ブラス!の紹介:1996年イギリス映画。実在のバンド「グライムソープ・コリアリー・バンド」をモデルに、仲間と共に音楽を奏でる炭坑労働者達の姿を描いた青春&音楽作品。炭坑町グリムリーでは、労働者達が「グリムリー・コリアリー・バンド」を結成して練習を行っていた。特にリーダーで指揮者のダニーは、ブラスバンドの全英大会に出場するという目標に燃えている。しかしイギリス全土で炭坑の閉鎖騒ぎが勃発しており、メンバーは練習どころではなかった。そんな中、町の出身者グロリアが久しぶりに帰郷する。彼女が加入したことでバンドは活気を取り戻すが、実はグロリアは炭坑を閉鎖しようとする会社側の人間だった。
監督:マーク・ハーマン 出演者:ピート・ポスルスウェイト(ダニー)、ユアン・マクレガー(アンディ)、タラ・フィッツジェラルド(グロリア)、スティーヴン・トンプキンソン(フィル)、ジム・カーター(ハリー)ほか
映画「ブラス!」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ブラス!」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ブラス!の予告編 動画
映画「ブラス!」解説
この解説記事には映画「ブラス!」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ブラス!のネタバレあらすじ:炭坑町のバンド
1990年代のイギリス、ヨークシャーの炭坑町グリムリー。政策によってイギリス全土で炭坑が閉鎖される中、その波はグリムリー炭坑にまで迫っていました。労働者組合は閉鎖に断固反対し、町を上げて徹底抗戦の構えです。
そんな中、1人の女性がグリムリーにやって来ました。彼女の名前はグロリア・モリンズ。この町の出身者で、仕事のために久しぶりに帰って来たのです。グロリアは楽器のフリューゲルを持ち込んでおり、それを見た下宿の主人は町のバンドの練習場で吹けば良いとアドバイスしました。
町には炭坑労働者の男性で結成されたブラスバンド「グリムリー・コリアリー・バンド」があります。長い歴史を誇るバンドで、リーダーで指揮者のダニーはバンドを何よりも大切にしていました。彼の目標はブラスバンドの全英大会に出場し、アルバート・ホールで優勝を飾ることです。
しかし炭坑が閉鎖するかも知れない中、失業の恐れを前に貧しいメンバーは練習に身が入りません。閉鎖を目論む会社側は、魅力的な退職金を提案していました。徹底抗戦か、取れる内に退職金を貰っておくか。皆表向きは前者を装っていましたが、貧困に喘ぐ労働者の中には退職金に心が傾く者も少なくありませんでした。
そこへグロリアが楽器を携えやって来ます。はじめは練習を断られたグロリアでしたが、彼女の祖父がダニーの親友だと分かると歓迎されました。グロリアがリクエストに応えて見事な演奏を披露すると、メンバー達は一気に活気付きます。グロリアはバンドに加入し、一緒に練習を始めました。
ブラス!のネタバレあらすじ:貧しい暮らし
ダニーは閉鎖騒ぎに動揺するメンバーを厳しく叱りつけます。ダニーの息子フィルは、人生にはバンドよりも大事なことがあると訴えました。しかしダニーは、自分は違うと厳しく言い放ちます。
グロリアはメンバーのアンディに誘われ、一緒に夕食へ行きました。アンディはグロリアのことを覚えており、昔より美しくなって現れた彼女に惹かれています。アンディは社交的なグロリアが、自身の仕事の話になると笑って誤魔化すことに気づいていました。
指摘されたグロリアは、自分が会社側で働いていることを認めます。しかしあくまでデータを集めて資料を出しているだけで、炭坑閉鎖には反対していると訴えました。アンディは、そんなことは無意味だと言います。会社側の目的は労働者の解雇と閉鎖であり、上層部はグロリアのレポートなど読んでもいないだろうと。
グロリアはムッとしますが、炭坑を救いたいという気持ちは本物でした。アンディにもそれは伝わり、2人は一夜を共にします。しかし後日、グロリアが会社から出て来たところをバンドメンバーのジム達に見られてしまいました。ジム達はグロリアの真意も聞こうとせず、ただ会社側の人間というだけで彼女を敵認定します。
