ベニスに死すの紹介:1971年イタリア,フランス映画。究極の美を求めた芸術家は、それに出会った時、世界中の時が止まる。イタリア映画界の巨匠ルキノ・ヴィスコンティが、美少年への想いを募らせる老作曲家の苦悩を格調高く描くドラマ。ノーベル文学賞を受賞した著名なドイツの作家トーマス・マンの同名小説を映画化した作品。グスタフ・マーラーの交響曲が全編を通して使用されており、主人公の名前の一部にもなっているが、これはトーマス・マンがグスタフ・マーラーと親交があったためである。他にも、フランツ・レハール作曲の「メリー・ウィドウ」やヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト作曲の「エリーゼのために」など、クラシックの名曲が使われている。ルキノ・ヴィスコンティ監督の代表作としても知られ、英国アカデミー賞では美術賞や撮影賞など4つの賞を受賞した。
監督ルキノ・ヴィスコンティ 出演:ダーク・ボガード(グスタフ・アシェンバッハ)、ビョルン・アンドレセン(タジオ)、シルヴァーナ・マンガーノ(タジオの母)、ロモロ・ヴァリ(ホテルのマネージャー)、マーク・バーンズ(アルフレッド)、ノラ・リッチ(家庭教師)、マリサ・ベレンソン(アシェンバッハ夫人)、キャロル・アンドレ(エスメラルダ)、フランコ・ファブリッツィ(床屋)、ほか
映画「ベニスに死す」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ベニスに死す」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ベニスに死すの予告編 動画
映画「ベニスに死す」解説
この解説記事には映画「ベニスに死す」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ベニスに死すのネタバレあらすじ:起
人付き合いが苦手な作曲家のグスタフ・アシェンバッハ(ダーク・ボガード)には、妻と一人の娘がいました。しかし娘を失い、自分の作品までも観客に批判され、それを友人のアルフレッド(マーク・バーンズ)に責められたことで、悪夢にうなされる日々が続いていたため、しばらく仕事から離れることになります。アッシェンバッハは芸術家としてのプライドが高く、「美」についてアルフレッドとよく言い争いをしていました。
静養で訪れたベニスのホテルで一人の美しい少年タジオ(ビョルイン・アンドレセン)に目を奪われます。多くの観光客で賑わうホテルの中でもひときわ目立つ美しいタジオに一瞬目が奪われたアッシェンバッハ、その時彼の中で特別な感情が芽生えたことにアッシェンバッハ本人はまだ気づいていませんでした。
タジオは家族と共に休暇でホテルに滞在していました。レストランでの食事中も、窓を開けると見える海岸でも、気持ちのよい潮風が吹くビーチでも、アッシェンバッハはタジオを探してしまう。そんな中、タジオとエレベーターで再会した時、タジオは自分が見つめられていることを知ってか知らずか美しい笑みを浮かべながら振り向き、見つめ合ったアッシェンバッハは自分が彼を愛してしまっていること、圧倒的な美の魅力の虜になってしまっていることを感じ取ります。
ベニスに死すのネタバレあらすじ:承
静養のためにベニスのホテルに訪れていたアシェンバッハでしたが、このホテルは家族連れや老人たちを含む多くの観光客が訪れており、とても静かな環境とは言えません。さらに暑い気候も重なったため、アッシェンバッハは静養をやめてミュンヘンに帰ることにします。
しかし、手違いで別の場所に荷物が送られてしまったため、不本意ながらもベニスにしばらく滞在することになりますが、泊まっていたホテルに戻ると、まだタジオがいました。アシェンバッハは彼との再会をひそかに喜びます。
ベニスに死すのネタバレあらすじ:転
