バーマン)ほか
映画「地下室のメロディー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「地下室のメロディー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「地下室のメロディー」解説
この解説記事には映画「地下室のメロディー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
地下室のメロディーのネタバレあらすじ:起
強盗の罪で5年間服役していた老ギャングのシャルル(ジャン・ギャバン)は、刑期を終えて出所してきました。シャルルの妻ジャネット(ヴィヴィアーヌ・ロマンス)は夫にはギャング稼業から足を洗って堅気になってほしいと願っていましたが、そんなこともお構いなしのシャルルは昔の仲間マリオ(アンリ・ヴァルロジュー)の元を訪ね、人生最後の大仕事としてカンヌのパルム・ビーチにあるカジノの地下金庫から10億フランという大金をごっそり奪い取ろうという作戦を立てました。人手の欲しいシャルルは、かつて刑務所で目をつけていた若いチンピラのフランシス・ヴェルロット(アラン・ドロン)とその義兄ロイス・ノーダン(モーリス・ビロー)を仲間に引き入れました。
地下室のメロディーのネタバレあらすじ:承
シャルルはまず下調べのためカジノに行き、極秘裏に地下の金庫へ運び込まれる大金の異動ルートを探り当てました。シャルルのアドバイスでフランシスは金持ちの御曹司に成りすまし、運転手役のロイスと共にカジノのあるホテルに向かい、カジノのダンサーであるブリジット(カルラ・マルリエ)を口説いて親しくなり、一般客が立ち入ることのできないカジノの舞台裏へ出入りする口実を掴みました。作戦決行日はカジノのオーナーが売上金を運び出す頃合いを見計らって決定しました。
地下室のメロディーのネタバレあらすじ:転
作戦決行当日、フランシスはブリジットのステージを観たのちカジノの舞台裏に侵入、空気穴を伝ってエレベーターの屋根に身を潜め、オーナーと会計係が売上金の勘定をしている様子を発見します。覆面を被り、マシンガンを手にしたフランシスはオーナーらの前に姿を現し、会計係に鍵を開けさせてシャルルを引き入れると、まんまと大金10億フランを奪ってバッグに詰め込み、ロイスの運転するロールスロイスで逃走しました。金はあらかじめ用意していた脱衣場に隠し、シャルルとフランシスはそれぞれ別のホテルに泊まって警察の目をやり過ごしました。作戦は大成功かと思われました。
地下室のメロディーの結末
しかし翌朝、朝食を取りながら新聞を眺めていたシャルルの表情に動揺が走りました。何と新聞の一面には、カジノにいたフランシスの写真がでかでかと写し出されていたのです。慌てたシャルルはロイスを逃がし、どうにかして警察の手を逃れようとフランシスと共に観光客を装って脱出しようと隙を伺っていました。しかし、犯行に使ったバッグの外観をカジノのオーナーらは覚えており、フランシスは慌ててバッグをホテルのプールに沈めました。ところが、バッグのフタは無情にも水中で開いてしまい、盗んだ現金はプールの水面に次々と浮かび上がり、周囲の人々は大騒ぎとなりました。シャルルとフランシスは成す術もなく、ただ水面の現金を見つめるのみでした。
犯罪映画のことをアメリカでも「フィルム・ノワール」とフランス語で呼んでいるように、一時期フランス映画界は、このジャンルで数々の秀作を生み出したものだ。
今ではフランス映画というと恋愛ものばかりのような感じだが、昔は—-そう1970年代までは、男くさい映画もたくさんあったのだ。男の世界的な大スターが何人もいたのだ。
中でもジャン・ギャバンの存在は大きい。1930年代からのスターで、”円熟”、”風格”、”重厚”を絵に描いたような顔。
1960年代に人気スターになった若き日のアラン・ドロンもジャンポール・ベルモンドも、このジャン・ギャバンと組んだことによって、何かフランス映画史の正統なる後継者といったイメージを固めることが出来たのだ。
この映画「地下室のメロディー」は、名匠アンリ・ヴェルヌイユ監督が、ジャン・ギャバンとアラン・ドロンの二大スターを共演させて発表した、クールな犯罪映画=フィルム・ノワールの傑作だ。
アンリ・ヴェルヌイユ監督は、この二大スターの対照的な性格描写の面白さで物語を進行させ、シャープな映像とファンキーなモダン・ジャズの効果的な使用によって、一級の作品に仕上げていると思う。
この映画は、ジャン・ギャバン58歳、アラン・ドロン27歳の時の競演映画で、前半はジャン・ギャバンの話が中心で、しみじみとした味わい。
後半は若いアラン・ドロンの活躍が中心で、サスペンスたっぷり。まさに新旧二大スターの大競演だ。
とにかく、面白い話なのだ。脚本がまず、いい。刑務所から出所したばかりの老ギャングのシャルル(ジャン・ギャバン)が、知り合いのチンピラ、フランシス(アラン・ドロン)とその義兄を誘って、南仏のカジノから大金を奪取しようとする話だ。
シャルルは、「見果てぬ夢」を追う男なのだ。5年ぶりに会った妻から「もうバカは出来ない歳よ」と言われても、「最後の大仕事をして、キャンベラで余生を過ごす」という夢を、捨てられない。
冒頭のシャルルとその妻の淡々とした再会場面は、一見かったるいようだが、実は後で効いてくる、うまい伏線だ。
老ギャングの「これがラスト・チャンス」という思いが最初にじっくりと描かれているので、ただでもショッキングなラストシーンに、老いのわびしさや、夢のはかなさが加わって、いっそう複雑で濃厚なショックになるのだ。
しかし、単純に”血沸き肉躍る”楽しさに満ちているのは、やはり中盤の犯罪に着手してからだ。
シャルルは若いフランシスを金持ちの青年に仕立てあげ、南仏のカジノに乗り込む。海辺のカジノの設計図を入手したのを、もっけの幸いとばかり、地下金庫から売上金をごっそり奪おうという計画だ。
街のあんちゃんから、金持ちの坊ちゃんに変身したアラン・ドロンが嫌味なくらいの美男である。そのウネリ眉をながめているだけでも十分楽しめる。
マヌケなスキー用のマスクをしてさえ、「オペラ座の怪人」のごとき、妖しい魅力が漂ってしまうのだから凄い。
そして、この美男がタキシード姿で「ダイハード」のように、ダクトの中をはいずり回ったり、エレベーターのロープにぶら下がったりの大奮闘だ。
一方、ジャン・ギャバンの方は、動きが極端に少なく、最後の場面ではサングラスをして座ったきりという”置物状態”だが、そんな状態でも映画全体を大きく重々しくさせる役目はしっかり果たしていて、さすがの貫禄だ。
フランシスは、大金の入ったカバンをシャルルに受け渡そうとするが、警察の人間たちがうろついているので、なかなか渡すことが出来ない。
プールをはさんで無言の会話を交わし合う二人。以後ラストまでセリフなしの”無言劇”になるが、そのサスペンスの盛り上げ方には唸ってしまう。
プールサイドの様々な丸くくり抜かれた柱とか、プールの淵の出島のように張り出した部分とかの造形を見事に生かしたカメラワークに興奮してしまう。
あと、つくづく思ったのはサングラスと煙草の使い方だ。
この二つはフィルム・ノワールには絶対に欠かせない必殺の小道具だ。もちろん、酒と車と女も欠かせないと思う。