ハッピーフライトの紹介:2008年日本映画。ハッピーフライトは航空業界の裏で働く人々をコミカルに、時には仕事に対する航空会社の人々の情熱を上手く描いた作品。旅客機が機体異常で引き返し、無事緊急着陸するまでのトラブルを描く。当初はもっとハプニングの起こる映画を監督は作りたかったようですが、航空会社を取材していく内に、飛行機が安全な乗り物であること、そこで働いている人の面白さを知って内容を軌道修正した作品だそうです。
監督:矢口史靖 出演:田辺誠一(鈴木和博)、時任三郎(原田典嘉)、小日向文世(望月貞男)、綾瀬はるか(斎藤悦子)、寺島しのぶ(山崎麗子)、吹石一恵(田中真里)ほか
映画「ハッピーフライト」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ハッピーフライト」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画ハッピーフライトの予告編 動画
映画「ハッピーフライト」解説
この解説記事には映画「ハッピーフライト」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
映画ハッピーフライトについて
この作品は、「ヒコーキ、飛ばします。」というキャッチコピーで、航空機1機をスケジュール通りに安全に運航させるために働くパイロット、CA(キャビンアテンダント)、管制官、整備士などのスタッフたちの奮闘する姿を、涙あり笑いありの軽妙なタッチで生き生きと描いたヒューマン娯楽映画です。
監督は『ウォーターボーイズ』(2001年)、『スウィングガールズ』(2004年)などを手がけた矢口史靖です。
詳細あらすじ解説
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:1.プロローグ:機長・鈴木和博のヒコーキ、海へ墜落?
飛行機に乗ると、必ず流れる「機内安全のご案内」の機内放送、この物語はそれから始まります。そして、夜、ここは羽田空港、飛行機のコックピット、前方には滑走路の誘導灯が光っていました。操縦桿を握る機長席には、鈴木和博が座っていました。鈴木は副操縦士に「テイク・オフ」と言うと、飛行機を離陸させました。しかし、飛び立った瞬間、鈴木は飛行機の異変に気が付きました。速度計が故障しているようでした。すると、飛行機が突然、大きく揺れ始め、危険信号が鳴り始めました。このままでは墜落してしまいます。鈴木はエンジンパワーを上げましたが、機体の揺れは収まりません。パニックになる鈴木と副操縦士、「パワー!パワー!」と必死の努力もむなしく、機体は海面へと墜落してしまいました。「はい、ご苦労さん!」と後ろから見ていた訓練教官たちの声がしました。これは飛行シミュレーターのコックピットの中でした。その中から出て、がっくりとうなだれて、ため息をつく鈴木に、教官は「訓練で良かったな」と、次の訓練生を呼びました。そう、鈴木和博は、まだ副操縦士(コーパイロット、通称「コーパイ」)で機長昇格訓練生でした。彼は次の国際便で機長昇格のための最終路線審査を受ける予定で、訓練していたのでした。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:2.空港スタッフの1日の始まり
舞台は羽田空港、巨大なジャンボジェット旅客機1機を、定刻通りに安全に飛ばすためには、様々な人々が日々、懸命に働いていました。その羽田空港行きのバスの中、新人CA・斎藤悦子は友人たちと飛行機の関するクイズを楽しみながら、国際線デビューの仕事に向かっていました。斎藤が乗る便のCAを取りまとめるチーフ・パーサーの山崎麗子は、その厳しさから「お水、たくさん飲んだほうがいいんだって。いっぱい泣くからよ~」という噂がでるほどでした。友人たちからそれを聞いた斎藤は、驚きました。斎藤は空港に着きましたが、遅刻ギリギリでした。斎藤は直ぐにCAの服装に着替えると、フライト便ごとのCAの事前ミーティングに駆け込みました。しかし、もう既にミーティングは始まっていました。「新人のクセに遅れて来て!仲良しクラブじゃないのよ!」