汽車はふたたび故郷への紹介:2010年フランス,グルジア,ロシア映画。映画を公開禁止にされてしまった映画監督ニコラスは、フランスで再起を図ろうとする。しかし彼の前途は一筋縄ではいかなかった。オタール・イオセリアーニ監督の自伝的映画ですが、監督本人はフランスに移民をしたまま本国へは帰らずフランスで映画を作り続けています。
監督:オタール・イオセリアーニ 出演:ダト・タリエラシュヴィリ(ニコラス)、ビュル・オジエ(カトリーヌ)、ピエール・エテックス(フランスのプロデューサー)、ほか
映画「汽車はふたたび故郷へ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「汽車はふたたび故郷へ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
汽車はふたたび故郷への予告編 動画
映画「汽車はふたたび故郷へ」解説
この解説記事には映画「汽車はふたたび故郷へ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
汽車はふたたび故郷へのネタバレあらすじ:起・映画を撮り始めた少年
友人と映画を撮っているニコラス。しかし、花畑が整地されていく場面が体制批判的ではないかと仲間の女の子に指摘されてしまう。けれど、ニコラスはそのシーンをカットすることに首を縦に振らなかった。ニコラスと二人の仲間は、子供の頃から学校が終わると列車にしがみついて近くの古い教会へ行って、聖人画を盗み出して怒られたりする遊び仲間だった。その頃からニコラスは写真に興味を持ち、家に暗室を作り現像していた。やがて大人になった三人、そのうちの女の子はニコラスをもう一人の男の子から距離を取った。ニコラスはそれでも友人と映画を撮り続けた。
汽車はふたたび故郷へのネタバレあらすじ:承・若手の映画監督として
ニコラスの祖父は、元軍人で今でも喧嘩をするときは拳でやるほど元気だった。また、弟は音楽に目覚め、チェロの練習を欠かさなかった。映画監督として、セットを制作し、スタジオで撮影をしていたニコラスだったが、編集が間に合わないと言って、編集のプロに任せると通告されてしまう。しかしそれが嫌だったニコラスは、自分で編集した物で試写を行い、脚本と作品が違い過ぎると公開禁止にされてしまった。しかしごく仲間うちでは乾杯をした。そんな頃、フランスから要人がやって来た。そのフランス人と会っている所を監視されていたニコラスは、当局につかまり暴行を受けた。そして、同じく政府の映画製作部門の上官にあの公開禁止の映画を撮ったのはニコラスではなく自分であることにして、ニコラスが責任を取らなくてもいい事にしたと言った。そして、共産党に入党すればニコラスの問題は全て解決するとほのめかした。しかし入党の意思のないニコラスに、彼が名家の出である事や、出国すれば帰って来なだろうと、出国を促された。そこでニコラスは祖父の知り合いのいるフランスへ行くことにした。
汽車はふたたび故郷へのネタバレあらすじ:転・フランスへの旅立ち
鳩とチェロを持って汽車で旅立つニコラスをたくさんの友人が見送った。フランスに着くと、大道芸の音楽を気にしながらも祖父の友人を見つけ、部屋に上げてもらった。しかしそこで東側のスパイと疑われ、なぜフランスへ出国させたのか追及された。長い話になると言うと、追及はやみ、祖父を知るカトリーヌを紹介され部屋を貸してもらうことになった。フランスでも映画製作をしようとしていたが、なかなか脚本ができず、工事現場で働いていると、外交官が彼を訪ね新しい大臣が会いたいと言ったら断るなと彼に忠告した。言葉の通りに、部屋をソ連寄りにして大使と文化参事官を迎えると、メーデーの催し物に招待された。当日行ってみると大使は、ニコラスと仲が良いと言う事を他の参加者に印象付け、彼を帰した。ニコラスはフランスで自分の映画をプロデューサーたちに見せるため、手漕ぎボートで池を渡ろうとすると、そこに現れた人魚に驚いて池に落ちてしまう。水浸しのまま、フィルムを褒められたが、彼らの興味はKGBや経済状況ばかりで、ニコラスは嫌になり帰った。それをプロデューサーたちは横柄な態度と取ったが、彼はゴマをすりたくないだけだった。再び映画業から離れ、連れてきた鳩に、こちらでも同じようにすべてが最悪だけれど頑張ってみると言う手紙をつけて飛ばした。そして、とあるプロデューサー契約し、撮り始めた。しかしニコラスが何を撮ろうとしているのか説明を求められ、それを断ると、変わり者レッテルを貼られた。フランスでは商売を考えなさいと言われ、独創性が強すぎる、長すぎると言う事を理由に、勝手に編集へ回されてしまった。ニコラスは自分が撮ったものを他人がいじるのに納得がいかなかった。
汽車はふたたび故郷への結末:故郷へ戻ったニコラスは?
ニコラスは子供の頃三人で列車にしがみついて遊びに言っていた頃の夢を見た。映画のプロデューサーとスタッフは仲間割れをし、編集された映画はヒットすると言われたが、ニコラスはスタッフを追い出し自分で編集を始めた。その作品の試写会に来た客は、みな不満気な顔で帰り、幕が下りるまで残っていたのは一組だけだった。鳩を放ち、ニコラスは帰国することにした。帰国すると、町は集合住宅が建っていたた、故郷では家族が変わらず彼を迎えた。祖父にパリでカトリーヌに会った事を話し、日常に戻った彼は、家族で川にピクニックに行った。そこで釣りをしていると、パリの池にいた人魚が彼を水の中へ連れ去って行った。ニコラスの不在に気づいたのは祖父だけだった。
以上、映画「汽車はふたたび故郷へ」のあらすじと結末でした。
汽車はふたたび故郷へのレビュー・考察:黒い人魚、名前のない故郷
ニコラスの故郷は作中で旧ソ連だという事はわかっても、それがジョージアであることは看板の文字なので察することはできても特別言及されない。そして作品に唐突に出てくる黒い人魚と言うファンタジーのような要素は旧ソ連のジョージアとヨーロッパの堺にある黒海のメタファーにも見える。さて、その人魚によってニコラスはどこへ行ったのか。もしこの作品が監督の自伝的映画だと言うのなら、フランスに移民したきり帰ってきていないイオセリアーニ監督が戻って来た幻想のよう思える。
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