ある日、海外の新聞を読んでいると、ベニスでの感染症に注意するようにと警察からの勧告が記されていました。心配になったアッシェンバッハはホテルの支配人(ロモロ・ヴァリ)を問い詰めますが、毎年のことだと言って取り合ってくれません。
街中は消毒剤が撒かれ、酷い悪臭を放っています。アシェンバッハは消毒の真実を知りたいと、思い切って両替所にいた職員の男性に話しかけました。男性は、インドのガンジス川からのアジア・コレラが流行しており、季節風が強いベニスはとても危険なためコレラ菌が入って来やすく、さらに既に死者も出ていると彼に教えます。アッシェンバッハは男性から、交通が閉ざされるのも時間の問題と、すぐにベニスから出るよう促されるのでした。
ベニスに死すの結末
アシェンバッハは自分の考える「美」を体現したかのようなタジオが気になって仕方ありません。アシェンバッハはタジオの母親(シルヴァーナ・マンガーノ)に、すぐに家族とベニスから離れるよう警告します。自分の身よりもタジオの安否を心配するアシェンバッハは「気をつけたほうが良い」とタジオに伝えますが、これが最初で最後の二人の会話となってしまいます。
アシェンバッハは美容院へ行き、タジオに思いを伝えようと散歩に出ていた家族を追いかけ、夜のベニスを彷徨い歩きます。しかし、アシェンバッハはもともと病弱な体をしていたため、コレラに感染してしまいました。
段々とホテルからは観光客がいなくなっていき、タジオと家族もホテルを発つ日を迎えます。アッシェンバッハは自らの最期が近いことを悟ります。髪を整え、化粧をして、タジオが遊ぶビーチへ誘われたアッシェンバッハは、信じられないほど美しい光景を目の当たりにします。
沈む太陽が映る海面を背景に、手を軽やかに腰に当て、緩やかに水平線を指すタジオの美しさに飲み込まれてしまう。究極の美に感動しながら、コレラに侵されていたアシェンバッハはそのまま帰らぬ人となってしまうのでした。
以上、映画「ベニスに死す」のあらすじと結末でした。
「ベニスに死す」感想・レビュー
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先の感想を述べている匿名さんは何もわかっちゃいません。
私はこの映画をを見ると美しかった元彼を思い出します。
内向的な繊細さを持つ美少年です。魂はその人の姿、眼に間違いなく現れます。監督の良し悪しは置いておいて、ビョルンがいなければ成り立たない作品でした。
あのような目をしている少年はまず俳優など目指さないため、彼が祖母に言われてオーディションを受けたという事に納得しました。
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今BS1でこの映画を放送しています。57歳の今、この映画を初めて理解できた気がします。私は異性愛者ですが、美しい存在にどうしようもなく惹かれた若い日々を思い出しました。そして今、自分がもう若くなくて、その存在に手すら触れられない自分になっていることも思い知らされました。
美しい存在自身も年老いて変わっていきます。この映画の主人公の少年も、この映画以降は見る影もなくなっていったことを私たちは知っています。瞬間の美だからこそ、いつまでも眺めていたい。永遠でないことを知りながら、愛でていたい。人間の愚かさ、思いの儚さ、そして、老いてなお自分の愛するものに愛されたいという人間の生きていく事への厳しさ。アシェンバッハはベニスで息絶えることでようやく、自分の思いを清算できたのです。 -
イタリア映画は理屈ぽくも面白いですね❗
71歳の私ですが、もしタッジオのような美少年に出会ってもアッシェンバッハのような恋心が芽生えるでしょうか〜(笑)
美少年は容姿だけのもの、この映画は美を追及するに至り、美少年に恋が芽生える過程をルキノ・ヴィスコンティが描きたかった世界でしょうか?