と、いきなり斎藤はチーフの山崎から雷を落とされてしまいました。その頃、グランドスタッフ・ルームでは朝のミーティングが開かれていました。グランドマネージャーの森田亮二は、グランドスタッフの木村菜採、吉田美樹たちに、何が何でも「オンタイム厳守!」と檄を飛ばし、スタッフたちを持ち場に着かせました。森田、木村、吉田たちスタッフは各自、無線機を取って身に装着して、持ち場に行きました。木村は体力的自信がなくなり、出会いもない職場に不満を抱いて、半年前から、森田に退職を申し出ていました。木村は森田に今日もその件で詰め寄りました。しかし、森田は、飄々とした楽天家の後輩・吉田を一人前にしてからと言い、木村の退職を認めてくれませんでした。がっかりする木村に、吉田は「先輩~。出会いありますよ。きっと。…辞めたら(芸能人を)生で見れなくなりますよ~」とお気楽に言ってきました。空港にチャイムがなりました。1日の開始時刻です。大勢のお客様が流れ込んできました。木村、吉田たちは、持ち場に着き、シャッキとして接客に勤め始めました。今日のフライトが機長昇格のための最終路線審査となる鈴木は、未だにパイロット・キャップをなぜ被るのか分からず、また髪形が乱れるのがイヤで、いつものように被らずに、友人のパイロットにその不満を愚痴りながら、運航部ルームへと足を運んでいました。鈴木は今日で絶対OJTを終わらせると、意気込み、緊張していました。ただ救いは、自分の席の横(副機長の席)に乗る運航部門指導教官が、温厚で優しいことで有名な望月貞男だったので、内心、合格するだろうと安心していました。鈴木は運航部ルームに入ると、今日の便の打ち合わせをしようとしました。すると望月教官がマスクをして鼻水を垂らしながら出てきました。どうやら風邪のようでした。望月教官は自分の代役に原田典嘉に乗ってもらうように手配していました。鈴木は驚きました。原田は厳しいことでも知られていたからでした。鈴木の緊張感は一気に高まりました。鈴木は、見るからに威圧感バリバリの原田教官にビビリながら、今日のフライト・羽田発ホノルル行き1980便の打ち合わせをしました。その頃、国際線デビューのCA・斎藤はミーティングの終盤で、ファーストクラスで出すデザートを聞いて、驚きました。それはとても美味しいことで有名なチョコレートだったからでした。食いしん坊の斎藤は思わず「私たちの分もあるんですか?」と聞いてしまい、みんなから唖然とされてしまいました。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:3.お客様を搭乗させるまでのスタッフたちの務め
羽田発ホノルル行き1980便のCAたちは、チーフ・山崎を先頭に空港内を、颯爽と整然と闊歩していきました。待望のデビューを果たした新人の斎藤は、自分の指導役CAの田中真里の後ろについて、歩いていきました。羨望の眼差しで見る3人の飛行機研究会のメンバーたちからは、カメラで写されたりしました。その時、突然、斎藤は両親の直輔と利江から声をかけられ、びっくりしました。両親は斎藤がCAデビューと聞き、故郷・広島からわざわざやって来たのでした。斎藤は感動で目を潤ませました。そんな斎藤に両親はお守りと正露丸を渡し、励まして、仕事に送り出しました。一方、機長昇格審査フライトに向かう鈴木は、キャップを被りビッシッと決めた教官・原田の後について行きながら、おかしな駄洒落を言い、緊張感を解きほぐそうとしました。しかし、原田には効きませんでした。逆に、原田に「なぜキャップを被らないんだ?」と指摘されてしまい、鈴木は直ぐにキャップを被りました。その頃、空港近くの城南島海浜公園で飛行機マニアの人たちが、成田から飛び立つ飛行機の写真を撮っていました。マニアたちは空港の無線を傍受して、珍しい機が飛ぶことを知ると、直ぐさま、大きな望遠カメラをそこに向け、いいアングルで撮ることに熱中していました。そして、それを直ぐに自身のブログにアップするのが楽しみでした。飛行機の発着時に、大変危ない事故があります。それはバード・ストライクというもので、エンジンなどにカモメなどの鳥が当たったり、吸い込まれたりする事故です。それが原因で飛行機が墜落する可能性もあるからです。