パリは霧にぬれての紹介:1971年フランス, イタリア映画。パリに暮らすフィリップとジルのアメリカ人夫婦。ジルの心の病が夫婦と二人の子供の生活に影を落としていた。そんなとき子供たちがジルの前から姿を消す。果たして誘拐なのか?『禁じられた遊び』、『太陽がいっぱい』のルネ・クレマン監督が『俺たちに明日はない』、『華麗なる賭け』のフェイ・ダナウェイを主演に迎えたサスペンス映画。
監督:ルネ・クレマン 出演者:フェイ・ダナウェイ(ジル・ハラード)、フランク・ランジェラ(フィリップ・ハラード)、バーバラ・パーキンス(キャシー)、カレン・ブランゲノン(「ハンセン」と名乗る女)、モーリス・ロネ(組織の男)ほか
映画「パリは霧にぬれて」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「パリは霧にぬれて」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「パリは霧にぬれて」解説
この解説記事には映画「パリは霧にぬれて」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
パリは霧にぬれてのネタバレあらすじ:夫婦の危機
ジルはふと気づくと、4歳のパトリックと霧の中セーヌ河を行き来する荷船に乗っていて、そして下りていた。家では8歳のキャシーと夫フィリップが心配して待っていた。カフェから電話をかけて夫に迎えに来てもらう。
ジルとフィリップはパリで子供二人と共に生活している。フィリップは科学関係の読み物の作家として成功していたが、ジルは2年前にパリに来て以来精神的に不安定で、最近は物忘れの多さに困っていた。精神科医との面接の日も間違えてしまう。ジルの精神状態は夫との仲にも陰を落としていた。
一方、フィリップには妻にも秘密の過去があった。彼は「組織」からの電話で呼び出される。もう組織と縁が切れていたと彼は思っていたが、組織の男は再び産業スパイの仕事に復帰するように迫る。従わなければ家族に危害が及ぶことをほのめかす。
やがてジルが子供たちとサーカス見物をした帰り、彼女の運転する自動車がトラックに追突するのを避けようとして横転・炎上。辛うじて人に大けがはなかった。ジルは自分の運転のせいだと思うが…。
パリは霧にぬれてのネタバレあらすじ:物忘れ
ジルには同じアパートの下の階に住むシンシアという親友がいて、彼女は子供たちとも仲良しだった。そのシンシアに、私が貸した傘はどうしたかしらと尋ねられたがジルは思い出せない。
さらにジルはフィリップの新作の出版を祝うパーティーのための黄色い新しいドレスを買ったつもりが、キャシーにそのドレスを前にも買ったことを指摘される。確かにクローゼットに同じドレスがあった。母が苦しむのを見てキャシーも泣き出す。
ジルは心配して精神科医に相談する。医師は傘の件についてはシンシアの方が間違っていて、実は傘を借りていない可能性があるのではとほのめかす。
パリは霧にぬれてのネタバレあらすじ:子供たちが消える
クリスマスシーズンが来た。デパートで買い物をした後、橋ではしゃいで走る子供たちをジルは見失う。そのまま子供たちは姿を消す。フィリップが出版記念パーティーに現れない妻を心配して帰宅すると警察からの電話で呼び出され妻を迎えに行く。その夜はシンシアと彼女のボーイフレンドも遅くまで夫婦に付き添うが子供たちは帰らなかった。
翌日、警察は潜水士を使って河を捜索する。やじ馬の中にパトリックのマフラーをしている男をジルが見つける。マフラーは河岸で見つけたと言う。
警察はジルに夫婦生活等について根掘り葉掘り聞いたうえ拘留する。精神的に不安定な彼女が子供と無理心中を図ったのではと疑っているのだ。
パリは霧にぬれてのネタバレあらすじ:ベビーシッター
そのころ子供たちは以前ハンセンと名乗ってベビーシッターに来たことのある女によって小さな城館に閉じ込められていた。パトリックは、おそらく昔の居住者が放置したゴミの中に小さなピストルを発見する。引き金を引くと弾が出て鏡を割ってしまう。音を聞きつけたハンセンが子供たちの所にやってくる。
一方、ジルは失踪直前にキャシーがハンセンのことを話していたことを思い出す。ハンセンはその日デパートでジルが電話をかけているすきに子供たちに接近したが、ジルがもどって来たので隠れたのだった。
警察はハンセンの身元を調べるが、本物のハンセンはスウェーデン人の女子学生で、子供たちを誘拐した女は彼女に頼んで彼女の名でベビーシッターに来たことがわかる。ジルへの疑いは晴れた。
パリは霧にぬれての結末:明かされる秘密
帰宅したジルはフィリップがシンシアにする告白をつい立ち聞きし、夫が組織のために働いていたことに加え、自分を夫が深く愛していることを知り、夫婦のわだかまりはとける。
その後、組織からの電話があってフィリップが外出した後、ジルはシンシアを訪れて彼女を問い詰める。この2年間下の階でシンシアが自分たちを監視していたことにジルは気づいたのだ。シンシアは組織のために働いていることを認める。
警察の車がフィリップの車を追跡していたために組織がフィリップに接触しなかったことを知ると、シンシアは子供たちを心配して監禁場所に電話をかけるが返事がない。シンシアはジルを車に乗せて出かけるが、ある場所に行って車内に戻った直後に、近づいてきた男によって射殺される。
ジルはシンシアがダイヤルした電話番号を思い出し、電話番号から警察が住所を割り出す。シンシアが死ぬときに手にしていた鍵で門を開けて刑事たち、続いてジルとフィリップが城館に入る。城館には「ハンセン」が子供に撃たれたと考えられる死体がある。さらに屋根裏部屋でジルはうずくまっている子供たちを発見する。
笑顔を取り戻した家族。キャシーが家族の前で描く絵には家の上に太陽が輝いていた。
以上、映画「パリは霧にぬれて」のあらすじと結末でした。
パリの朝。霧を分けるようにしてセーヌ川をゆっくりと進む船を、カメラが静かに追う。
ほとんど音のない画面。船は岸に着き、ひとりの女が降りる。
このオープニングの見事な出だしで、一気にミステリアスでアンニュイな映画的世界に引きずり込まれてしまいます。
この「パリは霧にぬれて」は、アメリカの作家A・カヴァーノの原作を、フランスを舞台にして名匠・ルネ・クレマン監督が映画化したシリアス・タッチのサスペンス・ドラマの佳作だ。
主役は、当時人気絶頂だったフェイ・ダナウェイ。
もう大きな子供が二人もいる人妻の役だが、例によっていかにも気だるくてうまい。
夫役は今や映画、ブロードウェイの舞台で大活躍の名優フランク・ランジェラで、電子工学の権威。
産業スパイの組織と手を切るためにフランスへ渡ったのだが、組織は彼の復帰を求めて二人の子供を誘拐する。
母親であるフェイ・ダナウェイが、必死の探索を行ない子供の行方を追うのだった。
夫は書斎でオート・スライドやディクタフォンを使う手の動きでその雰囲気を醸し出す、先端的な研究者。
妻は自分を持て余して、記憶障害に悩み、わずかに精神に異常を感じさせる女という設定なので、フェイ・ダナウェイというのは、やはり正しい配役だなというのがわかりますね。
鍵を握る善良な隣人が殺され、子供たちの居所はなかなかわからない——-。
この映画の原題である「木の下の家」の謎もうまくできていたし、ジルベール・ベコーの音楽も実にいいムードで、この映画の情感を高めていたと思いますね。