死刑台のエレベーターの紹介:1957年フランス映画。ルイ・マルが25歳で作ったサスペンス映画。劇映画としてはデビュー作となる。完全犯罪の計画がエレベーターが停止することによって狂ってゆく様子をカットバックを駆使して描く。
監督:ルイ・マル 出演:モーリス・ロネ(ジュリアン・タヴェルニエ)、ジャンヌ・モロー(フロランス・カララ)、ジョルジュ・プージュリイ(ルイ)、ヨリ・ベルタン(ベロニク)、ほか
映画「死刑台のエレベーター」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「死刑台のエレベーター」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
死刑台のエレベーターの予告編 動画
映画「死刑台のエレベーター」解説
この解説記事には映画「死刑台のエレベーター」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
死刑台のエレベーターのネタバレあらすじ:起
ジュリアン・タベルニエと、フロランス・カララ、それぞれの顔が画面に大写しになり、電話で「愛している」と言い合います。二人は不倫の仲でした。フロランスの夫は未開地開発会社の社長。インドシナとアルジェリアで戦った元兵士であるジュリアンはその会社の技師です。愛し合ってどうしようもなくなった二人は、邪魔な夫を殺害するつもりでした。土曜日、社員が退社した後、ジュリアンはロープを使って社長室のベランダに忍び込みます。そこにいた社長を拳銃で撃ち殺したあと、その拳銃を社長の手に握らせます。
死刑台のエレベーターのネタバレあらすじ:承
それはフロランスから渡された社長自身の拳銃でした。こうして自殺に見せかけるつもりなのです。再びロープを使って階下の自分の部屋に戻るジュリアン。そしてエレベーターで1階に降り、会社の外に停めてあった自分の車に乗り込みますが、ふと目を上げると、ベランダに犯行に使ったロープがぶら下がっています。これでは自殺に見せかけるプランはオジャンです。あわててジュリアンはビルに入ってエレベーターに乗り、再び自室に行こうとしますが、そこでビルの管理人がもう全員帰宅したと思って電源スイッチを切ってしまいます。エレベーターは上階へ向かう途中で停止。事情を察知したジュリアンは愕然とし、必死に外へ出ようとします。
死刑台のエレベーターのネタバレあらすじ:転
一方、ビルの前に停めてあるジュリアンの車に若いヤクザ風の男ルイが目をつけます。そして、彼女である花屋の娘ヴェロニクを誘うと、一緒に勝手にジュリアンの車に乗り込み、パリ郊外へとドライブを始めます。フロランスはカフェでジュリアンからの電話を待ちますが、エレベーターに閉じ込められている彼には連絡の取りようがありません。その目の前をルイの運転するジュリアンの車が走ってゆき、フロランスは自分が捨てられたかのかと思い、街を彷徨い始めるのです。一方ルイとヴェロニクはモーテルに入り、ジュリアン・タベルニエ夫婦の名前でチェックイン。隣室のドイツ人夫婦と食事をします。車にあったジュリアンのカメラで一同を撮影するルイ。一晩経って、夫婦の車に惹かれたルイはそれを盗もうとしますが、感づかれたため、夫婦ともどもジュリアンの拳銃で撃ち殺してしまいます。ルイたちはパリに戻り、睡眠薬で自殺しようとしますが失敗。
死刑台のエレベーターの結末
警察は宿帳の名前から、ジュリアン・タベルニエを指名手配。そしてやっとエレベーターから脱出できたジュリアンは新聞を見て、自分が犯人に間違えられていることを知ります。通報されて連行されるジュリアン。ルイは自分の姿がカメラのフィルムに映っていることを思い出し、それを取り戻すために再びモーテルへ。しかし、警察はすでにフィルムを現像し、ルイたちの前のコマにジュリアンとフロレンスが睦まじく映っている姿から、社長殺しが誰だったか察知するのでした。
以上、映画「死刑台のエレベーター」のあらすじと結末でした。
この、ヌーベルヴァーグの先駆的な作品を作った監督は、弱冠25歳のルイ・マル。
私がこの映画を見たのはもう40年も前のこと。しかしだからといってこれを読む気を失わないでいただきたい。
だって、私は40年も経っても、まだ、その最初のカットを鮮明に覚えている。
それは、人妻ジャンヌ・モローのアップだ。電話で話している。話の相手は恋人のモーリス・ロネ。この映画のモーリス・ロネは最盛期にあったのではないか、と思うほど、実にいい男なのだ。
「愛してる」
これからモーリス・ロネはジャンヌ・モローの夫を殺すのだ。
そしてそれは夫の自殺に見せかけてまんまと成功する、と思いきや、モーリス・ロネはそのあとビルのエレベーターに閉じ込められてしまう。
「殺害はうまくいった。だけど、エレベーターが止まって動かない」
今なら携帯でひと言ジャンヌ・モローに連絡すれば済むところだし、ジャンヌ・モローもなんらかの方法でモーリス・ロネを助け出すことだってできたかもしれない。
しかし、時は1957年である。
ジャンヌ・モローは待てども待てども恋人からの連絡がないため、自分は捨てられたのか、と不安になる。
夜のカフェテラスに座ったり、酒場を、恋人を探して歩いたり、雷鳴の轟く雨の中、ジャンヌ・モローはパリの街をさまよい歩くのだ。
この、人妻の夜の彷徨はとても印象的だ。
そしてここで、ひとつ特筆すべきことがある。
それは、こうしたシーンで流れるジャズの調べである。
マイルス・デイビス(私はこの方をよく知らない)というジャス・トランペッターが、事前の打ち合わせも練習もなく、この映像を見ながら即興で吹いたという全編に流れるトランペットの調べは、ジャンヌ・モローのアンニュイな表情を何倍にも引き立てる。
ルイ・マルという人は、音楽のセンスが抜群なようで、この後の「恋人たち」ではブラームスを使い、「鬼火」では、まだその頃見向きもされていなかったエリック・サティの「ジムノペディ」を使って映画を盛り上げた。
付け加えるなら、あと撮影はアンリ・ドカエという人だ。この人は、のちに「太陽がいっぱい」や「シベールの日曜日」などを撮った名カメラマンである。
さて、ところで、これはサスペンス映画で、最初に殺しがあり、そのあとはさまようジャンヌ・モローばかりが登場するわけではない。二転三転するドラマがあり(これからご覧になる方のために、そのドラマはあえて書きません)、その最後に、2人はどうなるのか?