その防止のため、空港にはバード・パトロールという役目のスタッフがいます。管制塔のスタッフは飛行機の離発着時に双眼鏡で見たり、パイロットからの連絡を受け、その危険性があるときには、バード・パトロールの馬場光輝(通称「バード1号さん」)に連絡をとり、防止してもらうように手配するのでした。レーダー室では管制塔との連絡をとりながら、空港周辺区域を飛ぶ飛行機の位置をレーダーで捕捉・確認して、安全な進路に飛行機を誘導しなければいけませんでした。管制官・宮本理英は、お土産の飛行機型のチョコがゴチャゴチャしていると苛立ち、「もうちょっと整理してもいいですか」と同僚に言い、地図の上でそれをきれいに配置しました。もうそれは職業病でした。フライト前の1980便は、ライン整備士で仕事に誇りを持って、妥協を許さない小泉賢吾の最終点検を受けていました。エンジンに少し不良な部分があるようで、若いドッグ整備士の中村弘樹が車で飛んできました。そんな中村に小泉は、エンジンを整備するのを待つように指示して、コックピットに入り、教官・原田に整備状況を報告しに行きました。しかし、騒音で指示が聞こえなかった中村はエンジンを整備し始めました。そんな中、鈴木は機の外部点検をしていました。すると機から1滴のオイルが落ちてきました。危うく目に入りませんでしたが、シャツに落ち、鈴木は苛立ちました。そんなコーパイの鈴木の様子を、機内から見ていたベテランCAの田中たちは、大笑いしました。そんな余裕綽々の田中に指導を受け、斎藤はようやく働き始めました。コックピットに戻った鈴木は、原田にオイルのシミを指摘され、キャップを被ることの意味を悟らされました。そして、鈴木は中村がエンジンを整備していることを告げました。それを聞いた小泉は中村のもとに飛んでいきました。「できるだけ完璧な状態で飛ばしてやりたい」と言う中村に、小泉は「そんなの当たり前だよ!でも他とのバランスを考えろ!時間通り飛ばせなかったらどうする!」と叱り、中村が8分でできると言うと、7分でやれと厳命しました。一方、機内では準備が整ったCAたちは、教官・原田の指示のもと、このフライトの機長であるコーパイの鈴木を紹介し、ブリーフィングを終了させました。整備も小泉の叱咤を受けた中村の努力で、時間通りに整備が完了しました。鈴木は、あとは航路状況を確認し、お客様を搭乗させ、飛び立たせるのを待つだけでした。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:4.いよいよお客様、搭乗。グランドスタッフたちの奮闘
その頃、空港ロビーではグランドスタッフの吉田が、斎藤の乗る羽田発ホノルル行き1980便の搭乗客の席の移動で考え込んでいました。木村は吉田に助言し、木村の指示のもと、吉田はビジネスマン風で人柄の良さそうな男性・清水利郎をエコノミーからビジネスに移動させることに成功しました。一方、オペレーションコントロールセンター(OCC)では、コントロールセンターの責任者でオペレーション・ディレクターの高橋昌治とディスパッチャー・カンパニー無線担当の中島詩織が羽田発ホノルル行き1980便の航路の気象データ等を、コンピュータで正確に割り出し、機長の鈴木に連絡をしていました。アナログ人間の高橋は、コロコオとソフトが変わるコンピュータについていけずに、ひとり苦悩していました。鈴木はOCCからの連絡を受け取ると、気象状況もよく、離陸に問題なしと判断しました。さあいよいよ、羽田発ホノルル行き1980便の搭乗が始まりました。修学旅行客を始め、続々と様々な人々が搭乗して行きました。搭乗口で木村と吉田は、お客様に丁寧に挨拶をしていきました。清水も笑顔で機内に入って行きましたが、彼の持っていたスーツケースが大きいことに木村は気付きました。機内搭乗口でCAの田中は、笑顔で丁寧に1人ひとりに挨拶し、ご案内していきました。そして、清水がスーツケースを持って入ろうとしたとき、田中は「このお荷物は安全のため貨物にお預けください」と丁寧にお断りをしました。すると、清水の態度が豹変し、「カウンターの姉ちゃんがいいって言ったんだぞ!」と怒鳴り散らしてきました。それの姿を見ていた木村と吉田は、驚きました。