命みじかし、恋せよ乙女の紹介:2018年ドイツ映画。人生に絶望する男カールのもとに、ある日突然現れた日本人女性ユウ。二人は何かに引き寄せられるかのように惹かれ合っていきますが、ユウはある日再び姿を消してしまいます。ユウを追って来日したカールは、旅館を営むユウの祖母と出会い…。ドイツと日本を舞台に生命の喪失と再生を描いた、切なくも美しいヒューマンドラマ。小津安二郎監督が脚本執筆のため利用していたことでも知られる老舗旅館「茅ケ崎館」で撮影が行われました。監督は「HAMNAMI」「フクシマ・モナムール」のドイツ人女性監督、ド―リス・デリエ。本作は名優樹木希林の最後の出演作となりました。
監督:ド―リス・デリエ 出演者:ゴロ・オイラー(カール)、入月絢(ユウ)、ハンネローレ・エルスナー(トゥルディ)、エルマー・ウェッパー(ルディ)、フェリックス・アイトナー(クラウス)、ビルギット・ミニヒマイヤー(カロ)、樹木希林(ユウの祖母)、ほか
映画「命みじかし、恋せよ乙女」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「命みじかし、恋せよ乙女」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
命みじかし、恋せよ乙女の予告編 動画
映画「命みじかし、恋せよ乙女」解説
この解説記事には映画「命みじかし、恋せよ乙女」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
命みじかし、恋せよ乙女のネタバレあらすじ:起
舞台はドイツ・ミュンヘン。両親を失ってからというもの酒に溺れるようになり、職を失ってしまったカール(ゴロ・オイラー)。妻はそんなカールに愛想をつかし、子供を連れて家を出て行ってしまいました。
娘ミアの誕生日、カールは泥酔した状態で乱入し、パーティを台無しにしてしまいます。カールは得体の知れない黒い影にいつも追われていて、それが一層彼の不安を駆り立てていました。
怠惰な日々を送っていたカールのもとに、ある日若い日本人女性が訪ねてきました。女性の名はユウ(入月絢)、カールの亡き父ルディ(エルマー・ウェッパー)と親交があり、日本でルディの最期を看取った女性でした。カールはユウの唐突な来訪に戸惑いながらも、墓参りを兼ねて彼女を生家へ案内することに。
長らく家族と疎遠だったカールにとっても久しぶりの帰郷となりました。カールにはクラウス(フェリックス・アイトナー)とカロ(ビルギット・ミニヒマイヤー)という兄姉がいましたが、ルディの遺産相続で揉めてからは、長らく疎遠な関係が続いています。特に極右政党に所属するクラウスとの関係は修復が困難なほど悪化していました。
命みじかし、恋せよ乙女のネタバレあらすじ:承
長らく空き家となっていた生家に久しぶりに滞在することになったカールでしたが、再び黒い影に付きまとわれるようになります。ユウは、影の正体は悪霊だと告げます。さらに両親の幻影が頻繁にカールの前に現れます。両親が兄弟の不仲を嘆いていることを知ったカールは、罪悪感に苛まれるようになります。
カールはユウを連れてノイシュバンシュタイン城の観光に出掛けます。そこで出会った日本人観光客は、ユウを見て「あの子は悪霊だ、気を付けた方がいい」とカールに助言します。カールは不吉なその言葉に戸惑いを見せます。ユウの存在は確かにすべてが謎めいていましたが、カールは彼女に少しづつ惹かれていました。
城のショップでお土産を見ていると、偶然義姉のエマと再会、カールはクラウスの政党入りが原因で甥のロベルトが引きこもりになってしまったことを知ります。カールの酒の量は減ることがなく、ついにミアと会うこともできなくなってしまいます。
ユウは悲しみに暮れるカールに寄り添い、「あなたはそのままでいい、愛している」と囁きますが、自暴自棄になっているカールはユウを受け入れることができません。ユウは家を出ていってしまいます。
命みじかし、恋せよ乙女のネタバレあらすじ:転
その夜、家の外を歩くロベルトの幻影を目にしたカールは、彼が自殺をしようとしているのではないかと危惧します。クラウスの家にやってきたカールは、鍵を壊してロベルトの部屋に突入します。幸いロベルトは無事でしたが、カールの常軌を逸した行動がクラウスの怒りを買ってしまいます。
帰り道、酒に酔ったカールは森の中で眠りこんでしまいます。病院に運びこまれたカールは、ひどい凍傷を負っており、もはや自発呼吸もできない状態に陥っていました。クラウスとカロは生命維持装置を切る決断をしますが、カールは奇跡的に一命を取り留めます。そして自宅での療養生活が始まりますが、凍傷により生殖器を失ったことを知ったカールは、再び深く傷つきます。カールは消えてしまったユウをなんとか探し出したいと思っていました。
夏、ユウを追ってカールは日本へやってきます。そしてユウが育ったという海辺の町、茅ヶ崎の寺でユウの姿を目にします。ユウを追ってカールが迷い込んだのは、茅ヶ崎館という小さな旅館でした。旅館の女将(樹木希林)は玄関にぼんやりと佇むカールを部屋に招き入れます。
窓辺にはユウが欲しがっていたノイシュバンシュタイン城のスノードームが飾られており、カールは不思議な因縁を感じます。ユウの写真を見せ、彼女を知らないか?と尋ねますが、女将は悲しげな表情で首を横に振ってみせるだけでした。カールは女将が出してくれた浴衣を着てみますが、前合わせが死人合わせを意味する左前になってしまいました。女将はゆかたを右前に直してやり、「生きているんだから幸せにならなければ駄目ね」と優しく囁きます。
命みじかし、恋せよ乙女の結末
翌朝、カールが目を覚ますと、女将が調理場で大量のおにぎりを作っていました。翌日に控える祭りで出すものだと聞いたカールは、おにぎり作りを一緒に手伝います。女将はユウがすでに亡くなっていることをカールに打ち明けます。女将の娘であるユウの母は入水自殺をしており、娘のユウもまた精神を病み、母と同じように海に身を投げたというのです。
祭りが開かれる翌日は、ちょうどユウとユウの母の命日でした。その夜、幻想的な灯りに照らされた庭園で女将とカールは、ユウとユウの母の幻影を見ます。女将は今年も戻ってきてくれたと嬉しそうに呟きます。カールは女将に制止されながらもユウの後を追おうとしますが、結局見失ってしまいました。
翌日、ユウの死を受け入れられないカールは、祭りの喧騒の中で必死に彼女を探し続けます。そして疲れていつのまにか浜辺で眠りこんでしまいました。目覚めてみると隣に古びたピンク色の受話器が落ちていました。受話器のコードは海の中まで続いています。受話器に向かってユウと呼び掛けると、ユウが海の中から姿を現しました。
カールはユウに導かれるように海の中へ入っていき、二人はキスを交わします。しかしやがてユウがカールを海に沈めようとします。ユウは寂しさのあまりカールを道連れにしようとしていました。必死にもがき、なんとか海から這い上がったカールは、もう少しこの世にいたいんだと告げます。カールは生き続ける道を選びました。
ユウは「人生を楽しんで、また会える日まで」と呟いて、海の中へと消えていきました。女将は広縁に腰かけ、スノードームを見つめながら、ゴンドラの唄を口ずさみ続けます。
以上、映画「命みじかし、恋せよ乙女」のあらすじと結末でした。
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