エル・ドラドの紹介:1966年アメリカ映画。監督ハワード・ホークスと主演ジョン・ウェインのコンビによる“テキサス三部作”の第2作(第1作は『リオ・ブラボー』(1959年公開)、第3作は『リオ・ロボ』(1970年公開))となる西部劇です。ハリー・ブラウンの『The Stars in Their Courses』を原作に、テキサスの町エル・ドラドの水場の利権を巡る争いを描きます。
監督:ハワード・ホークス 出演者:ジョン・ウェイン(コール・ソーントン)、ロバート・ミッチャム(J・P・ハラー)、ジェームズ・カーン(アラン・ベディリヨン・トレハーン / ミシシッピ)、シャーリーン・ホルト(モーディ)、アーサー・ハニカット(ブル・トマス)、エドワード・アズナー(バート・ジェイソン)、ミシェル・ケリー(ジョセフィーン・“ジョーイ”・マクドナルド)、クリストファー・ジョージ(ネルソン・マクラウド)、ポール・フィックス(ミラー医師)、R・G・アームストロング(ケヴィン・マクドナルド)ほか
映画「エル・ドラド(1966年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「エル・ドラド(1966年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
エル・ドラドの予告編 動画
映画「エル・ドラド(1966年)」解説
この解説記事には映画「エル・ドラド(1966年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
エルドラドのネタバレあらすじ:起
名の知れたベテランガンマンのコール・ソーントン(ジョン・ウェイン)は、テキサス新興牧場主バート・ジェイソン(エドワード・アズナー)に用心棒として雇われ、エル・ドラドの町へとやってきました。コールはこの町の保安官である旧友のJ・P・ハラー(ロバート・ミッチャム)と再会を果たしますが、この土地の古くからの牧場主であるケヴィン・マクドナルド(R・G・アームストロング)が持つこの地で唯一の水場の権利をジェイソンが狙っており、ハラーはコールがジェイソン側につくのなら戦わなければならないと告げてきました。ジェイソンから何も説明を受けていなかったコールは仕事から手を引くとハラーに約束しました。
元恋人で娼婦のモーディ(シャーリーン・ホルト)とも再会したコールはジェイソンに報酬を返して仕事を断りましたが、マクドナルドは息子ルーク(ジョニー・クローフォード)にコールの見張りを命じていました。コールは帰り道、ルークに岩の上から狙撃され、反撃して怪我を負わせました。コールはルークの手当てをしようとしましたが、助からないと思ったルークは拳銃自殺を遂げてしまいます。コールはマクドナルドの元にルークの遺体を引き渡し、事情の説明を受けたマクドナルドは納得するものの、マクドナルドの娘ジョーイ(ミシェル・ケリー)はコールを逆恨みし、帰路についたコールを待ち伏せして狙撃しました。背骨にまで銃弾が達するほどの重傷を負ったコールは町のミラー医師(ポール・フィックス)治療を受け、回復すると銀鉱山の町ソノラへと旅立っていきました。
エルドラドのネタバレあらすじ:承
7ヶ月後、ソノラにいたコールは酒場で友人の敵討ちに挑む青年“ミシシッピ”ことアラン・ベディリヨン・トレハーン(ジェームズ・カーン)と遭遇、成り行きからミシシッピを助けることになります。その際、酒場にいた凄腕ガンマンのネルソン・マクラウド(クリストファー・ジョージ)はコールとミシシッピに酒をおごり、自分は7ヶ月前にコールが断ったあのジェイソンに雇われていることを明かしたうえで手を組もうと持ちかけましたがコールは断りました。しかし、マクラウドからハラーは酒と女に溺れて今や腑抜けになっていると聞いたコールはエル・ドラドへ向かうことにし、ミシシッピも同行することになりました。ミシシッピはナイフが得意な反面、拳銃の腕前が全く下手なことから、彼を心配したコールは馴染みの銃器店でショットガンを買い与えました。
エルドラドのネタバレあらすじ:転
エル・ドラドに到着したコールはモーディからハラーの事情を聞き、彼が本当に娼婦にのめり込んだ末に捨てられ、酒浸りになってしまったことを知らされました。コールとミシシッピは保安官事務所に向かい、酔っ払って牢屋に入れられたハラーと対面、薬を飲ませて強制的に酒を絶ち切らせました。我に返ったハラーはジェイソンとマクラウドにプライドを傷つけられ、改めてマクドナルド側につくことを決意しました。
ちょうどその頃、マクドナルドの息子がジェイソンの部下に襲われ、コールとミシシッピ、ハラー、保安官補のブル・トマス(アーサー・ハニカット)を連れて教会に逃げ込んだ襲撃犯たちを追い詰め、銃撃戦の末に襲撃犯たちを射殺、襲撃の首謀者であるジェイソンを逮捕しました。保安官事務所に駆け付けたジョーイはジェイソンを逮捕したコールたちに感謝、7ヶ月前のわだかまりが解けました。そしてコールとミシシッピは保安官補に任ぜられ、町の見回りへと出かけました。その時、コールとミシシッピはジェイソンの部下と遭遇して銃撃戦となり、駆け付けたハラーは足を撃たれてしまいます。ハラーはミラー医師の治療を受け、ミラー医師はコールに専門医を紹介して一連の事件が解決した後に古傷を手術させることにしました。