木村は吉田に事情を聞くと、吉田は席を移動する代わりに、大きい手荷物を持ち込んでもいいという条件で手をうっていたのでした。木村は呆れながらも清水のもとに飛んでいき、CA田中に強引にスーツケースを機内に入れ込ませ、逃げました。なんとか「オンタイム」できたと、ホッとした木村と吉田でした。しかし、そんな2人の視界に、機内から出てくるカップルが入ってきました。そのカップルは空港ロビーのトイレの中に入っていきました。2人は新婚の岡本福男と妻の幸子で、新婚旅行でハワイに行くところでした。しかし、突然、幸子が飛行機墜落を恐がってパニック状態になり、トイレに立て籠もってしまいました。さあ大変です。木村は幸子に説得しますが、彼女は泣いて聞き入れませんでした。すると、そこに吉田から知らせを聞いたマネージャーの森田が、やって来ました。森田は、立て籠もり泣き叫ぶ幸子に、静かに飛行機の落ちる確率はほとんどないことを説明しますが、それでも聞き入れられませんでした。木村は「ダメじゃん」と呟き、ほくそ笑みました。しかし、森田の話術はすばらしく、次に「そんな確率よりも、あなた方2人が世界で出会った確率のほうが、もっとすごいと思いませんか」と優しく諭しました。すると、ようやく幸子がトイレから出てきました。回りにいた観客から拍手が沸き上がりました。森田は、木村と吉田に「バカ!ビジネス2つでいくらになると思ってるんだ!」と怒って、さっさと持ち場に帰って行きました。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:5.羽田発ホノルル行き1980便、無事離陸
全お客様の搭乗が完了しました。原田と鈴木は管制塔と連絡を取り合いながら、離陸滑走路へと機を向けていきました。その頃、「バード1号さん」の馬場は、雑誌記者の今井一志とその相棒の取材を受けながら、仕事内容を紹介していました。馬場は「カモメはバカ」と言うとライフルで群がって飛ぶカモメの方と撃ちました。すると、今井とその相棒の態度が豹変し、正体を明かしました。今井たちは愛鳥連盟の人たちでした。一方、1980便の機内では、斎藤たちCAたちがお客様に、離陸準備のために座席の確認をして回っていました。斎藤はそこで1人、カツラがずれているお客様・丸山重文を見つけてしまいました。眠っていた丸山を起こさないように、そっとカツラを直すと、斎藤は丸山に座席の指示をして、他のお客様への対応に移っていきました。鈴木は、機が指定滑走路に向かうと原田と確認しあい、エンジンを起動させ、1980便を離陸させました。すると、機内から歓声があがりました。新婚の岡本福男と妻の幸子も、乗り物酔いしやすいカツラの丸山も、ホッとしました。しかし、1980便コックピットの鈴木は違いました。機がカモメの群と完全に遭遇していました。それは「バード1号さん」の馬場が、愛鳥連盟の人たちにライフルを撃つことを邪魔されていたからでした。しかし、馬場はそんな彼らに、これは空砲で、鳥を殺していないことを説明しました。愛鳥連盟の人たちは拍子抜けしました。そんな状況は知るわけもない鈴木は、カモメがコックピットの窓に当たるのを見て、思わず「ウワ!」と叫びよけました。そのカモメの群れとの遭遇の映像は、乗客たちにもモニター画面で見えていました。管制塔のスタッフも、城南島海浜公園で写真を撮っていたマニアたちも見ていました。原田は直ぐにチーフ・パーサーの山崎以下CAたちに連絡して、機内で何か異変があれば報告するように依頼しました。山崎はじめCAたちは、直ぐに各部署で異変がないことを原田に連絡しました。原田は管制塔にエンジンに鳥は入っていないと連絡、管制塔も無事離陸したことを確認しました。一応、問題なく離陸できた鈴木でしたが、不注意で前方の雲に突っ込んでしまいました。しかし、それによるトラブルも、鈴木は難なくクリアしました。原田の確認をとり、鈴木はシートベルト着用サインを消し、機を自動操縦に切り換え、自らも操縦桿から手を離しました。その頃、羽田空港ではOCCやドックに社会科見学の小学生を受け入れたものの、OCCの責任者の高橋たちは、その応対に手を焼いていました。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:6.緊張した機長・鈴木とCAデビュー・斎藤の大失敗
