ファウストの紹介:2011年ロシア映画。ゲーテの傑作ファウストを翻案に、ロシアの巨匠ソクーロフが独自の映像美で送る新たなファウストがここに誕生する。
監督:アレクサンドル・ソクーロフ 出演:ヨハネス・ツァイラー(ハインリヒ・ファウスト)、アントン・アダシンスキー(マウリツィウス・ミュラー(高利貸))、イゾルダ・ディシャウク(マルガレーテ)、ゲオルク・フリードリヒ(ワーグナー)、ハンナ・シグラ(高利貸の“妻”)
映画「ファウスト (2011年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ファウスト (2011年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ファウストの予告編 動画
映画「ファウスト (2011年)」解説
この解説記事には映画「ファウスト (2011年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ファウストのネタバレあらすじ:魂のありかを探すファウスト
ファウストは人の魂のありかを探し、解剖に明け暮れていた。死体の始末を頼むお金も付きかけ、しかし、魂のありかは神と悪魔にしかわからないと言われてしまう。心配する同じく医者の父親に、ファウストは一睡もできず、研究が思わしくないと告白する。彼は仕方なく高利貸しの所で賢者の石の指輪を質に入れようとするが、価値がないと断られてしまう。その高利貸の店の中にあった秤が気になったファウストが、それで金の重さを測るのかと尋ねると、魂を測るのだと言った。哲学、法学、神学を修め、現在医学に励んでいるファウストはそれでも全然利口になっていないことを嘆く。そして開いた聖書のヨハネ福音書の冒頭文、「はじめに言葉があった」の一説について、助手のワーグナーと論じた。高利貸はファウストのもとを訪れ、彼を町の共同の水場で連れて行った。そこは女達が洗濯をしたり湯に浸かったりする場所だった。ファウストはそこにいた一人の美しい少女、マルガレーテに一目で恋に落ちた。ファウストは、洗い場を後にしたマルガレーテの後を高利貸と追った。ブロッケンから病人を連れてきた父は高利貸とファウストが一緒にいることに良い顔をしなかった。
ファウストのネタバレあらすじ:悲劇に巻き込まれたファウスト
高利貸に連れられ、酒場を訪れたファウスト。そこには戦争が終わり、それを喜び酒を酌み交わす兵卒たちがいた。酔っぱらった彼らと、もみ合いになってしまいそうな所を、高利貸が壁をフォークで傷つけるとそこからワインがあふれだし、みな我先にとそれを盃に注いだ。店の中が騒然とする中で、ファウストは誤って兵士の一人にフォークを刺してしまう。不幸にも彼はマルガレーテの兄だった。ファウストは、マルガレーテとその母親を経済的に支えなければという思いで高利貸の店の地下室で金を探した。そうしているうちに、マルガレーテのもとには兄の遺体が運ばれた。金を直接渡せないファウストの代わりに、心の広い善人からだと言って、高利貸がマルガレーテの母に金貨を渡した。ファウストは、マルガレーテの兄の葬式に参列した。そこで棺を森の中の墓地に埋めた後、マルガレーテと森の中を散策しながら話した。しかし母親は、嫁入り前の娘が男と着やすく男と話すのと良しとせず激怒した。ファウストと高利貸は町まで乗り合いの馬車に乗るが、マルガレーテのことで言い合いになってしまい先客にうるさいと町で下されてしまった。
ファウストのネタバレあらすじ:マルガレーテとファウストの懺悔
ファウストのもとには、弟子が講義録を売ったのでお金が入り、ファウスト教授に会いたいと人も来ていた。しかしそれよりもマルガレーテのことで頭がいっぱいのファウストは、彼女を支え助けたいと高利貸に相談した。高利貸はファウストが不信心で教会をあまり訪れないのに対し、マルガレーテは毎日通っていると話した。そして二人は町の教会に入った。高利貸は神父に寄付をしたい旨を話しながら、ファウストを聖堂の中で一人でマルガレーテを待てるように便宜を図った。マルガレーテは、食堂に母親が降りてくると、入れ替わるように外へ出て教会へ向かった。その途中で、ワーグナーが彼女を呼び止め、自分がファウストだと名乗った。そして、自分が教授である証拠にアスパラガスとたんぽぽの精油をハイエナの肝臓に混ぜたらできたというホムンクルスが入った試験管を懐から出して見せた。ワーグナーはマルガレーテに手を払われた拍子にそれを落としてしまった。中から飛び出したのは顔だけの生き物だった。懺悔室に篭ったファウストのもとにマルガレーテがやってくる。彼女は母を愛せないと告白した。その帰りマルガレーテに、兄を殺してしまった事をばらされてしまったファウストは、素直にそれを認めた。
ファウストの結末:血の契約書を交わした理由
兄を殺したことがバレたとファウストが高利貸に言い寄ると母親の口を塞いでしまおうと、高利貸は提案した。しかし、ファウストは、マルガレーテと一晩二人きりでいさせてくれるようにと頼み、契約書のサインを血で書いた。すると、高利貸は秘密の地下道を通り、悩める魂が行き着く場所へ彼を案内した。その湖のほとりにマルガレーテはいた。ファウストは彼女を抱きしめそのまま水の中へ落ちた。そして目が覚めるとマルガレーテのベッドにいた。ファウストはマルガレーテが起きる前に毛布を掛けて外へ出た。外へ出るとファウストは、古びた鎧を着せられ、高利貸に先導され天国の階段と呼ばれる岩の隙間を抜けえた。途中、ほかの男達に道を阻まれたり、岩に阻まれ鎧を脱ぎ捨て、開けたところに来る頃には、身軽になっていた。そこには間欠泉があり、地中から湧き出る水は大いに彼の興味を引いた。高利貸に魂を渡すよりも、今彼はその仕組みが知りたくて仕方がなかった。ファウストは、高利貸に名声より業がほしいと言い、高利貸を岩の間に落としその上から石を投げて動けなくした。
そして、一人氷河のほうへ向かった。
以上、映画ファウストのあらすじと結末でした。
ファウストのレビュー・感想:つきまとう「金」というキーワード
この作品はあくまでファウストを翻案としており、ゲーテの作品をそのまま映像化したわけではない。舞台こそドイツに置かれているものの、悪魔は高利貸として登場する。しかし、これはゲーテのファウストの中に込められたエッセンスを抽出したとも考えられる。人の抵当で生計を立てる高利貸は、他人の生活の上澄みをすする悪魔とも言える。また、高利貸であることでファウストと悪魔の「契約」も引っかかりなく描かれている。そして、金、戦争、欲が作中に繰り返し出てくることで、ファウストのみならず、人の誰しもが、高利貸と契約するように悪魔と契約してもおかしくないほど業深いのではないかとすら思えてくる。
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