ラストの浜辺の描写はタッジオへの思いをスクリーンいっぱいに音楽と彼の最期を美しくもはかなく驚嘆させられるこの映画の見所でも有りますね⤴️
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先日NHKBSで初めてこの映画を観ました。
上映当時観ていたら単純に美少年に恋をしていたかもしれないけれど、今は老作曲家の苦悩や恋心を押しはかれてしまう自分がいました。
セリフが少ない分音楽と映像に引き込まれました。上の作品紹介で間違いがあります。
ベートーヴェン作曲のエリーゼの為にです。 -
映画において物語性、脚本の良し悪しなどは重要な要素ではある。
しかしヴィスコンティの作品、特にこの作品はそれを度外視しても十分に名作である。例えばカット割り、ビョルン・アンデレセンの演技、音楽。
それらが規則性のない水の流れのように絡み合い、かつ不安定な状態で
進んでいく。初めてこの映画を観たとき、映画という媒体の奥深さを知り、同時に1970年代という時代の複雑さ、難解さを知った気がした。 -
新型コロナウイルスによる疾患や死、これらが2020年代に与えたショックは、映画が描いた時代風景と相似している。この映画は、私が20代に見た時に、なんだかすっきりしない陰影を感じ、よく理解しがたかった。今定年退職後、非常勤の仕事についている境遇で振り返ると、なんとなく理解できる範囲が広がってきた感じがする。私がそうだったように若い者には、この映画は、分からないのだ。映像美、視聴後続く強い印象、解決感のない気だるさ、貴族的な孤独感、こうした特徴を備えており、やはり人の心に残る名作というべきであろう。
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私は芸術家でも感性が鋭いわけでもなく年齢だけはアッシェンバッハぐらいです。知人女性の一人息子(小学生高学年)さんが綺麗な少年です。
演劇を学んでおられてテレビにも時々出演されています。
彼から影響を受けた自分がいます。主人公の感情に近いものを感じ取れます。彼の成長を見守っている私です。 -
主人公のグスタフ・アッシェンバッハは、今の概念で言うと、完璧なストーカーである。しかも相手や周りの人に気づかれても、それを隠そうともしない。そしてストーカーのその対象はというと、まだどう見ても十代の美少年なのだ。
当時はそれ程アッシェンバッハに奇異の目を向ける観客は多くなく、むしろ話題性を持って肯定的に受け入れられたのだと思う。
私がリバイバルを映画館に観に行った時などは、大勢の女子高生が来ていて、美少年のタジオが画面に出てくると、カメラ片手にキャーキャー騒ぐ始末であった。
しかし今の時代、アッシェンバッハに共感できる観客はそう多くないだろう。彼の気持ちは分かるとしても、彼の行動を肯定することは出来ないと思う。
隔世の感ひとしおである。そういえばこの話、ベニスに疫病が蔓延する。コレラらしい。医学も科学も今のように発達していないこの頃、人々はどれほど不安だっただろう。
テーマ曲に使われたマーラーの交響曲第5番第4楽章はこの映画に実に合っていて、感動を盛り上げる。
言い遅れたが、アッシェンバッハはマーラーをモデルにしていて、この映画によって、マーラーが一躍脚光を浴びたようだ。
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レンタルDVDで観ました。
音楽と、ベニスのビーチに佇む少年タージオの姿は美しいです。
が、台詞のやり取りが少ない・ストーリーがゆっくり進むせいか…?
何度も寝落ち&レンタル期限1週間で何とか観終わりました。
作曲家のオジサンが美少年の虜になった挙げ句、コレラに感染して死ぬ話…
と言ってしまえば、それまでなのですが主人公アッシェンバッハがタージオの為?に若作りする様には、ただただ口ポカーン(゚Д゚)
最後…せっかく白塗りした顔が汗と脂で崩れ、白髪染めが流れ、タージオを見つめながら死にゆく主人公の姿。
惨めなのか、哀れなのか、はたまた幸せなのか…?理解に苦しむ。
絶世の美少年タージオを演じたビョルン・アンドレセン君を拝めたのは良かったです。
偉大な芸術家は見た目が醜いとされるものに美を見出すと聞いた。
だからこの映画には何の感動も受けない。見た目の固定観念にとらわれすぎの映画。