さあ1980便を無事離陸し、ホッとした鈴木でしたが、原田に乗客への搭乗アナウンスを頼まれました。鈴木は気持ちよくすばらしいアナウンスをしました。しかし、それは乗客には全く聞こえていませんでした。アナウンスのチャンネルを外部との交信用にセットしたままだったのです。そのアナウンスは他の周辺旅客機のパイロットたち、そして成田のレーダー管制室に流れていました。大失敗をして恥ずかしい思いをした鈴木は、改めて乗客にアナウンスをしました。しかし、緊張した鈴木は、しどろもどろで「…ありがとうございまする」と変な日本語を使ってしまい、乗客から大笑いされてしまいました。離陸してから、斎藤はランチをお客様に出して回りましたが、うまく肉料理か魚料理かがさばけずに、肉料理が足りなくなってしまいました。それを見ていたチーフの山崎は、斎藤にお手本を示すように、魚料理のおいしさの説明をして回ると、次々に魚料理の注文が出てきました。斎藤はチーフの真似をしようとしますが、逆に肉料理を「ただのビーフでございます」と言ってしまい、肉料理を食べている人に損した気分にさせる失態をしてしまいました。やっとそれが終わった斎藤に、次々とお客様がヘッドフォンや雑誌、ジュース、ワイン、酔い止め薬などを注文してきました。斎藤は忘れないように、ブツブツと呟きながらCAルームに入ると、田中たちが食事をとっていました。「さっさと食べなさい」「燃料入れとかないと体もたないわよ」と田中たちに言われた斎藤は、休憩時間5分と聞き、急いで食事をとり始めました。しかし、5分の休憩はあっという間に過ぎてしまいました。燃料補給もままならないままで斎藤は、注文されたお客様に注文のものを出したつもりでしたが、悉く失敗してしまい、お客様から怒られてしまいました。挙げ句の果てに、つい忘れてしまった酔い止め薬を注文した丸山から、斎藤はエプロンにゲロを吐きかけられてしまいました。その様子を見ていたチーフ・山崎は、斎藤を厳しく叱り飛ばしました。そして、山崎に斎藤は、客前に出ずに裏方に徹しろと言い渡されてしまいました。落ち込んだ斎藤のもとに、何も知らない修学旅行の女子高生たちが寄ってきて、記念写真を撮りに来ました。斎藤はできる限りで応対しました。そんな斎藤に、その中の1人の女子高生が「CAになるにはどうしたらいいですか? 仕事大変ですか?」と尋ねてきました。斎藤は思わず「CAはやめといた方がいいかも」と呟いてしまいました。斎藤は女子高生が去った後、お手洗いでエプロンを洗いながら、号泣しました。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:7.グランドスタッフ・木村、イケメン青年との出会い
その頃、羽田空港ではロビーでたむろしていた飛行機研究会のメンバーたちが、鈴木と斎藤が乗る1980便がバード・ストライクに遭ってないかと、城南島海浜公園で写真を撮っていたマニアのブログの写真を見て、心配していました。それを彼らから小耳にはさんだグランドスタッフの木村でしたが、緊急の知らせが入り、木村はそっちの方に向かいました。それは同じ色・型の荷物の取り間違い事件でした。困っていたのは、オオタと言うイケメンの青年でした。木村は大声をあげて、札幌から到着のイタミ・ヤヨイという女性を探しました。すると木村は、その女性が取り間違えた荷物を積み込み、バスに乗って出発するところを発見しました。走り去っていくバスを、木村は全力疾走し、転倒しますが、それでも木村はメゲませんでした。木村はバス会社の人が持っていた拡声器を奪い、「そのバス、待って~!」と叫び、追いかけて止め、荷物を無事に交換することに成功しました。そんな木村の姿を見て感動したオオタという青年は、木村にお礼がしたいと言い出しました。青年は木村に名刺を渡してきました。木村は青年と仕事が終わったら空港のレストランでと待ち合わせをしました。木村は、すりむけた肘で密かに「ヨシ!」とガッツポーズをして、仕事に戻りました。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:8.自信を取り戻したCA・斎藤と大きく揺れる1980便
