複製された男の紹介:2013年カナダ、スペイン映画。大学で教員をしているアダムは薦められた映画に自分と瓜二つの役者が出ていると気づく。顔どころか声や傷跡までも瓜二つな彼はいったい何者なのか?
監督:ドゥニ・ビルヌーブ 出演:ジェイク・ギレンホール、メラニー・ロラン、サラ・ガドン、イザベル・ロッセリーニ、ジョシュ・ピース、ティム・ポスト、ケダー・ブラウン、ダリル・ディンほか
映画「複製された男」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「複製された男」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
複製された男の予告編 動画
映画「複製された男」解説
この解説記事には映画「複製された男」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
複製された男のネタバレあらすじ:自分とそっくりの役者がいる?
紳士が女を鑑賞するいかがわしい会員制クラブに招かれた主人公。彼の前に置かれた銀の皿の蓋を開けると中から出てきたのは手のひらほどもある蜘蛛。これが夢なのか妄想なのかは判然としない。
トロントの大学で歴史上の独裁者についてその支配方法を講義するアダム。淡々とした彼の講義に来る生徒は少ない。大学と恋人メアリーのやってくる部屋の往復をするだけの日常に変化は無いはずだったが、ある日、教授仲間に映画を勧められる。レンタルショップで借りたそのDVDを恋人が寝ている間にパソコンで見ると、その映画のワンシーンが夢の中に出てきた。それはホテルのレセプションのシーンで、ホテルスタッフをしている役者が自分にそっくりの人物だった。
起きて確認すると夢ではなくエンドロールからホテルスタッフ役をピックアップして画像を検索すると、その中の一人、ダニエル・センクレアという役者が自分に瓜二つの人物だった。ホームページの宣材写真と右半分の破られた写真と見比べて見てもそっくりだった。そして問い合わせ欄からその役者の所属する事務所を割り出した。
複製された男のネタバレあらすじ:本人に間違われるほどそっくり?
事務所のあるビルを訪れると、守衛に呼び止められ事務所は今日はお休みで誰もいないと告げられる。ダニエルではなくアンソニーと呼ばれたが、アダムの髭を役作りかと聞いてくるので、やはり自分にそっくりの役者だと思っているらしい。脇役ばかりの三流役者で仕事も多くはなく、守衛も半年振り以上だと言った。
何とかここを訪れた理由をつけようと、郵便物が届いていないか確認しに来た事にすると、偶然にも守衛から封書を渡された。車の中で開いて見ると中にはもう一つ別の住所の書かれた親展の封筒が入っていた。その住所に向かうと、高層マンションで、電話番号を調べてかけてみると、知らない女が電話を取った。
彼女はアダムの声をアンソニーだと思っていて話をしようとするが、アダムは名乗れないまま役者のダニエル・センクレアと話がしたいと告げるが冗談かイタズラだと思われてしまう。何度か電話をかけてみると、そっくり役者が電話口に出たので興味本位で会いたいといってみるとやはり切られてしまう。
ダニエル・センクレア、ことアンソニー・クレアはアダムからの電話を自分のファンからだと妻に言う。身重の間近の妻へレンは、彼の浮気を疑っていて浮気相手の旦那からの抗議の電話ではないのかと疑う。夜中、アンソニーはアダムの名前を検索にかけてみると、大学の講師の欄に行き当たった。
同じくアダムからの電話を訝しく思っていたヘレン、アンソニーが残した手がかりを元にアダムの大学へ向かう。アンソニーは妻に内緒でアダムにコンタクトを取り、会う場所と日時を指定する、アダムは二つ返事で了承。そして休憩していたキャンパスで、ヘレンの隣のベンチに座る。アンソニーそっくりのアダム驚くヘレンに、アダムは何ヶ月か尋ねる。
夫のアンソニーなら知っているはずなので、やはり別人なのだと思うもののあまりにも似ていて驚く。構内にアダムが入ったのを見計らってアンソニーに電話をかけ、その所在を確認せずには要られなかった。
複製された男のネタバレあらすじ:アダムの恋人が気に入ったそっくり役者。
ふたたびいかがわしいクラブの夢を見たアダム。アンソニーに指定されたホテルの一室に行くと、そこは無人で真暗だった。待っていると、もう一人、アンソニーが入ってくる。対面する二人はあまりの瓜二つ加減に互いに驚く。まさか兄弟ではない。手を出すと形もそっくり。アンソニーに左胸に傷の痕はあるかと見せられて聞かれると、アダムはさすがに恐ろしくなり開けないでいた親展の封筒を置いてその場から逃げた。
アダムはもうアンソニーに会う気はなかったが、アンソニーは浮気を疑ってピリピリしている妻を巻き込まれているので、このまま終わらせる気はなく、フルフェイスのヘルメットとバイクでアダムとその恋人メアリーを尾行。彼女を気に入ってしまう。
アダムは母親に自分にそっくりな人物がいると相談する。母親は、大事な一人息子は自慢の大学教員で、三流役者ではないと否定する。
アンソニーはコンタクトを取ってきて自分の日常を乱したアダムが許せず、いつしか、自分の妻を寝取ったのではないかと勘ぐるり、因縁をつける。もちろんそんな事は無いのだが、妻を巻き込まれた怒りが収まらないアンソニーは、アダムの服と車と彼女のメアリーを一日借りると脅し、服を取替える車を借りる。
複製された男の結末:役者に脅されて入れ替わった二人は?
