序の舞(じょのまい)の紹介:1984年日本映画。明治・大正・昭和と3つの時代を駆け抜けた女流画家・上村松園の生涯をモデルとした宮尾登美子の同名小説を映画化した作品です。未だ古い慣習に縛られ続けている明治時代の京都を舞台に、未婚の母として強く生き抜いた女流画家の波乱の生涯を描きます。
監督:中島貞夫 出演者:名取裕子(島村津也/島村松翠)、岡田茉莉子(島村勢以)、水沢アキ(島村志満)、佐藤慶(高木松溪)、風間杜夫(西内太鳳)、三田村邦彦(村上徳二)、小林綾子(少女時代の島村勢以)、三沢慎吾(斉藤松洲)、野口貴史(橋田雅雪)、草薙良一(滝川恭山)、岩田直二(今尾景年)、川浪公次郎(菊地芳文)、白川浩二郎(望月玉泉)、江幡高志(薬屋の老人)、市川好朗(高浜の漁師)、草薙幸二郎(勢以の叔父)、細川純一(利作)、和歌林三津江(勢以の祖母)、山村紅葉(商家の女子衆)、岡島艶子(坂本の老婆)、白井滋郎(勢以の婿養子)、なぎらけんいち(川上音二郎)、成田三樹夫(山勘)、三田佳子(喜代次)、菅井きん(島村麻)、高峰三枝子(ちきりやの内儀)、市原悦子(ナレーション)ほか
映画「序の舞」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「序の舞」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
序の舞の予告編 動画
映画「序の舞」解説
この解説記事には映画「序の舞」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
序の舞のネタバレあらすじ:起
江戸時代も終わりに近づきつつあった1858年(安政5年)の洛北・大宮村。当時9歳だった少女・勢以(岡田茉莉子、少女時代:小林綾子)は、8人家族の農家で生まれ育ちました。
勢以の母・麻(菅井きん)はあまりにも家が貧しかったため、勢以を京都で葉茶屋「ちきりや」を営む島村家に養女に出しました。それからというもの、勢以は養父母から茶葉の技術や店の経営などを教わっていきました。
やがて時代は江戸から明治になりました。1869年(明治2年)、20歳になった勢以は相次いで養父母を亡くしました。翌1870年(明治3年)、勢以は彫り物職人だった男(白井滋郎)を婿養子を迎え、長女・志満(水沢アキ、子供時代:高橋美樹、少女時代:杉沢美紀)と次女・津也(名取裕子、少女時代:野口一美)という子宝に恵まれました。
しかし、5年後の1875年(明治8年)、夫は突然この世を去り、勢以は26歳にして未亡人となりました。それ以来、真面目で負けん気の強い勢以は女手ひとつで二人の娘を育て、懸命に「ちきりや」を守り続けてきました。
そんなある日、勢以の元を麻が訪ねてきました。麻は娘のどちらか一人を養女に出すよう勧めてきましたが、自分が養女に出されたことを今でも恨んでいる勢以は絶対に娘たちを手放さないと頑なに拒否しました。
志満と津也はすくすくと育っていき、やがて小学校に入学しました。この頃から津也は絵画の才能の鱗片を見せ始め、絵で初めて賞を取りました。教師の西内太鳳(風間杜夫)は津也の才能を高く評価し、小学校を卒業したら絵画塾に通うことを勧めました。
志満も津也の夢を応援しましたが、勢以は女の幸せとは良い男との結婚であり、絵で食べていくことは難しいとして猛反対しました。しかし、夢を諦めきれない津也は小学校を卒業すると名の知れた画家・高木松溪(佐藤慶)が主宰する絵画塾「松溪塾」に入りました。
序の舞のネタバレあらすじ:承
1890年(明治23年)。16歳になった津也はめきめきと才能を開花させていき、第3回内国勧業博覧会に出展した「四季美人図」が一等褒状を受賞しました。この絵は来日していたイギリスのヴィクトリア女王の第三王子コノート殿下が60円で購入し、津也は一躍天才少女画家として有名になりました。
自分の絵が大金という形で評価されたことに、津也は勢以や志満と喜びを分かち合いました。松溪は津也に“松翠”という雅号を授けました。
そんなある日、津也が卒業後も慕っていた恩師・太鳳が絵画の勉強のためヨーロッパに旅立つことになりました。4、5年は帰ってこないという太鳳の言葉に津也は泣き崩れ、それからというもの寂しさを紛らわすかのように黙々と絵画の勉強に没頭していきました。
津也と同じ「松溪塾」の門下生である村上徳二(三田村邦彦)は次第に津也に惹かれ初めていました。津也もまた徳二に淡い想いを抱くようになっていましたが、志満も徳二への想いを抱いていました。
