ハーモニーの紹介:2015年日本。アニメ。もう二度と読む事はできない、稀有な才能と世界観をもつ作家伊藤計劃のアニメ化プロジェクト第二段。アメリカでの大災害の後、世界は生府の管理のもと、病気もなく、心身ともに健康で平等で思いやりのある社会になった。そんな世界を強烈に憎むミァハ。鮮烈な存在感をはなつミァハに魅せられたトアンとキアン。ミァハの存在はやがて理想郷であるはずの世界を混沌に落とし込む。第40回星雲賞日本長編部門および第30回日本SF大賞を受賞した、2008年刊行の伊藤計劃の長編SF小説を原作とした劇場版アニメ映画です。
監督:なかむらたかし、マイケル・アリアス 声の出演:沢城みゆき(霧慧トァン)、上田麗奈(御冷ミァハ)、洲崎綾(零下堂キアン)、榊原良子(オスカー・シュタウフェンベルク)、大塚明夫(アサフ)、三木眞一郎(エリヤ・ヴァシロフ)ほか
映画「ハーモニー」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ハーモニー」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
ハーモニーの予告編 動画
映画「ハーモニー」解説
この解説記事には映画「ハーモニー」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
詳細あらすじ解説
ハーモニーのネタバレあらすじ:1.プロローグ:物語、実行。
ある人物の恒常的体内監視システム・ナノマシン「WatchMe」が、あるプログラムを書き始めました。「Emotion-in-Text Markup Language …1.2…」「<pls: 敗残者の物語><pls: 脱走者の物語><eql: つまり わたし>」と…。その人物とは、霧慧トァン、WHO螺旋監察事務局の上級監察官を務める一人の女性でした。
ハーモニーのネタバレあらすじ:2.統治機構「生府」
2019年、北米を中心とした英語圏で大暴動が勃発、それに続き全世界で騒乱が起きました。これにより、米軍の「次世代型核兵器RRW(信頼性代替核弾頭:Reliable Replacement Warhead)」が第三国に流出、米国本土を含めて世界中の紛争でRRWが使用され、核戦争が勃発しました。この核戦争で突然変異したウイルスが、全世界に蔓延しました。この「ザ・メイルストロム(大災禍)」によって、旧来の政府は崩壊してしまいました。これに代わり新たに設置された統治機構「生府」は、「より良い未来、より良い世界」を作るべく、高度な医療経済社会を構築するため、恒常的体内監視システム・ナノマシン「WatchMe」開発、それを人体内に組み込ませ、心身共に健康的生活を管理・徹底しようとしました。これによって、個人個人が何を食べ、何を取捨選択すればよいか、全てデータが教えてくれようになりました。生府はこれで、人命を奪う事も人命が奪われる事もなく、全ての人々が優しく、平等な世界になると考えていました。
ハーモニーのネタバレあらすじ:3.ミァハへの思い
ザ・メイルストロムから半世紀後、女子高生だったトァンは、同級生だった才色兼備で不思議な魅力を持つ御冷ミァハに強く惹かれていました。ミァハは、生府が理想と掲げる健康で平等で幸福な世界、画一的な人間を作り出そうとする管理世界を憎み、あくまでも個の自由を主張していました。トァンは、そんなミァハの考えに惹かれ、友人・零下堂キアンと3人で自殺を図りました。しかし、これが途中で生府に気付かれて失敗に終わり、結果、ミァハだけが死んでしまいました。それから13年後、生き残ってしまったトァンは、WHO螺旋監察事務局の上級監察官として活動していました。紛争地帯・ニジェールの戦場でトァンは、トアレブ(神に見捨てられし民)から生府が禁止していた酒・タバコを裏取引して、飲酒・喫煙を行っていました。トァンは、死んでいったミァハが憎んだこの生府の世界と日本を激しく憎み、「ごめんね、ミァハ」と自責しながら、自ら紛争地帯に身を置いていました。
