ギャング・オブ・ニューヨークの紹介:2002年アメリカ映画。1862年、南北戦争中のアメリカ。大量に流入する移民と、戦争でイギリスから独立を勝ち取ったスコットランド移民の確執が血生臭い闘争に発展する。ニューヨークですら忘れ去られた歴史を掘り起こす長編映画。名監督スコセッシがハーバート・アズベリーの『ギャング・オブ・ニューヨーク』から着想を得て、長い時間を掛けて脚本を書き上げ、ディカプリを主演にすえ製作した。
監督:マーティン・スコセッシ 出演:アムステルダム・ヴァロン(レオナルド・ディカプリオ)、ジェニー・エヴァディーン(キャメロン・ディアス)、ビル・“ザ・ブッチャー”・カッティング(ダニエル・デイ=ルイス)、ヴァロン神父(リーアム・ニーソン)、ウォルター・“モンク”・マクギン(ジョン・C・ライリー)、ジョニー・シロッコ(ヘンリー・トーマス)ほか
映画「ギャング・オブ・ニューヨーク」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ギャング・オブ・ニューヨーク」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ギャング・オブ・ニューヨーク」解説
この解説記事には映画「ギャング・オブ・ニューヨーク」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ギャング・オブ・ニューヨークのネタバレあらすじ:序幕
教会地下の洞窟で戦いの準備に勤しむ人々がいます。時は1846年ニューヨーク、彼らアイルランド系移民で構成されたギャング、デットラビットは、独立戦争時代から続くスコットランド系ギャング、ネイティブズと、五つの通りが集まる交差点ファイブポインツの所有権を賭け、決戦に挑みます。まるで中世の民族闘争のように先移民達と新移民達は対峙し、棍棒、斧、ナイフ、肉切り包丁などを手に持ち、血生臭い殺し合いを始めました。結末は、ネイティブズのリーダー、ブッチャーが、デッドラビットのリーダー、ヴァロン神父を殺した事により、ネイティブズが勝利しました。勝者権利としてブッチャーはデッドラビットの消滅を宣言し、ファイブポインツは名実共に彼らネイティブズのものとなりました。
ギャング・オブ・ニューヨークのネタバレあらすじ:第1幕
ヴァロン神父には一人の息子が居ました。彼、アムステルダムは、父の死後孤児院に放り込まれ、16年振りにニューヨークに帰ってきました。ニューヨークは、どんどんやってくる移民達とそれを支持者として取り込みたい政治権力、南北戦争における徴兵制度に反対する市民達でごった返していました。アムステルダムが懐かしのファイブポインツに戻ると、そこは以前にも増して無秩序感が漂っていました。彼は教会地下に戻り、秘密の隠し場所からナイフを取り出します。そのナイフはかつて、ブッチャーが父を刺し殺す時に用いたナイフでした。アムステルダムはそこで、チンピラ二人絡まれますが撃退します。一人はジョニーと言い、子供の頃のアムステルダムを知っていました。アムステルダムはジョニーから、ネイティブズがこの界隈を支配している事、デットラビットの後継組織はない事を聞かされます。そして、父親の昔の仲間は皆、ブッチャーの手先になっていました。ネイティブズは政治団体タマニー党が関心を寄せるくらいに大きな組織になっていました。そして、毎年父であるヴァロン神父の命日に宴を催し、ネイティブズの功績を称えていると知り、彼はその日に父の復讐を成し遂げると誓います。アムステルダムは、ジョニーと窃盗家業を始めます。それがブッチャーの目に止まり、少しずつ彼の懐へと入って行く事ができました。アムステルダムは、道端で女スリ師であり泥棒でもあるジェニーと出会います。その女はジョニーが好意を寄せている女でした。彼女の仕事っぷりに惚れ込んだアムステルダムもまた、少しずつジェニーに惹かれて行きます。
ギャング・オブ・ニューヨークのネタバレあらすじ:第2幕
