稲妻の紹介:1952年日本映画。東宝所属だった成瀬巳喜男が大映に呼ばれて作った名作。「めし」で戦後のスランプを脱した監督が再び林芙美子作品を取り上げ、その後の作風を決定づけることになった。キネ旬ベストテンでは第2位。
監督:成瀬巳喜男 出演:高峰秀子(清子)、三浦光子(光子)、村田知英子(縫子)、丸山修(嘉助)、浦辺粂子(おせい)、小沢栄(綱吉)
映画「稲妻(1952年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「稲妻(1952年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「稲妻(1952年)」解説
この解説記事には映画「稲妻(1952年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
稲妻のネタバレあらすじ:起
清子は数えで23歳。東京の遊覧バスのガイドをやっています。きょうだいが3人いるのですが、母親が4回結婚したため、それぞれ父親が違います。まだ独身ですが、夫とともに洋品店を経営している姉・光子の家に下宿していました。そんな彼女のところへ、もうひとりの姉である縫子が縁談を持ってきます。
相手は両国でパン屋をやっている綱吉という男で35歳。なかなか商機を掴むのが上手く、店は職人を2人も使って繁盛していました。次は大崎でパン屋の支店を開いたり、渋谷で連込み旅館を経営するつもりです。
稲妻のネタバレあらすじ:承
姉はいい話だというのですが、姉たちの結婚生活をつぶさに知っている清子は、とても乗り気になれません。しかも実際に会った綱吉は押しが強いだけのどことなく下卑たタイプで、顔を見るのさえイヤでした。やがて光子の連れ合いの呂平が急に亡くなります。
葬儀を終えたところにその愛人と称する子連れの女がやってきました。呂平の保険を目当てに、子供の養育費をねだろうという魂胆です。しかし洋品店には借金もあるので、そんな余裕はとてもありません。おまけに縫子や兄の嘉助、おまけに母親までその保険金の分前を欲しいと言い出し、光子を嘆かせます。
稲妻のネタバレあらすじ:転
結局洋品店をたたむことになった光子は、綱吉が始めた連込み旅館を手伝うことになります。ところがいつの間にか縫子が綱吉とできてしまい、旅館に入り浸っては差し向かいに酒を飲んだりするので、光子としてはとても耐えられません。
しかも離婚を言い出された縫子の夫は綱吉を恨み、ビール瓶で殴りかかろうとしてひと騒動起こします。さらに綱吉は清子をも狙おうとしていました。清子はその誘いにウンザリし、勝手に世田谷の住宅地に貸間を見つけて引っ越してしまいます。
稲妻の結末
しかしゴタゴタはまだまだ続き、光子まで綱吉の愛人となり、縫子との間で喧嘩が勃発。光子は家出してしまい、行方知れずになります。清子のところにきたのでは、と思い、母親が貸間にやってきますが、清子は全く関知していません。
あまりのきょうだいのだらしなさに、清子は泣きながら「おかあちゃんのせいよ」と詰り、母親も泣き出してしまいます。しかし泣いたところで事態がおさまるわけではありません。しばらく泣くとお互いに気が済み、清子は駅まで母を送っていきます。
以上、映画「稲妻」のあらすじと結末でした。
「稲妻(1952年)」感想・レビュー
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素晴らしい作品ですね‼️14回観ました‼️何度観ても、昭和の27.8年の風景、銀座、両国橋、深川、ニコライ堂等私の子供時代にフィードバックします!
将に成瀬監督の「刹那さ」に涙組ながら観てしまいます‼️
「浦部母ちゃん」「高峰秀子の車掌「きよちゃん」バトルは「ずるずるべったり」から「ルビーの指輪」の本物で、稲妻の如く、心の響きが「クリアー」になるラストシーンに、感激しました‼️
成瀬監督の「流れる」「晩菊」に並ぶ「名作」です‼️
この映画を観ながら我が胸には様々な思いが去来し万感こみ上げ涙腺は緩む一方であった。私は1959年生まれではあるがこの映画の時代(1952年)の面影を留める下町で育った。昭和30年代~40年代の日本の下町の原風景がまるで昨日のことのように鮮やかに蘇る。モノクロならではの独特の色調(色合い)と陰影が実に見事で、カラーフィルムよりも落ち着いて心に響く心地よさがある。三姉妹が奏でる個性溢れる女の競演の、その三重奏がリアルにして迫力満点で実にお見事!唯一の男兄弟である南方戦線から帰還した嘉助の存在感の薄さもまた、この三姉妹を前にすればさもありなんである。女優陣が繰り出すセリフのリアルな迫力と、緻密で丁寧な演出の群を抜いた説得力には脱帽するしかあるまい。成瀬巳喜男は女それぞれの生きざまを七色の筆を使い分けて見事に塗り分けて見せた。その場その場を懸命に生き抜いてきた母のおせい、したたかで抜け目のない縫子、情に流されがちな光子、気丈でプライドが高い清子、養育費をせびる生活臭漂う田上りつ、間借り人の清楚な乙女、二人兄弟の妹で純真なつぼみ。高峰秀子が演じる清子は末っ子の女性像を完璧に体現していて誠に感動した。私は実母も含めて多くの事例を知っているからだ。どれだけ気丈に振る舞っていても女は泣く、必ず泣く、ここぞと言う所で見事に泣いて見せる。男なんぞがいくら気張ったところで最後は女の涙にみんな持って行かれる!クライマックスの浦辺粂子(母)と高峰秀子(末娘)の対峙は映画史に残る名シーンとして語り継がれるであろう。この映画の全てが愛しい。セットも小道具も好きだ。全てのカットとシーンが美しい。この作品に登場する全ての女性(女優)が最高に素晴らしい。こんなにも美しい映画はないと思う。「稲妻」は国宝級の傑作映画であり日本映画界が誇る不朽の名作である。