あの日の指輪を待つきみへの紹介:2007年イギリス,カナダ,アメリカ映画。空軍の兵士だった恋人を亡くし、彼の親友と結婚したアメリカ人女性。恋人との思い出の指輪が50年ぶりに見つかったと知らされた女性は、長く胸に秘めてきた青春期を回想し始めます。アメリカと北アイルランドを舞台に指輪に秘められた悲恋をドラマチックに描きあげた恋愛映画です。
監督:リチャード・アッテンボロー 出演者:シャーリー・マクレーン(老年期のエセル・アン)、クリストファー・プラマー(ジャック・エッティ)、 ピート・ポスルスウェイト(マイケル・クィンラン)、ミーシャ・バートン(若き日のエセル・アン)、 スティーヴン・アメル(テディ・ゴードン)、ネーヴ・キャンベル(マリー・ハリス)ほか
映画「あの日の指輪を待つきみへ」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「あの日の指輪を待つきみへ」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「あの日の指輪を待つきみへ」解説
この解説記事には映画「あの日の指輪を待つきみへ」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
あの日の指輪を待つきみへのネタバレあらすじ:起
舞台はアメリカ。老女エセル・アンは長年連れ添った夫チャックを亡くしました。葬儀に参列したチャックの親友ジャックやエセル・アンの娘マリーはチャックの死を悼み、伴侶を亡くしたエセル・アンを気遣います。しかしエセル・アンは夫はいい人だったと呟くばかりで、チャックに対する愛を語ることはありません。葬儀が済むとエセル・アンは夫婦の寝室からマリーの部屋へと移り、閉じこもってしまいます。エセル・アンの胸に蘇ってくるのはチャックと過ごした日々ではなく、最愛の恋人と過ごした若き日々の思い出でした。場所は変わって北アイルランドの小さな町ベルファスト。ブラックマウンテンと呼ばれる丘で老人マイケル・クィンランは長年に渡り墜落機の残骸を掘り起こす作業をしています。そこに地元の少年ジミーがやってきてクィンランに何をやっているのか尋ねます。クィンランは第二次大戦時この丘にアメリカの爆撃機B-17号機が墜落したことをジミーに語って聞かせます。ジミーにはクィンランが墜落機に固執する理由が分かりませんでしたが、一緒に彼の作業を手伝い始めることになりました。
あの日の指輪を待つきみへのネタバレあらすじ:承
1941年ミシガン州のブラナガン。若きエセル・アンは空軍の士官学校に通うテディ、ジャック、チャックという三人の青年と仲良くなります。三人は美しいエセル・アンに恋をしますが、エセル・アンが選んだのは貧しくも実直な青年テディでした。やがて二人は深く愛し合うようになり、テディは持ち金をはたいてエセル・アンと暮らすための家を建てます。テディはここをジャックやチャックも気軽に遊びに来れる友愛会館のような場所にしたいと考え、四人は自然とこの家に集まるようになっていきます。テディは二人の名前を彫った金色の指輪をエセル・アンに贈り、彼女との結婚を誓います。しかしやがて戦争が激化、爆撃手になる道を選んだテディが戦地に赴く日がやってきます。テディとエセル・アンはジャックやチャックの立ち合いのもと結婚式を行います。そしてエセル・アンは戦地で自分を思い出して欲しいと彼に貰った金の指輪をテディに託します。テディは自分にもしものことがあった場合エセル・アンのことを頼むとチャックやジャックに告げます。ある日ジミーは土の塊の中から金色の指輪を見つけます。指輪の裏側にはテディとエセル・アンの名前が彫られていました。テディの連絡先を辿ったジミーがエセル・アンに電話をかけ、指輪が見つかったことを告げますが、突然の知らせにエセル・アンは動揺を隠すことができません。
あの日の指輪を待つきみへのネタバレあらすじ:転