ニューヨークで大きな発言力を持つ大富豪達が視察に来て、ファイブポイントの無秩序振りを懸念します。タマニー党はそんな彼等に治安にも力を入れている事をアピールしたいが為に、ブッチャーに命じて適当な窃盗犯等を複数名、縛り首にしました。そんな夜には慈善のダンスパーティーが開かれ、そこでジェニーとアムステルダムはダンスを踊り接近しますが、彼女がブッチャーの愛人でもあると知ります。彼は全てがブッチャーの手の平にあるように思います。そんな中でアムステルダムは、様々な機転を発揮してブッチャーに気に入られ、彼の懐の奥にどんどん入って行きます。スコットランド系のブッチャーは、切りなく流入してくるアイルランド移民を嫌悪し、イギリスから独立を勝ち取った先祖を持つ自分達こそ真のアメリカ人だと誇りに思って居ました。しかしタマニー党党首はそんな彼を軽蔑するように、いずれ負けるだろうと忠告します。党首にとってアイルランド移民は、新規開拓できる票田に見えていました。そんな時、反リンカーンを題材にした演劇を観劇していたブッチャーは、アイルランド人に銃撃されます。弾は運良く急所を外れますが、暗殺者は雇い主を吐かせようとするブッチャーに苦しめられて絶命します。そんな同胞の死を隠れて嘆くアムステルダムに一人の男が近付きます。彼は父である神父が死んだ闘争で用心棒に雇われていたモンクと言う男でした。モンクはアムステルダムの素性に気付いており、無様に死んで行く同胞を見殺しにした彼を「同胞を気遣え」と叱り飛ばしました。ブッチャーの無事を祝う宴があった夜、アムステルダムはジェニーを抱きます。そのまま眠り、ふと目を覚ますとそこにアメリカ国旗を纏ったブッチャーが居ました。ブッチャーは自分と先祖の誇りを語り、そして敵でありながらも尊敬の念を抱くアムステルダムの父、ヴァロン神父の雄姿を賞賛します。アムステルダムの素性はともかく、彼を息子のように思い始めていました。部屋を出たブッチャーをジェニーすらも彼は紳士だっと評価します。アムステルダムは、闘争心、復讐心に火が付いたようにナイフ投げの練習をします。それをモンクが見守っていました。父であるヴァロン神父の命日が近付いてきています。ジェニーの事で嫉妬したジョニーはブッチャーに、アムステルダムの素性を密告します。そして、彼が復讐をする気だとも言います。アムステルダムに何かしらの怒りを感じながらも恒例になっているヴァロン神父への献杯に火酒を飲み干そうとするブッチャー、その瞬間を狙ってアムステルダムはブッチャーにナイフを投じました。しかしそれはかわされ、逆にナイフを腹に投げ込まれ、返り討ちにされてしまいます。アムステルダムはブッチャーから暗殺をする卑怯者と罵られ、焼けたナイフで顔に烙印を押され、路上に放り出されました。
ギャング・オブ・ニューヨークのネタバレあらすじ:第3幕
重傷のアムステルダムをジェニーが匿い、医者を呼んで助けます。匿っていた教会地下にモンクが尋ねてきました。彼はヴァロン神父が死んだ際、用心棒の代金として何かを抜き取っていました。アムステルダムにそれをなじるとモンクはその時抜き取ったものを見せます。それは死の直前、ヴァロン神父がわざと血を付けたかみそりでした。子供頃、何故そんな事をしたか判らなかったアムステルダムですが、今になり、血は消えないものだと言う事を悟りました。全快したアムステルダムは、ファイブポイントの広場に死んだウサギを下げ、デットラビットの再結成を意思表示します。ブッチャーはそれに怒り、かつてデットラビットの一員だった悪徳警官にアムステルダムを殺せと命令します。しかし、アムステルダムはそれを返討ちにしました。荒れ果てた教会の再建が始まり、新生デットラビットの拠点になり始めました。しかし、アムステルダムを一度裏切ったジョニーは一員に入れませんでした。ジョニーはブッチャーに拠り所を得ようとしますが、彼はジョニーを瀕死にまで痛めつけてアムステルダムがウサギを吊った場所に見せしめに晒します。ネイティブズとデットラビットの間で緊張が高まる中、タマニー党がデットラビットに近付いてきます。アムステルダムにアイルランド移民の票の取り纏めを依頼しに来たのです。アムステルダムはその代わりに新しい保安官にモンクを選ぶよう条件を出します。タマニー党は選挙で勝つ事ができれば問題ないとバックアップを約束し、保安官選挙が始まりました。結果はブッチャーの推薦する候補を破り、モンクが保安官に当選しました。ブッチャーの怒りは頂点まで達し、モンクを自らの手で殺害してしまいました。その事にアムステルダムの怒りも限界を越え、彼はブッチャーとネイティブズに決闘を申し込みました。