螢川の紹介:1987年日本映画。高齢の父の子として、元芸者の母の子として、多感な青年期を歩きはじめた竜夫に、同級生で幼なじみの英子が熱く語りかけてきます。「わたし忘れとらんよ、蛍のこと」。東宝映画出身の監督・須川栄三が、北陸富山を舞台に宮本輝原作の同名小説を映画化した作品です。
監督:須川栄三 出演者:三國連太郎(水島重竜)、十朱幸代(水島千代)、坂詰貴之(水島竜夫)、沢田玉恵(辻沢英子)、奈良岡朋子(春枝)、大滝秀治(大森亀太郎)、殿山泰司(銀蔵)ほか
映画「螢川」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「螢川」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
螢川の予告編 動画
映画「螢川」解説
この解説記事には映画「螢川」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
螢川のネタバレあらすじ:起
雪に閉ざされた北陸富山。わずかの晴れ間が消えると、またすぐに雪がちらついてきます。そして、雪は、昼夜を分かたず降り続いていきます。昭和37年(1962)冬。
水島竜夫は中学二年生です。そろそろ高校受験に身を入れなければならない時期ですが、おなじクラスの英子のことが頭から離れません。幼なじみの英子とは、家が近いこともあり、以前にはよく行き来していました。しかし竜夫の目に、英子が美しく大人びて見えるようになった頃から、竜夫は意識して英子を避けています。
英子は、幼い日のまま、構わず竜夫に近づいてきます。しかし竜夫は、嬉しさよりも気恥ずかしさが先に立ってそっぽを向いてしまいます。級友の関根圭太は「英子はええ匂いがするのぉ」と、素直に口にします。しかし竜夫は、英子の話題を避けてしまいます。
螢川のネタバレあらすじ:承
竜夫の父・重竜は、借金取りに追われ、破産寸前の身の上です。重竜はかつて仁王竜と呼ばれ、北陸では5本の指に入ると言われた実業家でした。しかし、ある時期から重竜の事業は停滞しはじめます。金沢から富山へ移ると、やがて表通りから路地へ居を移し、今では昼間から酒に浸ることが多くなっています。
重竜は、芸者をしていた妻・千代と52歳の時に一緒になりました。家庭を持っていたその頃、重竜に子どもはなく、竜夫の誕生を知るとすぐに長年連れ添った春枝から去り、千代と竜夫のもとへ向かいました。
後に残されたのは春枝でした。「春枝に罪も咎もなかった」。けど「古草履のように捨てた」と、重竜が竜夫に語ります。竜夫は動揺の色を隠せません。多分まだ少し、語るに早かったのかもしれません。
重竜の老いの身に冬が堪えたのでしょうか。あるいは酒の量が過ぎたのかもしれません。重竜は脳溢血で倒れてしまいます。
螢川のネタバレあらすじ:転
重竜が幼い竜夫と英子を前にかつて語ったことがありました。「4月に大雪が降った年には、川上に蛍の大群が現れる。蛍は狂ったように相手を探し、子を産んで死ぬ」。さらに「その様子を見た男女は、固く結ばれる」と。土地に残る伝承だと重竜が口にします。
幼い英子が「みんなで蛍を見にいきたい」と誘います。重竜が「英子ちゃんは竜夫と結婚することになってしまうよ」と応えると、英子は「竜ちゃんと結婚する」と無邪気に頷きます。
下校時に、英子が「わたし、忘れとらんよ」と幼い日の思い出を竜夫に語りかけてきます。「おやじのホラだ」と軽くあしらう竜夫にも、じつは英子の語った思い出が大切にしまわれています。もうすぐ4月になりますが、雪はまだ降り続いています
春。桜の満開を待っていたかのように父・重竜が死へ旅立ちます。親友の圭太は、中学三年生になったばかりの放課後、近くの川の深みにはまり死んでしまいます。竜夫の身辺に死の影が濃くなります。しかし、一方では、少しずつ何かが動き始めています。少年の竜夫を青年へと誘う動きかもしれません。富山にも初夏の訪れです。
螢川の結末
銀蔵爺さんが言っていました。4月の大雪が、蛍の年の目安ならば、「今年ほどの大雪はないわい」と。銀蔵爺さんは、蛍が群生するといわれる川上へ竜夫を連れていくと約束してくれました。夏は着々と近づいています。
夏の昼下り、重竜の別れた妻・春枝が訪ねてきます。春枝は和服を清楚に着こなす大店の奥様です。重竜の死によって積年の恨みを果たせた思いなのか、淡々と寄る年波を語る心境になっています。しかし別れ際、竜夫の前で泣き崩れます。それまで抑えていた激情が一時に突き上げてきたに違いありません。
それから数日して、銀蔵爺さんが竜夫を誘いにやって来ます。竜夫は「今夜でいいのか」と心配です。しかし「(蛍が)出るか否かは神様の思し召しじゃ」。そう言って竜夫を励ます銀蔵爺さんに、英子と千代が加わります。
川上へ向かった4人の前に蛍は現れます。暗闇を灯すどころではありません。まさに光の大群です。光が闇に溢れ、蛍は縦横に川の表を浮遊しています。竜夫は、英子の手を引きます。そして川の淵へ下りていきます。蛍はふたりに群れ集い、一群となって囲い込んでいます。竜夫と英子は体を寄せ合い、蛍の群れとひとつになって溶け合います。
以上、映画「螢川」のあらすじと結末でした。
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