ハーモニーのネタバレあらすじ:4.帰国、悲劇的事件の勃発
ある日、トァンのこの禁じられた行動は、上司のオスカー・シュタウフェンベルク首席監察官(72歳)に発見され、トァンは謹慎処分となり、日本に送還されてしまいました。日本に帰ったトァンは、友人・キアンと再会しました。キアンは、過去にまるで何もなかったかのように大人になり、ボランティア活動に参加し、倫理プログラムを受け、理想的で模範的な「健康な国民」となっていました。そんなキアンにトァンは、強い隔たりと違和感を覚えました。キアンに誘われ、トァンは戸惑いながらも、レストランで昼食を共にしました。そこでキアンは自責の念にかられ、「あの時、私は薬を飲まず、裏切って、親にチクったんだ。ミァハが死んだのは私のせいなんだ」とトァンに泣きながら告白してきました。トァンは、キアンからミァハの遺体が検体に回されたことを知りました。すると突然、キアンは「ごめんね、ミァハ」と呟きながら、食事用のナイフで自分の喉を切り裂き、自殺してしまいました。この同時刻、全世界で6,582人が一斉に自殺を図るという悲劇的な同時多発自殺事件が勃発しました。その自殺手法は様々で、奇妙なものでした。
ハーモニーのネタバレあらすじ:5.驚愕
この奇妙な自殺事件を、螺旋監察事務局は「生命主義を脅かす犯罪の可能性がある」と判断し、総力を挙げて捜査に当たることになりました。トァンはキアンの自殺映像を見て、この事件に既に死んだはずのミァハが関与していると推理しました。トァンはミァハの「昔から、人はいろんなものに縛られてきた。家族、会社、宗教、お金…でも、WatchMeはもっと厄介。お金よりずっと命に近いところを人質にとって、私たちを縛っている」という言葉を思い出していました。早速、トァンはミァハの両親のもとに行きました。そこでトァンは、ミァハが養子だったこと、ミァハが紛争地域・チェチェンで生まれた子であることを知らされました。トァンは驚きました。トァンはミァハの遺体を引き取った人物を調べました。トァンは驚きました。その人物は東京健康情報大学・冴紀ケイタ、WatchMeの生みの親で、自分の父・霧慧ヌァザの恩師でした。トァンは冴紀のもとへ急行しました。そこでトァンは冴紀から、父・ヌァザが人間の脳を研究し、意識を制御する研究を行っていたことを聞かされました。トァンは幼い頃、忽然と姿を消した父・ヌァザのことを信じていませんでした。トァンは、父のいるバグダッドに向かおうとしました。すると、そこにインターポール捜査官のエリヤ・ヴァシロフが現れました。トァンは彼から生府上層部に人間の意識を制御する自称「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」という組織があり、その組織が今回の同時多発自殺事件に関係していることを聞かされました。俄かに信じられなかったトァンのもとに、TVの緊急報道が入ってきました。それは犯人の犯行声明で「生きていきたければ、自分以外の人を1人殺してください。そうしなければ、容赦なくあなたを殺します」というものでした。トァンは驚きました。それはミァハの言葉だったからでした。トァンは、父と研究仲間のガブリエル・エーディンがいるバグダッドへ飛びました。トァンはその機内で、キアンが自殺直前にミァハと電話で話していたことを知りました。ミァハが生存していたことを知り、トァンは驚愕し、涙しました。
ハーモニーのネタバレあらすじ:6.父との再会~ハーモニー・プログラムとは~
