花様年華(かようねんか)の紹介:2000年香港映画。「愛は、もうはじまっている。」と1960年代の香港を舞台に、大人の切ない恋をスタイリッシュ綴ったウォン・カーウァイ監督のラブロマンス映画です。主演は『HERO』(2002年)のトニー・レオンとマギー・チャン。トニー・レオンがカンヌ国際映画祭男優賞を受賞するなど、数々の賞を受賞した作品です。
監督:ウォン・カーウァイ 出演:トニー・レオン(チャウ)、マギー・チャン(チャン夫人)、スー・ピンラン(ピン)、レベッカ・パン(スエン夫人)、ライ・チン(ホウ社長)、ほか
映画「花様年華」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「花様年華」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
花様年華(かようねんか)の予告編 動画
映画「花様年華」解説
この解説記事には映画「花様年華」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
花様年華(かようねんか)のネタバレあらすじ:起・隣人
「女は顔を伏せ、近づく機会を男に与えるが、男には勇気がなく、女は去る。」
1962年の香港、偶然同じ日に同じアパートへと引っ越してきた新聞記者・チャウと商社の社長秘書・チャン夫人は、隣人となりました。既婚者である二人は大家のスーエン夫人の仲立ちもあり、次第に親しくなっていきました。そんなある日、二人は一緒に食事に行きました。「タイをどこで?」「分からない。いつも家内が買ってくる。このタイは海外出張の時に買ってきてくれた。香港にはない」「バッグと同じ…」「そうだね」「実を言うと、主人も同じのを…」「家内も同じバッグを…」「知ってる…。見たわ。感づいてた?」二人は互いの伴侶が不倫関係に陥っていることを知ってしまいました。
花様年華(かようねんか)のネタバレあらすじ:承・密会
それ以来、二人は頻繁に密会を重ねるようになりました。「独身の時は色んなことができた。だけど結婚するとそうはいかない。お互いに…」「…」「独身なら、どうなってたか…」「もっと幸せに…。結婚生活って難しいわ…。自分だけ頑張ってもダメね…」「心配ないさ。ご主人はすぐ戻ってくる」「あなたは?」「同じ境遇だが、悩まない。くよくよ自分を責めても時間のムダさ…。人生は短い。別の生き方を…」「どう生きるの?」二人の間にはいつしか愛が芽生えていました。
ある日、新聞の連載小説を書き始めていたチャウを手伝うため、チャン夫人は彼の部屋を訪ねました。直ぐに帰るつもりのチャン夫人でしたが、隣人宅で麻雀が続き、帰れなくなってしまいました。そして次の朝、チャン夫人は密かに出て行きました。そこにはチャン夫人のスリッパが残されました。
「部屋を探す」「どうして?」「書斎代り。安心して会えるよ。僕たちは潔白だけど、ウワサ話は困る。同感だろ?」連載小説が軌道に乗ってきたチャウは、原稿料で家を借りると言い、チャン夫人を誘いました。「一線は守りたい」チャン夫人は拒否しましたが、連載小説を口実に二人は書斎代りに借りたチャウの家で密会を重ねるのでした。
花様年華(かようねんか)のネタバレあらすじ:転・別離
しかし、禁じられた愛とする二人の間に重苦しい空気が漂い始めました。ある雨の日、ついに二人が別れを決意しなければならない時が来ました。「切符の手配を頼める?」「…どこまで?」「シンガポール…」「いつまで…」「行ってみないと見当も…」「…なぜ急に外国へ…」「気分転換さ…。ウワサは嫌だ」「何もしてないのに?」「悪いのは僕だ」チャウは未練を残したくないと、自ら去ると言いました。「ご主人が帰国?」「臆病な女ね…」「違うさ…。もう会わない。ご主人を大切に…」別れの練習をしながら、チャン夫人は悲しさの余り、チャウの胸で泣いてしまいました。
「花のように魅惑的な年、月のように輝く心。氷のように清い悟り、楽しい生活。深く愛しあう二人。満ち足りた家庭…♪」それぞれの家に帰った二人を『花様的年華』が静かに包み込みました。
「切符がもう1枚取れたら、僕と来ないか」「切符がもう1枚取れたら、連れてって」間もなくチャウはシンガポールへと旅立ちました。
花様年華(かようねんか)の結末:別離
1963年、チャン夫人と別れたチャウは、シンガポールで働いていました。部屋にあまり帰らないこともあり、チャン夫人のスリッパが消えていることになかなか気づきませんでした。彼女が留守中に訪ねてきたのかとチャウは思いを巡らしました。その頃、チャン夫人は夫と別れて暮らしていました。寂しさのあまり、チャン夫人はチャウに電話をかけますが、言葉が見つからず切ってしまうのでした。