アンソニーはメアリーをドライブに誘った。アダムは仕方なくアンソニーのマンションに入ろうとするがセキュリティーが厳しく戸惑ってしまう。そこへ管理人と思しき人がクレアさんと声をかけ、エントランスを開け部屋まで案内してくれた。
そのエレベーターの中で、管理人は、「先日は楽しめた」「忘れられない」「またあの部屋へ行きたいが、鍵がかえられた」と、アダムにはわからない事を言ってきたので適当に相槌をうち、アンソニーの部屋に帰った。妻は、夕方プールから帰ってくる。アンソニーとアダムが入れ替わっている事には気づかないようだったが、夜、寝際に「今日、学校は?」と、尋ねてきた。アダムはそれには答えなかった。
一方アダムはメアリーをホテルに誘い込み楽しんでいたが、途中でアダムにはない結婚指輪の跡がメアリーに見つかり、誰かと問われ、触る事を拒否される。不貞腐れたメアリーをアダムの車で送る途中、痴話喧嘩を始めた二人は夜のハイウェイで事故を起こしてしまう。ひっくり返った車の窓ガラスのひびが蜘蛛の巣のように見えてきたところで、アンソニーの家にいるアダムに切り替わる。
大学に着ていくのにめぼしいジャケットを羽織ると、そこには以前返した親展の封筒が入っていた。それを開けると中から鍵だけが出てきた。おそらく管理人が言っていたものだと確信し、今夜は出かけると妻に声をかけ、出勤しようと寝室を覗くと、そこには妻ではなく壁を覆うほど大きな蜘蛛がいた。アダムが溜め息を吐き、エンドロールへ。
以上、映画「複製された男」のあらすじと結末でした。
複製された男のレビュー・感想:男の欲望と、女の象徴としての蜘蛛
大学講師アダムと三流役者アンソニーは体の傷跡までそっくり同じで別人とは思えない。母親曰く息子は一人。ここで疑問が一つ、アダムの部屋は生活感が無い。パソコンでDVDを再生していたので、気になったがテレビを初めとした電化製品が無い。一方ブルーベリーを母親の言いつけを守るように、ブルーベリーの買い置きをするアンソニー。ここで、一つの可能性として、演出上目に見えて二人いるシーンは存在するが、アダムとアンソニーが同一人物、本来はヘレンと暮らしていてメアリーと過ごしている部屋はただの逢引の部屋(ヘレンも浮気を疑っている)、職業は普段は大学教授でごくたまに脇役の仕事がある程度の三流役者の兼業している一人の人物なのではないか?と思えてくる。さらに浮気では飽きたらず、いかがわしいクラブへの出入りもしている。
ラストカットの大蜘蛛は妻のヘレンだと思うが、身重の彼女は大きなお腹の中で育んできたのは夫への疑念と嫉妬ではないか?(6ヶ月と言うにはいささか大きすぎる)そして、そんな妻に対しての答えが、アダム諦めにも似た溜め息だと仮定すると、寓意の散りばめられたこの作品を読み解く手がかりになるように思う。
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