さて、斎藤が乗っている1980便内では、その頃、大変なことが起こっていました。それは、ファースト・パーサーの林原奈々が、デザートのチョコレートケーキを解凍するのに失敗、滅茶苦茶にしてしまったのでした。涙を流し謝る林原を前に、山崎はじめCAたちは頭を抱えました。そこでふと山崎は、食いしん坊の斎藤のことを思い出し、彼女に急遽、デザートを作るように命じました。斎藤の指示のもと、田中や林原たちCAたちは機内の残りもののミールをかき集め、調理しました。そして、斎藤たちは、おいしく美しいタルト・タタンを作り上げて、お客様から喜ばれました。斎藤は裏方でも、CAの仕事にやりがいを見いだし、自信を取り戻しました。そんな中、コーパイで機長の鈴木は、原田から厳しい質問を受けながらも、1980便を順調に飛行させていました。そんな時、チーフ・パーサーの山崎から「左の翼に血のような汚れが見える」と知らせが入りました。状況を確かめるために、原田が山崎のもとに行くと、確かに血のような汚れが左翼についていました。すると突然、機体が大きく揺れ、降下し始めました。そして、シートベルト着用のサインが出ました。原田は突然の揺れと動きに驚きながらも、コックピットに戻って行きました。コックピットでは鈴木が必死で機体を安定させようとしていました。しかし、どうにもできそうにありませんでした。機内に緊迫感が一気に広がりました。1980便はほとんど失速しかけていました。パニックになりかけの鈴木に、冷静な原田はエアスピードが出過ぎて、逆に失速していることを指摘しました。鈴木は原田の指示に従い操縦すると、機体は安定しました。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:9.1980便・機長の鈴木、エマージェンシーを宣言、羽田へ帰還を決断
しかし、どうもおかしいと鈴木と原田は計器を疑いました。エアデータ・コンピュータを点検すると、それが作動しなくなっていました。これでは機体の高度とバランスを正常に保つことができません。羽田空港から飛び立ち2時間25分、機長の鈴木は大きな決断をしなければなりませんでした。原田の指導のもと、鈴木はOCCに計器の故障を報告し、1980便を羽田空港に帰還させる決断、エマージェンシーを宣言しました。この連絡を受けたOCCスタッフの間に一気に緊迫感が張られました。そして、その情報は一気に羽田空港内の各部署に流れました。その頃、仕事を終え帰ろうとしていたドッグ整備士の中村は、その情報を聞き、直ぐに自分の工具入れを確かめに行きました。すると自分のスパナがなくなっていました。さあ、大変です。「まさか、1980便のエンジンの中に…」、そんな不安が中村を襲いました。エマージェンシーを宣言した鈴木でしたが、この対処法に自信が持てず、教官・原田に操縦を任せようと思いました。しかし、原田はさっきの機内対応中に、吉田が機内に入れたサイズオーバーの荷物の落下を受け止めたときに手首を痛め、帰還の操縦は全て鈴木がすることになりました。不安感に苛まれる鈴木に、原田は突如笑いだして「こんな時はまず笑えと教えている」と言い出しました。鈴木は原田の言う通り、「ハハハ」と無理に笑いましたが、不安感は解消されませんでした。乗客たちには教官・原田が機長と名乗り、状況を説明、羽田空港に帰還するアナウンスをしました。予想通り乗客たちからは、不安の声が出てきました。CAたちは乗客たちを安心させようと努めました。鈴木はゆっくりと1980便を羽田に向けて、Uターンさせました。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:10.エマージェンシーの1980便、受け入れに奮闘する空港スタッフたち
