女性の勝利の紹介:1946年日本映画。田中絹代という稀代の名女優がどんな役柄でもこなしていたことが改めて窺える作品です。もちろん彼女自身が生前語ったように、溝口健二とタッグを組むことは大きな刺激となったのでしょう、真摯な女性の生き方を監督の要求通りに演じ切っています。女性弁護士という役柄を得て立つ法廷内の熱気はひとり田中絹代がつくり出していると言っても過言ではありません。その意味で田中絹代の抜擢こそこの映画の成功に他なりません。また生方敏夫カメラマンのカメラワークは特筆に値します。せまい日本家屋内で繰り広げる緊迫感あふれる会話シーンを、息継ぎのない長回し撮影でとらえて観る者を圧倒します。
監督:溝口健二 出演者:田中絹代(細川ひろ子)、桑野通子(河野みち子)、高橋豊子(ひろ子の母)、松本克平(河野周一朗)、若水時子(河野の母)、徳大寺伸(山岡敬太)、三浦光子(朝倉もと)、紅澤葉子(もとの母)、内村榮子(ゆき子)、長尾敏之助(水島)、風見章子(原田時枝)、若水絹子(とみ)奈良真養(裁判長)ほか