バグダッドに到着したトァンは、父・ヌァザのもとを訪ねますが、そこにはいませんでした。トァンは、そこでエーディンと面談しましたが、父の居場所は分かりませんでした。その頃、世界中では自殺者が急増し、パニック状態に陥っていました。そして、その夜、トァンは父・ヌァザから接触を受け、WatchMeを体に入れることを拒否した人々の暮らす旧市街地へと行きました。トァンは父と再会しました。父・ヌァザは「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」の中心人物でした。父・ヌァザはトァンに自分たちは「ハーモニー・プログラム」の研究し、ミァハをその実験体としてバグダッドに連れて来たのだと告白しました。「ハーモニー・プログラム」とは人間の意識を制御して、ザ・メイルストロムの再来を防ぐプログラムでした。しかし、父・ヌァザは「この研究には副作用があった。…ミァハを使って分かった。…“ハーモニー・プログラム”を行ったとき、人間の意識が消滅してしまった」と語り明かしました。父・ヌァザはトァンにこの「ハーモニー・プログラム」の実施で組織が分裂し、同時多発自殺事件以降、自分はプログラム実行の急進派に狙われていることを告げました。父・ヌァザはトァンにその急進派の中心にミァハがおり、全てはミァハが仕組んだことだと伝えました。父・ヌァザはトァンに「ミァハを止められるのはお前だけだ」と言いました。その時、突如、ヴァシロフが現れました。彼はヌァザを拘束しようと発砲してきました。彼はヌァザを今回の事件の実行犯として拘束しようとしました。彼はミァハの仲間でした。それに気づいたトァンはヴァシロフの隙を突き、父・ヌァザと逃げようとしました。しかし、父・ヌァザは執拗に追ってくるヴァシロフの銃弾から、トァンを庇おうとし、命を落としてしまいました。ヴァシロフはトァンの銃弾を浴び、重傷を負い、倒れました。トァンは、痛みに苦しみ「殺してくれ」と言うヴァシロフから「ミァハはチェチェンだ」と聞き、チェチェンへと向かいました。
ハーモニーのネタバレあらすじ:7.ミァハとの再会、決別。
トァンはミァハのもとへ向かいました。そんな中、トアンはミァハのことを思い出していました。この画一的で平等な世界を憎悪し、「システムをいじれば世界を転覆させされる」と言っていたミァハのことを…。トァンはこの事を上司・シュタウフェンベルク首席監察官に報告しました。すると、シュタウフェンベルクは驚くべき事を告白してきました。彼女も父と同じ「次世代ヒト行動特性記述ワーキンググループ」の一員でした。彼女はトァンに言いました。「あなたの肩に世界はかかっている」と…。トァンは、本音が聞きたいと言う彼女に「キアンと父を殺したミァハに会って、何某かの結論を得ること。それこそが私が行動する根拠」と答えました。ミァハが産まれたチェチェンでトァンは、ミァハと13年ぶりに再会しました。ミァハは意識のない、意識を必要としない民族で、生来、ハーモニーのとれた少数民族の1人でした。ミァハは人身売買にかけられ、その際に恐怖と憎悪の意識が覚醒したのでした。ミァハはトァンに「お父さんのことは仕方なかった。…私たちの望みは人類のハーモニクス。私、今度こそ行くんだ。素晴らしい新世界。…人間がどれ程、野蛮になれるのか、ここで知ったの」と自らの悲しき過去を静かに語りました。寂しそうなミァハの姿を見たトァンは、哀しくなりました。トァンはミァハが非情な人類に復讐しているのだと思っていました。しかし、ミァハは違いました。ミァハは、人類全体を苦しみの意識のない自分の世界へと連れていこうとしていました。我儘で純粋で凶暴なミァハに、トァンは「ミァハがハーモニーの世界を望むなら、私もそれを受け入れる。でもね、ミァハだけはそこに行かせない」と叫び、ミァハに銃口をつきつけました。トァンは「愛してる。ミァハ」と言うと、引き金を引きました。1発の銃声が響き渡り、ハーモニー計画は静かに実行にうつされました。
ハーモニーの結末:8.エピローグ:物語、終焉。
恒常的体内監視システム・ナノマシン「WatchMe」が、あるプログラムを書きました。
「<list: item><i: さよなら、わたし><i: さよなら、たましい><i: もう二度と会うことはないでしょう>」と…。
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