HANDIA アルツォの巨人の紹介:2017年スペイン映画。18後半から19世紀末まで、新旧体制間の緊張と混迷の欧州で、運命を翻弄されたマルティンと巨人症のホアキン。各地をまたにかけて生き抜いた実在の兄弟の波乱の人生を描く。
監督:アイトル・アレギ、ヨン・ガラーニョ 出演者:ホセバ・ウサビアガ(マルティン)、エネコ・サガルドイ(ホアキン)、イニゴ・アランブル(アルサドゥン)、ラモン・アギーレ(アントニオ)、アイア・クルセ(マリア)、ほか
映画「HANDIA アルツォの巨人」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「HANDIA アルツォの巨人」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
HANDIA アルツォの巨人の予告編 動画
映画「HANDIA アルツォの巨人」解説
この解説記事には映画「HANDIA アルツォの巨人」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
HANDIA アルツォの巨人のネタバレあらすじ:起・弟の変貌
1830年代、スペインの王位継承で内戦状態のスペイン。マルティンとホアキンの住むバスク地域も例外でなく、カルロス5世を支持するカルリスタの軍に兵士を出すように求められた父親は、兄のマルティンを差し出した。
何のために戦っているのかもわからないまま、敵がいれば戦闘が起きる毎日を過ごすマルティン。仲間の一人は、この戦争が終わったらアメリカに行きたいと夢を語ったが、敵の銃弾に倒れた。
マルティンも戦闘中に肩を撃ち抜かれ、右腕が不自由なまま戦争は終わった。仕事の口を町で求めたが得られないまま、数年が経ち、故郷の村に戻った。そこには、巨人のように背の高くなった弟ホアキンがいた。
ここに住むなら農場で働けと言う父に、マルティンは「片腕が不自由なままでは働けない、アメリカで仕事を見つけるために船賃を前借りしたい」と乞うと、兄と一緒に農場をやるために待っていたホアキンは怒り、地主も「敗戦分の徴税がきつくお金は出せない」と言った。
HANDIA アルツォの巨人のネタバレあらすじ:承・ホアキンを見世物に
父親の元にアルサドゥンという興行師が訪れた。ホアキンを見世物にしようと相談するが、当のホアキンは反対。しかしこのままでは農場を失ってしまう。マルティンにも農場の仕事は無理だと、2メートル24センチの巨人として興行で稼ぐことになった。
ホアキンは大好評で新聞に載り、興行が波に乗るとマルティンは垢抜けていった。
ある日、客の中にいた医師が「ホアキンは巨人症だ」と指摘。「夜中に背が伸びる音がする、伸びるのを止めたい」と言うホアキンは「アルツォへ帰って身を固め、農場を持ちたい」とマルティンに訴えた。
アルツォに戻り、ホアキンと父親で農場を買った。ホアキンはアルツォの巨人と噂され、村人たちが覗きにやって来た。見世物として呼びつけた女王にホアキンは「村人達の態度が変わってしまった」と零した。皮肉にも彼の背が伸びるのは止まる事なく、劇場を満員にするほどの興行もできるようになった。
HANDIA アルツォの巨人のネタバレあらすじ:転・巨人症の仲間たち
ホアキンはイギリスへ渡り、他の巨人症の人々と集まりエスターという女性にも引き合わされた。兄マルティンも村で幼馴染のマリアと結婚した。そして、自分が行きたくても前借りできなかったアメリカへの渡航費を、同じアルツォに住むイシドロは手にしている事を知り、マルティンは怒った。マルティンは彼を羨んだが、マリアは農場に居たいと言った。
ホアキンは興行で得たお金を「自分の分け前も欲しい」とマルティンに願った。当然故郷に送金するものと思っていたが、各地を周って稼いだお金を、ホアキンはこっそり隠していた。
興行で稼いだマルティンが、マリアを連れてアメリカへ渡ろうとすると、ホアキンは「自分を使って稼いだくせに」と彼をなじった。ホアキンの巨人症は背骨に負荷がかかり、体の老化を早くし、29歳にして杖が無ければ歩けなかった。死後に遺体を科学界が高値で買い取ると申し出られたが、ホアキンはあくまでアルツォの墓に入ると決めていた。
同じ頃、パリにいたエスターと共に写真を撮り、ホアキンは初めて彼女と一夜を共にしたがうまくいかなかった。さらに移動中に追いはぎに遭い、ホアキンが自分のお金を送金せずため込んでいた事がバレた。
村に戻った二人。ホアキンはエスターとの結婚を反対され、体は弱っていった。商才の無いマルティンは、ホアキンと農場の仕事に専念するようになった。
HANDIA アルツォの巨人の結末:消えたホアキン
自分のせいでマルティンがアメリカに行く夢が叶えられなかったと思ったホアキンは、二人での興行を行い、仕事を選ぶことも無かった。
ある夜、雪の中で移動中、マルティンはホアキンを荷馬車に残し、近くの町の酒場で巨人の見世物の宣伝をした。すると聴衆が知っているのは、片手が不自由な巨人だった。相手にされず荷馬車に帰ると、ホアキンは狼に追われて転落していた。そして見つけたホアキンは、マルティンに「アメリカへの船代のために自分を使え」と言った。
1861年、ホアキンは亡くなった。全財産がマルティンと息子ミゲルに残された。そして、それまで動かなかったマルティンの腕がかすかに動いた。彼はホアキンとの冒険譚を話し、死んでもなおその存在は大きくなっていたが、ホアキンの遺した品は少しずつ譲られなくなっていった。
やがて父が亡くなり、空きの無い墓場に場所を作るため、ホアキンの亡骸を移動しようとするが、そこに亡骸はなかった。博物館や医師に売られたのか真実はわからないが、ホアキンの亡骸はどこにも見つからなかった。
以上、映画「HANDIA アルツォの巨人」のあらすじと結末でした。
HANDIA アルツォの巨人のレビュー・考察:価値観の変わり目
アメリカの独立に始まり、フランス革命、ナポレオン戦争、スペインでは王位継承に端を発する戦争等、西洋史の中でも重要な事象が短期間に起こっているこの時代は、古い慣習・因習と新しい知識が拮抗している時代でもある。その中でもホアキンの体躯を見世物として興行するうちに出会った医師によって、「巨人症」と病の名前が付けられ、背が伸び続ける事によって背骨に負担がかかる事、内臓が成長を続けることで老化が早いことなど、背がとビルたびに苦しむホアキンに、いくつか示された医師の見解は、自分に残された時間や、その間にできることを考えるための指標になったのではないだろうか。
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