エルドラドの結末
モーディの知らせを受けたコールとミシシッピがジェイソンの部下を追って酒場に向かいましたが、コールはかつてジョーイに撃たれた時の古傷が痛み出し、マクラウドに捕まってしまいました。マクラウドはコールとジェイソンの身柄の交換を要求、ハラーは受け入れざるを得ませんでした。コールはハラーの行動を非難しましたが、ジェイソンはマクドナルドの息子ソール(ロバート・ロスウェル)を捕らえ、解放条件としてマクドナルドが有する水場の権利の引き渡しを要求してきました。
コールやハラー、ミシシッピ、ブルはジェイソン一味との決着を付けるため彼らがいる酒場へと向かい、コールが囮となって正面から突入、マクラウドと交戦している隙にハラーやミシシッピが裏口から突入しました。ミシシッピは見張りを倒し、コールはマクラウドを倒しましたが、ミシシッピの撃った流れ弾がコールの足に当たり、怪我を負ったコールが銃弾の補充に手間取っている間にジェイソンがとどめを刺そうとしましたが、駆け付けたジョーイがジェイソンを射殺しました。
ミシシッピとジョーイはすっかり恋仲となりましたが、コールはモーディから愛想を尽かされてしまいました。ハラーはブルと酒を酌み交わして労をねぎらい合い、コールとハラーは共に松葉杖をつきながら平和が戻ったエル・ドラドの町を歩いていました。
以上、映画「エル・ドラド」のあらすじと結末でした。
“映画史上永遠不滅の巨匠ハワード・ホークス監督の西部劇三部作の二作目にあたる、ホークスファン必見の映画 「エル・ドラド」”
西部劇はもとより、コメディ、ハードボイルド、アクション、ミュージカルと、あらゆるジャンルで数々の名作、傑作を生みだした、映画史上永遠不滅の巨匠ハワード・ホークス監督。
彼が元祖・西部劇の大スター、ジョン・ウェインとコンビを組んで放った、「リオ・ブラボー」(一作目)、「リオ・ロボ」(三作目)と並ぶ”西部劇三部作”の二作目にあたるハワード・ホークスファンなら必見の映画です。
“破れ帽子に赤いシャツ”、これは、ハワード・ホークス監督の名作「リオ・ブラボー」の謳い文句ですが、ホークス監督の”西部劇三部作”の2作目に当たる、この「エル・ドラド」でも、主演のジョン・ウェインは赤いシャツを着て現われます。この赤シャツばかりでなく、人物設定にも共通点があるのです。
主人公は四人。ウェイン扮するガンマン、ロバート・ミッチャム扮する保安官、アーサー・ハニカット扮する保安官助手の頑固じいさん、それにナイフ投げのうまい若者ジェームズ・カーン、この四人の男が二派に分かれた牧場主の水を巡る利権争いに巻き込まれ、正義を守って悪玉の新興牧場主一味と、壮烈な戦いを繰り広げるという物語です。
ガンマンも保安官も銃の名手ですが、保安官はアル中で、ガンマンの方は背中に弾丸が入っているため、時々、発作を起こして右半身が不随になるのです。
つまり、銃の名人が二人も揃っていながら、二人三脚なのです。深い心の傷を、無言で分かち合う二人の男が、孤立無援の中、悪玉の新興牧場主一味に戦いを挑んで行くのですが、ロバート・ミッチャムをアル中から立ち直らせたジョン・ウェインが、今度は古傷のせいでミッチャムの足を引っ張る、といったくだりが、いかにもホークス監督らしく、この映画の風変わりな魅力になっているのだと思います。
ガンマンと保安官が、教会へ逃げ込んだ三人の殺し屋を追い詰める決闘場面が特に面白く、この三人は教会のてっぺんの鐘堂に立て籠もって、立て続けに発砲します。
するとガンマンはここで一計を案じ、鐘に向かって連続的に撃ちまくるのです。
ゴーンゴーンと鳴り響く鐘の音に、耳をつんざかれて三人が逃げ降りるところを、脱兎のごとく教会へ飛び込んだガンマンと保安官が、見事な早撃ちで二人を仕留め、残った一人は、悪玉派の経営する酒場へ逃げ込みます。
その後を追いかけたアル中の保安官が、ピアノの陰に隠れている敵を察知して、抜く手を見せぬ早わざで撃ち倒し、悪玉一味の度肝を抜く場面が爽快で小気味よく、スカッとします。
これぞ、まさしく西部劇の醍醐味ですね。
そして、ラストの修羅場は、ユーモアを加味して、極めて豪快に描かれています。
発作のため右手のきかないガンマンは、左手にライフルを持って荷馬車に乗り、敵陣に殴り込みをかけます。
保安官、頑固じいさん、若者の三人は、裏口から攻め込んで、敵を挟み撃ちにしようという作戦に出ます。
早撃ちの名人である敵の用心棒と対決したガンマンは、荷馬車から転げながら、油断していた用心棒の体に弾丸をぶち込むのです。
このシーンは、左手で巧みにライフルを操るジョン・ウェインの風格さえ感じられ、やはり彼は”西部劇の王者”だなとつくづく思います。
虚ろな目を向けて、「俺をだまし討ちにしたな」と用心棒は呟きます。
「かんべんしろ」とわびるガンマン。その言葉を聞いて、「お前さんの左手に負けるとはな—-」と苦笑しながら用心棒は息絶えます——-。
とにかく、セリフは洒落ているし、勝者からも敗者からも”西部男の心意気”が感じられて、非常に爽やかな気分になります。
こういう、男くさいヒーローの渋い味わい、男勝りのヒロインの登場、そして骨太でシャープな映像と語り口のうまさなど、どれをとっても、まさにハワード・ホークス監督の独壇場で、ホークス映画の醍醐味を目一杯堪能させてくれるホークスファン必見の映画だと思います。