1966年、香港、チャン夫人はスーエン夫人に久しぶりに会いに行きました。同じ頃、チャウも香港を訪れますが、二人はすれ違いに終わるのでした。
時は移ろい、あの頃の名残は何もなくなり、チャウはカンボジアのアンコールワットにいました。チャウは遺跡の穴の開いた柱を見つけると、顔を近づけました。何か囁いているようですが、誰にも分かりません。修行中の少年僧がただその姿を見つめていました。そして、チャウは遺跡から静かに姿を消しました。
「男は過ぎ去った年月を思い起こす。埃で汚れたガラス越しに見るかのように。過去は見るだけで、触れることはできない。見える物はすべて幻のようにぼんやりと…」
「花様年華」感想・レビュー
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男と女、二人の心。
よく映画であるような俗なシーンは無くても、通いあいつつも不安に揺れる気持ち。
何とも言えません。 -
この映画には、いくつも特筆すべき点がある。
まず、どこかくぐもったような印象を与える映像が、深みがあってノスタルジーをそそる。実に奥行きのある、いい映像だ。
そして、チャン夫人(マギー・チャン)のあまりにも素敵な後ろ姿。ヒップからウエストにかけての心を揺さぶるラインは官能的でさえある。
音楽もいい。手も握るのをためらう潔癖で純真な2人の関係は、清潔、清楚そのものだ。
チャン夫人は全編を通して美しい色合いのチャイナドレスを着ているが、映像美の大半は、彼女の着こなすチャイナドレスによるところが大きい。
この映画は、この女優さんでなければ成り立たなかったと思う。
舞台は1962年の香港。
あるアパートに、2組の夫婦が引っ越してくる。
新聞社に勤めるチャウ氏(トニー・レオン)と、その妻が1組。
もう1組は社長秘書のチャン夫人(マギー・チャン)とその夫だ。しかし作中に登場するのはチャウ氏とチャン夫人のほうだけで、それぞれの伴侶は1度も出てこない。
というのも、それぞれの伴侶、チャウ氏の妻と、チャン夫人の夫は相互が不倫関係にあるのだ。それが分かって以来、チャウ氏とチャン夫人は2人きりで会う機会が多くなっていく。
しかしこの物語の途中、チャウ氏とチャン夫人は肉体関係ができてしまったのか、そうでないのか、観客には今ひとつよく分からない。
説明をギリギリまで削り、チャウ氏もチャン夫人も、「僕たちは潔癖だけど」とか、「一線をこえたくないの」など、肉体関係がないことを示すセリフを何度か口にするだけだ。
しかし、そういうセリフがある以上、それはないと見ていいのだろう。むしろ、チャウ氏の書く新聞小説をチャン夫人が手伝うという、建設的な関係であるようにもにも見える。
ある日、チャウ氏は、同僚が仕事を手伝ってくれというので、シンガポール行きを決める。
チャン夫人を本気で愛してしまったチャウ氏は、チャン夫人が夫と別れる気がないのを知って、自分から身を引く決意をしたのだ。
最後の2人の様子や、帰り際のチャン夫人の態度から、どうやらとうとう一線を越えたらしいことが分かる。
翌年、チャウ氏は、シンガポールの自分の部屋に置いてあったチャン夫人のスリッパがなくなっていることや、口紅の付いたタバコの吸い殻が部屋にあったことから、チャン夫人が自分の部屋を訪れたことを知る。
チャン夫人は何を伝えにきたのだろうか?
夫とはどうなったのだろう。
しかし、再会は叶わなかった。その後、チャウ氏は同僚に言う。
昔、大きな秘密を抱えるものは、大木の幹に掘った穴に秘密を囁き、穴を土で埋めて、秘密が永遠に漏れないように封じ込めたのだ、と。1966年香港。
幼い子供を連れたチャン夫人は、再び元の、同じアパートで暮らし始めていた。
その子供が誰の子供なのか、はっきりとは分からない。もしかしたら、チャウ氏の子供なのかもしれない。それから暫くして、チャウ氏はそのアパートを訪れるが、チャン夫人が住んでいるとは思いもよらず、去っていく。
その後カンボジアへ渡ったチャウ氏は、アンコールワットの遺跡の壁に穴を見つけ、そこに自分の秘密を囁き、土で埋める。
最後に、チャン氏はたった1度の関係も、永遠の秘めごととして、慎ましく土の中に埋めたのだった。
もう何年も前に観ました。濃厚なラブシーンなどないのに、胸が苦しくなるような、大人の恋に酔いしれて・・・3拍子のリズムに乗せて流れる弦楽器のメロディが、余計に思いを掻き立てます。