1891年(明治24年)。津也は松溪に夕飯に誘われて料亭に行きました。松溪は妻帯者であるにも関わらず津也に強引に男女の関係を迫ってきました。この時代は師弟の関係は非常に厳しく、展覧会の審査員も務める松溪に逆らうことは絵描きの夢を諦めざるを得ないことであり、津也は泣く泣く松溪を受け入れざるを得ませんでした。
津也は徳二への想いを封じ、その後も松溪との関係を続けるようになっていました。そのことを知らない徳二は津也への変わらぬ想いを抱き続け、そんな徳二の様子に胸を痛めた志満は、勢以が養父母の代からお世話になっている「ちきりや」の内儀(高峰三枝子)の勧めで西陣の他家に嫁入りし、「ちきりや」を去っていきました。
津也は勢以と二人暮らしとなりました。やがて徳二は津也が松溪と関係を持っていたことを知り、自分の絵の才能に見切りをつけて「松溪塾」を去っていきました。
序の舞のネタバレあらすじ:転
1893年(明治26年)。津也は国主催の絵画展で入賞をし、いよいよ本格的に一人前の画家として認められるようになっていました。そんな時、津也はまだ独身であるにも関わらず妊娠してしまい、勢以からそのことを問われるとお腹の中の子の父は松溪であることを明かしました。勢以は津也を責め、絵を学ばせたことを深く後悔してしまいました。そして勢以は津也を人里離れた田舎の坂本の老婆(岡島艶子)の家に住まわせました。
やがて津也は赤ん坊を出産しましたが、勢以は乳児を極秘裏に里子に出す仕事を請け負っている喜代次(三田佳子)に頼み、津也が産んだ子を里子に出してしまいました。津也は身勝手な男のせいで望まぬ子供を身籠ってしまう女の苦悩と我が子と引き裂かれた屈辱に打ちひしがれ、勢以の元には戻らず失踪してしまいました。勢以は津也を心配しながらも、津也が絵を辞めるまでは決して「ちきりや」の敷居を跨がせないと頑なに誓いました。
津也が向かった先は、東京の芝居小屋で舞台背景を描く仕事に就いていた徳二の元でした。しかし数日後、津也はかつての恩師だった太鳳が帰国し、新進気鋭の画家として脚光を浴びていることを知りました。
津也は徳二の元を去り、長浜の昌徳寺に滞在していた太鳳の元に向かいました。自分にはやはり絵を描くことしかできないと悟った津也は太鳳にこれまでのことを素直に打ち明けました。松溪との決別を決意していた津也は太鳳の弟子入りを許され、太鳳は津也に一軒家を与えて絵の勉強を続けさせました。
1896年(明治29年)。津也が描き上げた絵は第5回日本美術院展において松溪の作品よりも上位の第一等に輝きました。津也は光彩堂の主人(北村英三)に誘われて祝いの席に行くと、そこには何と松溪の姿がありました。津也は松溪に騙されたことに気付きましたが、それでも意を決して松溪と再会しました。松溪は涙ながらに妻に死なれたことを語り、ついほだされてしまった津也は再び松溪に抱かれてしまいました。
序の舞の結末
津也は再び松溪との子を身籠ってしまいました。津也はそのことを松溪に話すと、松溪は「誰の子か」と冷たく突き放しました。松溪は津也が自分を捨てて太鳳の元に身を寄せていること、そして何よりも津也が自分よりも成功を収めていることに嫉妬しており、松溪は津也と再び関係を持つことで彼女を精神的に支配して優越感に浸ろうと考えていたのです。津也は松溪の卑しさに打ちのめされました。
松溪は画壇の会合で太鳳と鉢合わせしました。松溪は津也を巡って太鳳と口論になり、「津也は今でも俺の女。その証拠にあいつのお腹には俺の子が宿ってる」と告げました。津也から事実を確認した太鳳は津也を破門してしまいました。
画家としての道を閉ざされ、絶望した津也は福井の高浜に逃れました。津也は入手した堕胎薬を飲んで子を堕ろそうとしましたが失敗し、自らの命を失いかけました。地元漁師からの電報を受け取った勢以は現地に向かい、一命をとりとめた津也と再会を果たしました。
津也の人知れぬ苦悩、そして里子に出した津也の子がわずか4歳で夭折していたことを知った勢以は津也を許し、家で産んで育てろと告げました。津也は勢以と和解を果たし、京都の家に戻って男の子を出産しました。
父なし子を産んだことで津也は世間から冷たくあしらわれ、麻も世間体が悪いと責めました。しかし、勢以は毅然とした態度で津也を庇い、麻に対しては親子の縁を切ればいいと啖呵を切りました。勢以は津也に、たとえ外は厳しくても家の中が温かければそれで良いと励ましました。
そして3ヶ月後、改めて津也の覚悟を受け止めた太鳳は彼女を許し、破門を撤回しました。ようやく画壇への復帰を果たした津也は、女性が赤子を抱く絵を描き始めました。
1918年(大正7年)、第一回文展の会場では津也の描いた絵画「母子」が注目を集めていました。すっかり年老いた松溪はただ呆然と立ち尽くし、絵を見上げていました。
以上、映画「序の舞」のあらすじと結末でした。
この映画の感想を投稿する