エヴォリューションの紹介:2015年フランス,スペイン,ベルギー映画。美しい海辺の集落に住む、少年と女性たち。少年たちは海辺で遊び、病院で奇妙な施術を受ける。美しくもグロテスクなフレンチホラー。少年と女性しかいない島を舞台に、そこに隠された秘密を知る少年の姿を描く。
監督:ルシール・アザリロヴィック 出演:マックス・ブレバン(ニコラ)、ロクサーヌ・デュラン(ステラ)、ジュリー=マリー・パルマンティエ(母親)
映画「エヴォリューション(2015年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「エヴォリューション(2015年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「エヴォリューション(2015年)」解説
この解説記事には映画「エヴォリューション(2015年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
エヴォリューションのネタバレあらすじ:父親のいない町
海辺の集落に住む二コラは、ある日、海に潜っていると水死体を見つけてしまう。それは自分と同じ年頃の男の子で、腹には赤いヒトデがついていた。母親にそのことを話すと、きっと見間違えだと言われてしまい、ヒトデの生態について話されただけだった。そして、いつものように母親から薬をもらった。絵を描くことの好きな二コラは、ノートにヒトデや動物の絵を描いた。昼下がり、村の少年たちは、女性たちに連れられて海辺で遊んでいた。二コラは死体を見つけた場所へもう一度潜ってみたものの、そこには何もなかった。ただ赤いヒトデだけ持って帰り、母親が大きなコップの中にそれを入れた。
エヴォリューションのネタバレあらすじ:少年たちに施される奇妙な治療
二コラは母に連れられて外れにある病院へ行った。そこで、絵が好きであることを話すと、なんの絵を描くのかを尋ねられ、少しだけ言いよどんだ彼は生き物を描くのが好きだと答えた。注射と腹部に何かの処置をされ、一日だけ入院をすることになった。同じ頃、友達のヴィクトルも一泊の入院していた。看護師のステラは、二コラが絵を描くことに興味を持ち彼に絵を見せてくれるようにせがんだ。そこには海辺では見られない動物の他に、観覧車や都会を思わせるものがいくつか描かれていた。
エヴォリューションのネタバレあらすじ:女達の正体は?
帰宅した二コラは、夜になると、それぞれの家の母親たちがみな、ランタンを持って海へ行く事に気づいた。ヴィクトルを誘って行くと、海辺の岩陰に集まった女達が快楽にふけっている姿があった。その背中には異様な痣が一様に刻まれていた。見てはいけないものを見てしまったと察した二コラは、家へ帰り、寝ようとするが寝付けない。そこへ母が帰ってきてシャワーを浴びるのがわかった。そこをそっと覗くと、その背には、痣に見えたそれは吸盤だった。翌日、二コラは病院へ再び連れて行かれてしまい、今度はそのまま入院させられてしまう。解せない彼に、ステラは絵を描くための赤い色鉛筆を彼に渡した。夜、看護師たちは一室に集まって帝王切開の映像を見る。そして別の部屋では、手術台に横たわった男の子と、その横で何かを瓶に詰める看護師。瓶はそのまま保管庫らしき所に置かれた。そこにはたくさんの瓶に入れられた、生物と思しきものが並べられていた。この病院で何が行われているのか、自分がどうなるのか疑念を持ち始めた二コラは、絵を描いているうちに、赤い巻き毛の女性を描いているとステラにそれを「誰?」と聞かれ、「母」と名乗る女性が本当の母親ではないと気づいてしまう。
エヴォリューションのネタバレあらすじ:二コラの見た島の真実
夜、二コラは一人で病室を抜け出し病院の中を見て回った。そこで見つけたのは水槽の中に入れられたヴィクトルだった。そして、途中で行き合ったステラに教えて開けるからついてくるように言われ、病院の地下の海に繋がった場所まで連れて行かれた。そこで髪をとき服を脱いだステラの背中にも、吸盤がついていた。ステラをはじめとする女性たちはみな、人間ではなく、少年たちを苗床にして子孫を増やしている、人ならざるものだった。そして、二コラの中に植え付けた胎児を取り出す処置が行われる。生きながらえた彼が目を覚ますと、ヴィクトルと同じような水槽に入れられていた。そして、自分の身体には拳ほどの胎児が吸い付いていた。パニックを起こした二コラを助けたのはステラで、小さなボートで病院の地下から夜の海に脱出した。そして、遠く沖まで離れると、彼女は二コラの制止をふりきって一人、海に入っていった。しばらくすると。二コラの目の前には、きらびやかな街の光が現れた。
以上、映画エヴォリューションのあらすじと結末でした。
エヴォリューションのレビュー・感想
この作品はあまりにもそれが当然のように描かれているがゆえに、それが奇妙だと気づくと、雪崩のように奇妙さが噴出する。大人の女性と二次性徴前の男の子しかいない集落。病院の看護師や執刀もすべて女性。海に入るシーンがあるにも関わらずおそらく背中を見せないためか、水着の代わりに薄いワンピースを着ている。女性たちは往々にして無表情で、夜の磯部で恍惚としていた片鱗はどこにもない。彼女たちが何なのか、それは明言されていない。ただ、背中に吸盤がある事、水の中でも呼吸ができること、そして、現段階では生殖が不可能で少年たちの身体に胚芽の様な物を植え付けることで増えるという事。そして、冒頭で二コラが見つけたのは苗床として用済みになった男の子ではないだろうか。二コラが島から脱出する際、本来なら来てしかるべき追手というものは来ない。ステラもある程度の頃までボートを運ぶとそこで別れてしまう。二コラを逃がしたことはたいしたことではなく、それよりも彼女たちがこれからも少年たちを使って営みを続けていくのだろうと思うと、この話はホラーではないかといささか背中が冷える。
「エヴォリューション(2015年)」感想・レビュー
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エコールの監督による作品であり、美しさとどこか闇を感じさせる映像に引き込まれました。少年達が集められて、薄暗い病院で謎の手術を受けるという内容はかなり衝撃的でした。島に住む女性達や、少年達が体に宿されたものの正体は一体何なのか。直接言葉では語られないので見る側が想像するしかありませんが、得体のしれない不気味さと怖さ、不思議さが満ち溢れている作品だと思います。
お姉さんと少年しかいない島というワードには大変魅力を感じます。しかし閉塞された島の環境に息詰まる少年達の苦しそうな姿を見ると、楽園ではなくディストピアか何かなのではと思いました。ラストに主人公のニコラが島を離れ、ボートで新たな陸地を見つけたシーンには不思議な安堵感があります。二コラが得体のしれない美女達と住んでいた美しい島よりも、我々が住む現代社会の方が煌びやかな楽園に見えました。恐ろしくも美しい、神秘的な内容でした。