ここに泉ありの紹介:1955年日本映画。監督今井正、脚本水木洋子の名コンビによる、日本の地方管弦楽団の草分け的存在である群馬交響楽団(映画の中では高崎市民フィルハーモニー)の草創期の実話を基にした作品。ただし、劇中の演奏は東京交響楽団によるもの。この映画の中でも歌われる「赤とんぼ」の作曲者山田耕筰と、若き日の、90歳代で現役ピアニストである室井摩耶子が本人役で出演している。
監督:今井正 出演者:岸恵子(佐川かの子)、岡田英次(速水明)、小林桂樹(井田亀夫)、三井弘次(丸屋)、加東大介(工藤)、山田耕筰(本人)、室井摩耶子(本人)、ほか
映画「ここに泉あり」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ここに泉あり」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ここに泉あり」解説
この解説記事には映画「ここに泉あり」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ここに泉ありのネタバレあらすじ:起・花束
昭和21年、春。群馬県高崎市に生れた高崎市民フィルハーモニーの楽団員は超満員の汽車に大きな楽器ごと乗り込む。各地の学校を巡回して公演をすれば安定収入になるという算段だが、小学生たちはまるで演奏を聴こうとしない。
マネージャーの亀さんこと井田亀夫は、市民オーケストラだった楽団のプロ化を進めようと東京からコンサートマスターとして速水を招くが、練習場の下の喫茶店まで来て速水は楽団のレベルの低さを知り、書置きを残して帰ってしまう。
だが亀さんは急用だとだまして速水を走り出した汽車から下ろし、駅から楽団員の寝泊まりする長屋まで連れてくる。とんでもない所に来てしまった速水だが、唯一の女性団員佐川かの子がピアノを練習するのを聴いてやる気が出てくる。
速水は楽団員に練習への完全参加を要求し、その結果、本業の片手間に音楽をせざるを得ない古株の団員は楽団を去ってしまう。軍楽隊上りの工藤や丸屋等、マネージャーを含めて一行7人に減った楽団は次の学校で公演をするが、観客は次々と土砂降りの中を帰っていく。
しかし、帰りがけにかの子が一人の少女から花束をもらい、一人でも真剣な観客がいたことを知った楽団員たちはとてもいい気分になる。
ここに泉ありのネタバレあらすじ:承・音にならない拍手
東京のオーケストラのマネージャーが速水を訪れ、彼を引き抜こうとする。楽団は山奥の鉱山に公演に行くが、そこへ歩いていく途中、ある村で休憩した時、速水とかの子は森を散歩する。この楽団を去るのかと心配して尋ねるかの子に、速水はそれを否定し、かの子に接吻する。
1年後、速水とかの子は結婚していて、かの子には子供が生まれようとしていた。高崎市民フィルハーモニーは山田耕筰指揮の交響楽団とピアニスト室井摩邪子を招いて合同大演奏会を開く。昔の団員達も協力し大盛況だったが赤字に終わる。
そして、かの子はピアニストとして自分が他の人に遅れをとりつつあるのを感じ焦りを抱き、他の団員も実力のなさを知り、ある者はさらに音楽を勉強するために楽団を去っていった。
楽団は再び公演旅行に出る。ハンセン病療養所では、患者たちが皆真剣に音楽に耳を傾け、不自由な手で音にならない拍手をし、最高の演奏会になった。そのころ、かの子は難産で死線をさまようが、速水たちが帰って来た時に二人の最初の子供が生まれていた。
ここに泉ありのネタバレあらすじ:転・分教場の子供たち
速水は子供たちの才能を開発しようと楽団の練習場で子供たちにバイオリンを教えるようになる。だが、楽団の経営はいっそう苦しく、練習場を追い出されることになる。工藤や丸屋はチンドン屋をして金をかせぎ、家を抵当に入れた亀さんの妻は派手な夫婦げんかの後、娘を連れて家を出ていく。
ピアノが売られる状況に及び、楽団員たちは会議を開くが、丸屋が仲間の楽器を質に入れてしまったことが発覚し大げんかになる。結局楽団は解散と決まるが、既に決まっている最後の公演はきっちりやろうということになる。
利根の奥にある学校へ楽団員は行く。かの子も赤ん坊を背に参加する。聴衆は山奥の分教場から集まった子供たちだ。この公演では一つ一つ楽器を紹介する。子供たちは真剣な目でそれを見てくれる。再び素晴らしい公演になった。
ここに泉ありの結末:第九交響曲
数年後、旅行中の山田耕筰は次の停車駅が高崎であるというアナウンスを聞いて数年前の合同演奏会を思い出す。あのオーケストラはどうしたのかと思った山田は高崎で降りる。
高崎市民フィルハーモニーは新しい練習場で速水の指導の元活動を続けていた。工藤や丸屋も楽団に留まり、団員は増えていた。練習の水準の高さに感心した山田はその場で指揮を始める。再び合同演奏会をすることが決まる。
演奏会当日、ベートーヴェンの第九交響曲を聴く草創期の団員たちはかつての巡回公演の苦労を思い出すのだった。
以上、映画「ここに泉あり」のあらすじと結末でした。
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