空軍大戦略の紹介:1969年イギリス映画。第二次世界大戦前半の山場、イギリスとナチスドイツが制空権を争って繰り広げた激戦“バトル・オブ・ブリテン”を映画化した戦争映画です。あえて主人公やドラマを特定せず、歴史的背景を順に追った群像劇そして製作されています。
監督:ガイ・ハミルトン 出演者:ローレンス・オリヴィエ(ヒュー・ダウディング)、トレヴァー・ハワード(キース・パーク)、クルト・ユルゲンス(フォン・リヒター)、クリストファー・プラマー(コリン・ハーヴェイ)、スザンナ・ヨーク(マギー・ハーヴェイ)ほか
映画「空軍大戦略」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「空軍大戦略」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「空軍大戦略」解説
この解説記事には映画「空軍大戦略」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
空軍大戦略のネタバレあらすじ:起
第二次世界大戦初期の1940年5月。ナチスドイツ軍はフランスに侵攻、イギリス・フランス連合軍をダンケルクから撤退に追い込みます。イギリス空軍の戦闘機部隊司令官ヒュー・ダウディング大将(ローレンス・オリヴィエ)はダンケルク戦線に見切りをつけ、チャーチル首相に対してこれ以上フランスに航空機を送らないよう要請します。続いてドイツ軍は狙いをイギリス本土に定め、手始めに特使としてフォン・リヒター男爵(クルト・ユルゲンス)をイギリスの駐スイス大使ケリー(ラルフ・リチャードソン)との交渉に当たらせますが、ケリーはイギリスはナチスには屈しないと主張します。その後、フランス全土を完全に制圧したドイツ軍がイギリス本土侵攻の準備をする中、イギリス軍も防衛体制を整えて本土決戦に備えます。
空軍大戦略のネタバレあらすじ:承
1940年8月。ドイツ軍はドーバー海峡に上陸用舟艇を集結させ、空軍司令官ヘルマン・ゲーリング元帥(ハイン・リース)が指揮を執る空軍は制空権を確保するためにイギリス軍航空基地を攻撃させます。後に“バトル・オブ・ブリテン”と呼ばれることになる史上最大の空中戦の始まりです。強者揃いのドイツ軍に対してイギリス軍は経験の浅いパイロットが多く、またレーダー基地を破壊されたイギリス軍は敵機の情報を防空監視隊の目視に頼るしかありませんでした。戦いにはコリン・ハーヴェイ空軍少佐(クリストファー・プラマー)も駆り出され、その妻マギー(スザンナ・ヨーク)も予備空軍軍曹として派遣されました。ダウディング大将は、ドイツ軍の圧倒的な戦力と、自軍の戦力不足を不安視していました。
空軍大戦略のネタバレあらすじ:転
1940年8月、ドイツ軍は誤ってロンドン市街地を空爆、チャーチルは報復のためにベルリンを爆撃します。激怒したヒトラーはイギリス本土への総攻撃を決意、ロンドンは爆撃を受け民間人の被害も拡大してしまいます。イギリス軍はポーランドやチェコなどの義勇兵と共に連合戦隊を編成、パイロットも経験を積んで次第に腕を上げていきました。戦いの最中、コリンが負傷したと聞かされたマギーは、夫のいる部隊へ転属することになります。
空軍大戦略の結末
1940年9月15日。バトル・オブ・ブリテン最大の激戦となる大規模な空中戦が始まりました。ドイツ軍はこれまでで最大規模の一大爆撃編隊を組んで侵攻を開始、イギリス軍は持てる全ての兵力を投じて迎え撃ちました。スキッパー空軍少佐(ロバート・ショウ)らパイロットたちは勇敢に戦い、ゲーリングの作戦ミスも重なって遂にイギリス軍はドイツ軍を撤退に追い込むことに成功しました。ゲーリングは敗北の責任を部下に押し付け、ダウディングは戦いの終わったイギリスの空を静かに見つめていました。
「英国の戦い」の勝敗が、後のスターリングラードと並ぶ、第二次世界大戦の重要な分岐点となったことは有名です。私の目で見て覚えたことは、第二次世界展で活躍した名機を実際に使用して撮影したことの感激と羨ましさでした。戦勝国は勝利の記念の象徴として大戦を戦い抜いたスピットファイアを大切に手入れして現在でも飛行可能な機体が複数現存しているのは当然としても、敗戦国側も中立国等に残されていた実機を使うという入念さでした。その努力に脱帽です。ヨーロッパの大部分を既に席巻して、事実上の同盟国だった中立国(スイスとスウェーデンを除く)を除くと主たる敵は英国のみ(独ソ戦はこの後)であり、ヒトラー率いるナチス・ドイツのまさに絶頂期でした。対する英国は大陸に派遣した部隊が惨敗し、全ての装備を放棄して辛うじて生存した兵の脱出に成功はしたものの、降伏寸前という危機に追い込まれていました。頼みはほぼ無傷の大海軍と愛国心に燃える少数の空軍の戦闘機のみで、見た目の戦力は隔絶していました。私はこの英国の戦いが実は英空軍の奮戦よりもむしろドイツの英国への基本戦略の認識の甘さによる失敗の積み重ねであったと分析するのですが、いずれにせよ英国までがドイツの手に落ちると、第二次世界大戦の様相は全く違ったものとなっていたことは必須であり、ドイツも作戦優先で、戦争の総力戦という認識に薄かったことは間違いないでしょう。ともあれ英国が歴史的危機を、本当に少数の戦闘機パイロットによって救われたことを忘れてはいけません。確かにジョンブル精神が活きていました。貴族の伝統的精神により国難が救われたのです。政治的指導者と軍部の指導者を除くと、この映画の主役と呼べる人物が見合たらないというのも特色に挙げられます。無名の、エンドロールに現れる戦死者の数がそれを物語っていました。登場する実機も後期型が主役となった点は史実とは異なりますが、ドキュメント映画ではないのでその点は看過します。第二次世界大戦に英国は勝利しますが、代償もまた大きく世界知の大国の座から滑り落ちてしまいました。その英国の落日としても、本作を忘れてはいけないはずです。