突然炎のごとくの紹介:1961年フランス映画。「彼女はとくに美しくもない、聡明でも誠実でもない。だが、女そのものだ」と作品の中でジュールに語られるカトリーヌ。彼女を愛するジュールとジム。白黒の美しい映像と即興的でみずみずしい演出。
監督:フランソワ・トリュフォー 出演者:ジャンヌ・モロー(カトリーヌ)、オスカー・ヴェルナー(ジュール)、アンリ・セール(ジム)、ボリス・バシアク(アルベール)
映画「突然炎のごとく」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「突然炎のごとく」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「突然炎のごとく」解説
この解説記事には映画「突然炎のごとく」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
突然炎のごとくのネタバレあらすじ:起・パリの親友たち
1912年頃、オーストリア人の青年ジュールはフランス人の青年のジムと知り合う。お互いの言語を教え合い、文学について語り合う。二人は常にいっしょに過ごした。もっとも、女性に大もてのジムに対して、ジュールはなかなかいい女性に巡り合えなかった。二人はジュールの友人である歌手のアルベールの家の幻燈で見た、アドリア海の島にある女神の石像の写真に魅了され、それを直に見るために島を訪れた。その後、二人は、ジュールのいとこの友人のカトリーヌと知り合う。彼女の顔は石像の女神そっくりだった。三人は親しくなり、いっしょに旅に出るようになる。カトリーヌは結婚向きではないとジムは思うが、ジュールは彼女との結婚を考えるようになる。ある晩、三人で芝居を見に行く。芝居が終わった後、道を歩きながら、ジュールとジムがカトリーヌの存在を忘れたかのように芝居について話し合っているとカトリーヌはいきなりセーヌ川に飛び込んでしまう。川から上がったカトリーヌはジムに次の日の7時に会おうと約束する。ジムは約束に少し遅れて待ち合わせ場所のカフェに行くが、彼女は来ない。カトリーヌが現れたのは待ちくたびれたジムが去った後だった。翌朝、ジュールがジムに、カトリーヌとの結婚が決まったと電話する。間もなく戦争が始まり、ジュールとジムはそれぞれの国の兵士となった。ジュールと結婚したカトリーヌには娘が産まれた。
突然炎のごとくのネタバレあらすじ:承・山荘の生活
戦争が終わり、ジュールとジムは文通を再開する。数年後ジュールはライン川上流にある彼の山荘へジムを招く。ジムはライン川流域で戦争の傷跡をたどって新聞に掲載する旅行記を書きつつ、ジュールの家へと旅した。ジムはジュールとカトリーヌと娘のサビーヌが住む山荘の側に宿を取った。ジュールも作家となり昆虫等について書いていると言う。だが、彼らの生活はどこか円満には感じられなかった。ジュールはジムにカトリーヌとの仲がうまくいっていないことを告白する。彼女には三人の愛人がいたし、六か月間家を去っていたことがあるという。戦争で負傷して今は山荘の近くで暮らしているアルベールも愛人の一人だった。ある晩、ジムとジュールがビールを飲んでいるときに、カトリーヌは、フランス人はビールが嫌いよと言ってワインの種類を数々まくしたてる。二人が話に乗ってこないとジムを外に連れ出して、彼女の視点からジュールとの夫婦生活を説明するのだった。
突然炎のごとくのネタバレあらすじ:転・三狂人
ある晩、ジュールはジムに電話して、自分が貸したゲーテの『親和力』をカトリーヌが読みたがっているので返してくれと言う。そして、彼女と結婚してくれと頼む。カトリーヌと親友のジムが結婚してくれれば、カトリーヌが自分の元を去ることはないとジュールは考えたのだった。『親和力』をもってきたジムはカトリーヌと結ばれる。ジムが山荘に越してくる。三狂人と周りの人に言われたが、サビーヌを含めて楽しく生活する。新聞社の用事でジムが恋人だったジルベルトのいるパリにもどったことはカトリーヌの機嫌を損ねてしまうが、予定通り、山荘に戻ったジムとカトリーヌの結婚生活が始まる。しかし、最初は幸福だったものの、カトリーヌが望むジムの子供ができないことから破局が訪れ、ジムはパリに帰る。パリで病気になったジムはジルベルトの元に身を寄せている。そこにカトリーヌからジムの子供を妊娠したという手紙が届く。一度は山荘に戻ろうとしたジムだが、流産だったという手紙がジュールから届いた。
突然炎のごとくの結末:再びパリで
パリでジムは偶然ジュールと再会する。ジュールは山荘を引き払い、精神的に不安定な妻を連れて郊外の水車のある家に引っ越していた。ジムはジュールの家を訪れる。三人は、やはりフランスにもどってきていたアルベールの家へ行くが、カトリーヌはジュールとジムを帰してアルベールの家に泊まってしまう。 水車のある家に呼ばれたジムはカトリーヌから求愛されるが、ジルベルトと結婚するという決意を語る。するとカトリーヌが拳銃を彼の方に向けるのでジムは逃げ出す。
数ヶ月後、映画館で焚書についてのニュース映画を見ていたジュールとカトリーヌは偶然、観客の中にジムを発見する。三人は湖畔のカフェに行く。カトリーヌは自分の自動車にジムを乗せる。カトリーヌの運転する自動車はジュールの目の前で、壊れた橋から転落する。ジュールは二つの棺が火葬場に運ばれ、二つの骨壺が棚に安置されるのを見守ることになる。
このフランス映画「突然炎のごとく」は、ヌーヴェルヴァーグの旗手フランソワ・トリュフォー監督の最高傑作だ。
奔放で炎のように激しい女を、親友同士の二人の男が、同時に愛してしまう。
奇妙な三角関係の中で揺れる男性心理を描いた、ロシェの小説の映画化だが、トリュフォーは、あたかも古い写真帳をめくるような感じを意識した、ロングショットの映像とリズミカルな語り口で、巧みに表現している。
主演のジャンヌ・モローの生き生きとした演技が素晴らしく、この最高傑作に永遠の輝きを与えていると思う。