まだその情報を知らなかった木村と吉田は、13時になり、仕事を終えようとしていました。木村はオオタという青年との待ち合わせがあり、ルンルン気分でいました。そんな2人に、森田はエマージェンシーで1980便が急遽、羽田に帰還することを告げ、残業を命じました。ルンルン気分でいた木村は折角もらった青年の名刺を、シュレッダーにかけて、仕事に向かおうとしました。その時、木村はふと、その情報をどこかで聞いた覚えがありました。それは飛行機研究会のメンバーたちでした。木村は彼らのところに急行しました。木村は彼らのPCを使い、1980便の帰還の原因を示す写真が載っているブログを、OCCに報告しました。連絡を受けたOCCでは、中島がその写真をPCでクローズアップさせ、故障の原因を突き止めました。それは、離陸時のバード・ストライクで左のピトー管(速度計)が折れたためでした。中島は直ぐに、1980便の鈴木と原田に報告しました。原因を知った2人は、帰還のための燃料計算に気がつきました。OCCも既にそれに気付き、新しいフライトプランの作成をしていました。パニック寸前の鈴木は、中島に泣きつきました。中島は鈴木たちに、新しいフライトをおくりました。それは、房総半島を通過後まで高度を下げられないことを示すものでした。ぶっつけ本番のフライトプランに鈴木は困惑しました。でもやるしかありませんでした。一方、OCCの責任者・高橋は別のことに着目していました。それは天候でした。羽田空港には大型台風が接近しているところでした。そんな時、空港に雷が落ち、OCCが一時停電、直ぐに復旧しましたが、PCがダウンした個所がありました。騒然とするスタッフたちに、高橋は冷静にスタッフに声をかけ、状況を把握、PCでは対処できないと判断すると、あるアイデアを思いつきました。その頃、整備ドッグ内では、整備士総出で、無くなったスパナを探しまくっていました。上司の小泉も一緒に探しまくりましたが、見つかりません。「1980便のエンジンの中に…」という不安が小泉、中村を襲いました。その時、社会見学に来ていた先生から電話がかかってきました。スパナは見つかりました。小学生のイタズラでした。ホッと胸をなで下ろした中村、小泉ら整備士たちでした。台風接近でフライトの遅延が原因で、空港ロビーではグランドスタッフは大忙しでした。そんな中、OCCの高橋たちがやって来ました。高橋たちは、ロビーに飾ってある空港の立体模型を担いで、暴風雨の中、びしょぬれになりながら、OCCに運び入れました。高橋は、それを机に置かせると、現状をその模型の上で構築、スタッフたちに受け入れの指示をしました。アナログ人間・高橋はその本領を発揮しました。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:11.1980便内のCA斎藤たちも大忙し
羽田に帰還する1980便内では、ビジネスマンの清水が、その応対に当たっていた田中を「バカにするな!機長を呼べ!」と怒鳴りつけていました。田中は清水がハワイに行けというのを、謝り、それをクーポン券で収拾しようとしたのでした。その様子を見ていたチーフの山崎は、泣き出しそうな田中に代わり、清水の応対に行きました。山崎は心を込めて冷静に、怒り心頭の清水に、怒らせた原因は自分たちの責任と認め、状況を説明し、彼に冷静に判断するように説得しました。すると清水の怒りは収まりました。山崎は田中にもう一度、清水の接客をさせるように懇願しました。清水はそれを承諾しました。それの一部始終を見ていた田中や斎藤らCAたちは感動しました。田中は山崎に背中を押され、再びキャビンの清水の応対に向かっていきました。新しいフライトプランを受けた鈴木は、OCCの中島と連絡を取り合いながら、愚痴っていました。大型台風の影響で風の影響が心配だったからでした。愚痴る鈴木を教官・原田は宥め、「その時はその時だ」と励ましました。鈴木と原田は、大型台風のまっただ中の羽田空港に、緊急着陸することに決定しました。機体の揺れは予想され、キャビンのCAたちにその旨を連絡しました。その連絡を受けたチーフ・山崎はCAたちに、「今からはサービス要員の顔を忘れて、保安要員として動くように」と命じました。山崎は乗客たちに当機が羽田に緊急着陸することをアナウンスしました。乗客たちにまた緊迫感が走りました。斎藤らCAたちは、着けていたスカーフ、ピアスなどをしまうと、乗客たちに安心するようアナウンスし、保安要員として動きました。
映画ハッピーフライトの詳細あらすじ:12.コーパイ機長・鈴木、奮闘! 1980便、無事着陸成功!