炭坑労働者達は投票を行い、炭坑存続か退職金かのいずれかに票を投じました。貧困に喘ぐフィルは組合を裏切り、退職金に投票します。彼の妻サンドラは幼い子ども達を抱え、生活苦に頭を悩ませていました。そんな矢先、フィルが楽器を新調したことでサンドラの我慢も限界を迎えてしまいます。
ブラス!のネタバレあらすじ:疲弊する人々
バンドは準決勝を突破し、念願の決勝戦へ進むことになりました。ところが彼らがグリムリーに帰って来ると、町は悲しみに沈んでいます。開票が行われた結果、炭坑の閉鎖が決定したのです。誰もが言葉を失くす中、突然ダニーが倒れてしまいました。長い間炭坑で働いて来た彼は肺病を患っていたのです。
バンドメンバーから見舞金を募っていたジムは、グロリアから金を取ると出て行けと態度で示しました。グロリアは、自分はずっとバンドの味方だったと訴えます。しかしアンディすら耳を貸さない状況にその場を立ち去りました。自棄になったアンディは、賭けビリヤードに負けて楽器を失います。
傷心のフィルが帰宅すると、サンドラが子ども達を連れて家を出て行くところでした。借金を返せず家財道具を全て失い、それでも音楽を優先するフィルについて行けなくなったのです。フィルは追いすがりますが、サンドラは子ども達を連れて出て行ってしまいました。
バンドメンバーのハリーが提案し、ダニーのために最後の演奏をすることにします。夜、ダニーが入院している病院の前でバンドは演奏を始めました。楽器を失ったアンディは口笛で参加します。ダニーは喜び、この演奏なら決勝でも勝てるとメンバーに伝えました。
しかしメンバーはバンドの解散を決意しており、決勝戦に出るつもりもありません。そもそも費用が3000ポンドもかかるため、彼らには参加しようもないのです。フィルはそれを伝えようとしましたが、決勝に想いを馳せるダニーを前にどうしても言うことが出来ませんでした。
ブラス!のネタバレあらすじ:グロリアの3000ポンド
全てを失ったフィルはやがて追い詰められ、首を吊って自殺しようとします。運良く絶命する前に発見され、病院に担ぎ込まれました。駆けつけたダニーに、フィルは泣きながらバンドが解散したことを伝えます。
フィルの自殺未遂を知ったアンディやジム達は、彼を酒場へ誘いました。そこへグロリアが現れます。彼女は会社を辞めていました。アンディの言った通り、彼女のレポートは読まれていないどころか、既に炭坑閉鎖は2年も前に決まっていたと会社側から知らされたのです。
自分はPRでしかなかったと知ったグロリアは激怒し、退職金で3000ポンドを用意しました。これを使って決勝に出て欲しいと話すグロリア。罪悪感を金で払拭する気かと睨むジムに、お節介は自分の性分なのだと言います。
バンドとダニーのための金だと言われたジムは、ダニーの望みを叶えるため、グロリアも含めた全員で決勝へ行こうと決意しました。アンディは急いで楽器を取り戻し、バンドは町中の人に見送られながらバスでアルバート・ホールへ向かいます。
ブラス!のネタバレあらすじ:ダニーのスピーチ
ついにグリムリー・コリアリー・バンドは、アルバート・ホールで行われる決勝戦の舞台へ上がりました。会場にはサンドラや子ども達の姿もあります。彼らはハリーの指揮で素晴らしい演奏を披露しました。病院を抜け出したダニーも舞台にこっそり上がり、後ろから演奏するメンバーを見守ります。
グリムリー・コリアリー・バンドは見事優勝し、拍手喝采に包まれました。スピーチに立ったダニーは、突然トロフィーを受け取らないと言い出します。以前は音楽を最優先に考えていた彼ですが、人間こそが大事だと考えるようになっていました。
彼は語ります。政府が発展の名を借りたまやかしのために自分たちの産業や共同体を破壊したこと。グリムリー炭坑も閉鎖されたこと。人々はアシカやクジラのためになら立ち上がるが、希望を失った人間のためには何もしないこと。それらを述べたダニーが改めてトロフィーを拒絶すると、会場からは拍手が沸き起こりました。
バンドがそのまま舞台を降りようとすると、ジムがトロフィーに駆け寄り持って帰ります。帰り道、バンドはトロフィーを囲んで優勝の喜びに湧いていました。ジムがグロリアに素直な言葉をかけます。グロリアは微笑み、アンディとキスをしました。バンドが「威風堂々」を演奏する中、この映画は終わりを迎えます。
以上、映画「ブラス!」のあらすじと結末でした。
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