ジャガーノートの紹介:1974年イギリス映画。赤青どちらの線を切るべきか。映画の爆弾処理でよく見る場面だが、その元祖と言われているサスペンスドラマ。リチャード・レスター監督がいつものギャグ描写を最小限にとどめ、息詰まるサスペンスを盛り上げている。
監督:リチャード・レスター 出演:リチャード・ハリス(ファロン)、オマー・シャリフ(ブルネル船長)、シャーリー・ナイト(バニスター夫人)、アンソニー・ホプキンス(マクレオド警部)、イアン・ホルム(ポーター専務)、ほか
映画「ジャガーノート」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ジャガーノート」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ジャガーノート」解説
この解説記事には映画「ジャガーノート」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ジャガーノートのネタバレあらすじ:起
1200人を乗せた大洋航路船ブリタニック号がサウザンプトン港で出発を待っています。大勢に見送られて出港した船はやがて大西洋に出ます。天候は荒れ模様でしたが、航行は順調でした。その頃、ロンドンにいた船主のニコラス・ポーターのところへ電話がかかります。相手はアイルランド訛りがあり、「ジャガーノート」と名乗りました。そして「ブリタニック号に7つの混合爆薬を仕掛けた」というのです。犯人によれば爆薬はタイマーと繋いであり、翌日の夜明けには爆発する予定です。下手にタイマーを解除しようとすると爆発する仕組みになっています。「こちらが解除方法を教える代わりに50万ポンドを支払え」というのが彼の要求でした。これが冗談でないことを示すため、犯人は小さな爆発を船内で起こしました。おかげで船員が負傷。夜明けまではもう22時間しかありません。船主は慌てて警察に連絡を取ります。
ジャガーノートのネタバレあらすじ:承
事態を重く見た警察は政府や軍とも協力態勢を取り、身代金の支払いは断固拒否する姿勢を取ります。そして海軍は爆弾処理のベテランであるファロン中佐とその部下たちをブリタニック号へ。一方でスコットランドヤードは爆弾設計に携わる人間をターゲットに捜査を進めます。処理班はまずロボットによる遠隔作業で解体を進めますがうまくゆかず爆発。船へのダメージが大きいため、残った爆弾は処理班が一人づつ受け持ち、同時に作業をすすめることにします。
ジャガーノートのネタバレあらすじ:転
ファロンはまず自分が一段階処理をした後、部下が同じ処置をさせるようにして、同時に爆発が起きないように努めますが、信頼する部下であるチャーリーがうっかりブービートラップに引っかかて爆死。ショックを受けたファロンは作業を止め、身代金を支払うように上層部に直訴します。しかし、犯人との交渉はうまくゆかず、ファロンは再び作業をすすめることに。一方、警察はバックランドという元軍人を逮捕、取調べをしていました。彼が犯人であることはまず間違いがありません。タイムリミットがあと2時間に迫った時、ファロンは彼と直接話したいと申し出ます。赤と青の線のどちらかが時限爆弾につながっていて、今はそのどちらかを切ればいい状態でした。
ジャガーノートの結末
夜明けまであと数分に迫った時、バックランドは青の線を切ればいいと突然言い出します。ファロンは迷います。一旦青を切ろうとした時、赤を切るよう、ファロンは部下に命じます。かつてバックランドの部下だったファロンは彼の性格を見抜いていたのです。爆弾は無事解体。船は安全に運行を続けました。
“豪華客船に仕掛けられた時限爆弾の処理に、才智と勇気をかけて挑む男を描いたスリリングなサスペンス映画の傑作「ジャガーノート」”
この映画「ジャガーノート」は、1970年代の世界的なオカルト映画とパニック映画の二大ブームだった頃、そのムーブメントの中で製作されたパニック映画の系譜の1本で、北大西洋上に浮かぶ豪華客船ブリタニック号を舞台にした、スリリングなサスペンス映画の傑作です。
「この船に7個の時限爆弾を仕掛けた」と、”ジャガーノート”と名乗る男から脅迫電話がかかって来ます。そのメガトン級の爆弾が20数時間後に爆発すれば、乗客1,200人の命が危険にさらされます。
そこで、海軍から爆薬専門のオーソリティ、ファロン中佐(リチャード・ハリス)を班長とする7名の爆薬処理班が、悪天候を衝いて、パラシュートでブリタニック号に送り込まれます。
そして、この映画はファロン中佐の大胆不敵とも思われる勇気ある行動を、ハラハラ、ドキドキのサスペンス溢れるタッチで描いていきます。
残された時間はわずか数時間。この時間内に爆弾7個を処理しなければならず、刻一刻と迫りくる危機に挑む爆薬処理班の男たち。
偉大なる職人監督、リチャード・レスター監督の、スリリングに緊張感を盛り上げていく演出が見事です。
ファロン中佐は、爆弾が仕掛けられた緑色のドラム缶に立ち向かいます。
自分で自分を励ましながら、静かにネジを回し、線を切り、慎重に爆弾の解体作業にとりかかるのです。
その後の、この爆弾処理を扱った映画のお約束事となった、残された2本の線のどちらか1本を切れば解除、間違えば爆発という、映画好きにとっては伝説となった有名な場面も登場して来ます。
この緊迫した場面は、リチャード・ハリスの張りつめた演技が緊張感をみなぎらせ、息づまるような迫力の盛り上がりを見せてくれます。
このファロン中佐は、一見するとタフで豪放な人物のようで、1,200人の生命を守るために才智と勇気をかけて爆弾に挑戦したわけですが、心の底では彼自身も恐怖を感じていたというのがわかります。
というのは、この映画のラスト近くで、彼は海軍省対策本部に接続されているスピーカーを通して、真犯人に向って、「俺は君より若いし、爆薬処理も下手だ。俺は怖い」と、つぶやくのです。
このように、ファロン中佐をありきたりのスーパーマン型のヒーローにせず、あくまでも、普通の生身の人間として描き、恐怖心を抱きながら危険な作業に取り組む彼の勇気を、クローズアップして描いたところが、この作品を面白くした要因のひとつだと思います。