鈴木は原田の指示のもと、雲の薄い所を狙って、1980便を降下させていきました。空港のレーダー管制室では、その様子をレーダーで捕捉、確認していました。OCCではその情報をもとに、1980便がどういう航路で空港に着陸するかを予想しました。責任者の高橋は、その航路に腕組みをして、考え込みました。鈴木は1980便を徐々に降下させ、暴風雨の雲の中に突入していきました。風速や風向は刻々と変わり続けました。1980便の機体はその風で大きく揺れ、その度に乗客たちは不安の声をあげました。そんな折、房総半島沖で大きな積乱雲が発生していました。鈴木はそれを避けるため、機体を右に左にと旋回させました。しかし、1980便は雷に打たれてしまいました。その衝撃に驚き、思わず、また「ウワ!」と鈴木は叫んでしまいました。再び、その声を聞いた山崎は「あの根性無し!」と思わず呟いてしまいました。1980便は唯一使用可能の右上ピトー管が氷解するまで、その速度は分かりませんでした。そんな状況の中、鈴木は雲の状況を見て独自に判断し、南向き(16セレクト)での着陸を決行しようとしました。しかし、OCCの高橋は台風のこれまでの動きから風を読み、北向き(34ライト)での着陸を、鈴木に指示しました。その連絡を聞いた鈴木は、木更津上空まで来ていましたが、OCCの高橋の言葉を信じました。鈴木は猛烈な横風と雨の中、強引にILS(誘導計器進入システム)に機体を乗せることに成功しました。レーダー管制室のスタッフはその手腕に感心しました。鈴木は強烈な横風を受けながらも、何とか羽田の指定滑走路へ進入を図りました。斎藤らCAたちも緊急着陸のマニュアル通りに、乗客に指示を与えました。1980便の機体は猛烈な暴風雨の中、横風上に機首を向けつつも、鈴木の的確な判断で車輪をハードに滑走路に接地させました。鈴木は機体をオーバーランさせず、無事に着陸を成功させました。機内の乗客から、拍手喝采があがりました。
映画ハッピーフライトの結末:13.エピローグ:みんなにとって、ハッピーなフライトでした
空港のOCCのスタッフ、管制塔スタッフ、グランドスタッフ、整備士たちは、無事1980便が着陸するのを見届け、安堵していました。しかし、管制塔スタッフやグランドスタッフたちは、次の仕事に即座に駆り出されました。木村はみんなの目を盗み、ダメもとで、青年との待ち合わせのレストランに足を運びました。ため息をつく木村の前に、あの青年がやって来ました。1980便の乗客は皆、無事を喜んで降りていきました。新人CAの斎藤も、このフライトで少し自信が持てました。「やっぱり、私、CAになります!」と言う女子高生に、斎藤は「キッビしいわよ~!」と言い、彼女を笑顔で見送りました。1980便を何とか無事に着陸させたコーパイの鈴木は、安心感と達成感から、このフライトが最終審査であることを完全に忘れていました。原田は冷静に「結果は後で報告するから」と言い残し、出ていきました。鈴木はキャップを被り、機外に出ました。やはりピトー管が折れて無くなっていました。鈴木は鳥の羽を一枚、見つけました。その羽は、台風が去った夕焼け空高く、飛んでいきました。みんな丸く収まり、ハッピーなフライトでした。(エンドロール)空港のロビーを元気に走る木村の後を、必死で追う乗客(竹中直人)がいました。鈴木は見事、機長に昇格し、袖の階級章が4本になり、飛行機を飛ばしていました。
以上、映画ハッピーフライトの詳細あらすじ解説でした。
「ハッピーフライト」感想・レビュー
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登場人物全員が主人公であるかのように感じる作品です。副操縦士の鈴木和博や、新人キャビンアテンダントの斎藤悦子、グランドスタッフの木村菜採など、皆どこか抜けている部分がありながらも、一生懸命で可愛らしいところがあるのが印象的でした。
また、この映画では前半に伏線が張り巡らされていて、機体異常のハプニングが起きて以降にその伏線が回収されまくっているのが面白いと感じました。
色々な人に感情移入しながら見ることができるので、何度見ても楽しめる作品です。
綾瀬はるかのコメディエンヌぶり全開!という感じです。個人的には、笹野高史演じるカツラの乗客のオジサンがらみのシーンが大好きです。
またこの映画を観ると、乗客の知らない航空会社や空港の裏側が分かります。CAやグランドスタッフをはじめとする航空会社の社員、そして空港の関係者が、安全に飛行機を運行するためにいかに気を配っているかが分かり、安心して飛行機に乗れるようになるかもしれません。