テディが戦地に赴いてからもエセル・アンは彼の帰りを待ち続けましたが、やがて彼が戦死したことを知らされます。失意のエセル・アンは負傷して戻ってきたチャックを世話したことが縁となり彼との結婚に至ったものの、テディの建てた家に住み続け、今日まで彼を忘れることができなかったのでした。一方丘でIRAの遺体を掘り起こしてしまったジミーは共和国軍の武装組織から目を付けられ、町に居られなくなります。ほとぼりが冷めるまで町を離れたほうがいいと判断したクィンランはアメリカへ行ってエセル・アンに指輪を渡してほしいとジミーに頼みます。電話でジミーから事情を聞いたエセル・アンは彼をしばらく自宅に泊めてあげることにしました。しかしベルファストから見知らぬ少年が訪ねてくると知ったマリーは母の真意が掴めず、ジャックに助けを求めます。ジャックはマリーに真実を包み隠さず話すべきだとエセル・アンに告げますが、そうこうしているうちにジミーがエセル・アンの家を訪ねてきます。ジミーが指輪について語り始めたことで、マリーは母に昔愛した男性がいたことを知ります。50年ぶりに指輪を手にしたエセル・アンは突然リビングの壁を壊すと言い出します。エセル・アンはジャックやチャックに助言され、壁の中にテディとの思い出を封じ込めていたのでした。壁を剥がすとテディの写真や軍服が出てきました。母が愛してきたのは父や自分ではなく恋人のテディだったと気付いたマリーは傷つき、家を出ていきます。ジャックはテディを失ってからのエセル・アンの苦悩をマリーに語って聞かせます。そしてテディの代わりに自分が爆撃機に乗っていればと呟きます。エセル・アンを愛するジャックは今もテディの死に責任を感じているのでした。
あの日の指輪を待つきみへの結末
エセル・アンはジミーとともにベルファストを訪ね、彼の家に身を寄せます。ジミーの祖母エレノアはエセル・アンを歓迎しますが、クィンランは何故ここにやってきたのかと彼女に不躾な質問をし、ジミーを辟易させます。ある日町でIRAによる爆弾テロが起き、ジミーの家の前で兵士が命を落とします。市民達が避難していく中エセル・アンは兵士の手を握り、彼のそばを離れようとしません。エセル・アンは傷ついた兵士の姿にテディを重ね合わせていました。クィンランはエセル・アンに近づき、戦時中にテディと出会っていたことを語り始めます。1944年6月、テディを乗せた爆撃機は悪天候により墜落して炎上、その場所に居合わせたのが当時消防士をしていたクィンランでした。クィンランは瀕死のテディから指輪を恋人に渡し、自由に生きろと伝えて欲しいと頼まれたものの、さらなる爆発が襲い掛かり、指輪を取り損ねてしまいます。そのことをずっと悔やんできたクィンランは50年間ずっと指輪を探してきたのでした。テディの最後の言葉を聞いたエセル・アンは彼と決別することを決めます。エセル・アンは彼女を迎えにきたジャックとともにブラックマウンテンの丘に登ります。少女のように涙を流すエセル・アンをジャックは優しく抱きしめるのでした。
愛情という形がさまざまであるということがよく分かる映画でした。長い時間をかけて人生を共に歩んだ相手が実は最愛の人ではなかった。女性特有の視点のように特に感じました。戦争映画の姿を取っていなくても成立する世界に私は違和感を感じましたが、不条理で大きな悲劇による背景が必要だったからだと思うのです(本作は確か墜落した爆撃機の残骸の中から年を経て見つかった一個の指輪にヒントを得て制作されたフィクションのはずですから)。愛情の機微は当人同士でしか通用しない点も確かに存在するので、本作を鑑賞した全ての人がヒロインの人生に共感を持てないと私は思います。死んでしまった恋人を一途に思慕して世捨人とはならずに、生活の安定を兼ねての無難な結婚生活を選んだことは現実的ですけれども。その点では確かに後味の悪い点もあるもですね。見方を変えれば亡夫に対する裏切りと言えるところもありますので。手に入る範囲での幸せをと、私は常日頃から心掛けていますから、この思いは一層募るですよ。幻想と現実を切り離して人生を送ったという点は評価しますが。愛情とは実に様々ですな。