決闘の準備を始める最中、ジェニーは血で血を洗う争いに嫌気がさし、一人街を離れる事を決断しました。引き止めるアムステルダムに、街は燃え上がり灰になると言って船に向かいました。世の中は南北戦争で多くの戦死者を出し、その補充の為に移民を片っ端から徴兵する時代に入っていました。そして、金で徴兵を逃れる金持ち達に貧困移民達の不平不満は爆発します。ニューヨークは徴兵を拒否する市民が暴徒と化し、金持ちの家を始め市内各所を襲い始めます。それを他所に、デッドラビットとネイティブズの決闘も始まろうとしていました。政府は暴力が溢れ返った街の平静を取り戻す為、遂に軍隊を投入しました。陸軍は暴徒に発砲、鎮圧行動を始めます。それは決闘の為に人々が終結したファイブポイントにも及び、デットラビットもネイティブズも軍隊に踏み潰されていきました。やがて海軍も艦砲射撃を始め、街は大混乱になります。その艦砲射撃はアムステルダムに重傷を負わせ、ブッチャーも瀕死にします。戦いの場でアメリカ人として死ねるというブッチャーに、アムステルダムは止めを刺しました。
ギャング・オブ・ニューヨークの結末:終幕
暴動は数日後に鎮圧されます。政治家達はスープとパンを配り、新たな票田の開拓を始めました。一つの時代に幕が下りたように、道路には数え切れない死体が並べられ、夜になり、死者の身元が判るように蝋燭が灯されました。ニューヨークの街並みは姿を変えかつての面影は消えてなくなりました。橋のたもとの墓場、街を作ったギャング達は忘れられたかのようにひっそりと眠ります。
19世紀半ばのニューヨーク。
アメリカ生まれの住民の組織”ネイティブ・アメリカンズ”と、アイルランド移民の組織”デッド・ラビッツ”が激しく対立していた。
この映画は、アメリカ原住民を率いるビル・ザ・ブッチャー(ダニエル・デイ・ルイス)と、彼に殺された父の復讐に燃えるアイルランド移民のアムステルダム・ヴァロン(レオナルド・ディカプリオ)の抗争と生き様を綴った一大叙事詩だと思います。
構想30年、製作期間270日、総製作費270億円以上と言われるこの映画は、ニューヨークに生まれ育った巨匠マーテイン・スコセッシ監督による、渾身の歴史絵巻だ。
CGに頼ることなく再現された大規模なセット、丁寧に作り込まれた衣装など、正確な時代考証に基づいた世界観が、この映画のビジュアルに厚みを与えていると思います。
この見事な視覚効果の甲斐あって、猥雑とした黎明期のアメリカに目が釘付けにされ、2時間40分の長尺もさほど気にならない。
ただ混沌(カオス)に満ちた時代設定とは裏腹に、明解すぎるストーリーラインを敷いたことで、ボリューム満点の映像世界に匹敵するだけの分厚いドラマが、映画の中で展開されていないように見えるのです。
ともすれば、後半などは、史実を追いかけていくだけの散漫なドラなに見えてしまうんですね。
しかし、これはマーティン・スコセッシ監督の本意ではないと思いますね。
この映画は、人間の歴史は、破壊を繰り返すことで創造されてきたという歴史観に支えられていると思います。
歴史の大きなうねりの前では、センチメンタリティなんて刹那的な感覚に過ぎないのです。
マーテイン・スコセッシ監督は、そんなことを言おうとしているのだと思います。
ラストの徴兵暴動のシーンが象徴的で、二人の積年の思いが衝突する壮絶な肉弾戦は、大砲という近代兵器によって、あっけなく吹き飛ばされてしまいます。
マーテイン・スコセッシ監督は、この映画について、「これはアメリカの試練の時代と、うら若き国家を描いた物語である。また、全てはニューヨークの王に君臨する姿は、アメリカ民主主義の実験段階が、即ち戦争状態であったことを示している。この高圧的な威容こそが、民主主義のルーツなのである」と語っています。
この映画は、それを礼賛する訳でもなければ、危惧する訳でもない。
純然たる事実として見せつけるんですね。
アメリカという国家の本質を——–。
豪華なキャストの中では、現代の最高の演技派俳優であるダニエル・デイ・ルイスの強烈な個性が突出していましたね。
さすがのレオナルド・ディカプリオも完全に食われてしまった印象ですね。
ダニエル・デイ・ルイスが演じたビル・ザ・ブッチャーは、まさしく狩猟民族の象徴であり、人間の野蛮性の権化だったのだと思いますね。