ルシアンの青春の紹介:1973年フランス,イタリア,西ドイツ映画。第2次大戦中、ナチスの協力者となった少年の姿を通し、人間を動かす運命の恐ろしさを描いたルイ・マル監督の秀作。アカデミー賞の外国語映画賞にノミネートされた。ジャンゴ・ラインハルトの曲が効果的に使われている。
監督:ルイ・マル・出演:ピエール・ブレーズ(ルシアン)、オルガー・ローウェンアドラー(オルン)、オロール・クレマン(フランス)、テレーゼ・ギーゼ(ベラ)、ほか
映画「ルシアンの青春」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「ルシアンの青春」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「ルシアンの青春」解説
この解説記事には映画「ルシアンの青春」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
ルシアンの青春のネタバレあらすじ:起
病院の床を掃除している少年。窓からふと枝に止まった小鳥を見ると、パチンコを持ち出して撃ち落としてしまいます。その少年・ルシアンは緑豊かな田園の道を自転車で駆けてゆき、自分の家へ。時は1944年6月、連合軍はノルマンディーに上陸してドイツ軍と戦闘中で、最早ヨーロッパの戦乱も終わりに近づいていました。ルシアンは猟銃で野うさぎを仕留めると、それを手土産に学校へ。そしてそこの教師と面会します。彼はこの地区のレジスタンスの運動のリーダーなのです。ルシアンは運動に加わることを希望しますが、その教師は彼がまだ17歳ということでそれを断ります。怒りを覚えながら引き下がり、家の手伝いをするルシアン。
ルシアンの青春のネタバレあらすじ:承
自転車に乗って町へゆくと、そこでゲシュタポの協力者に拘束されてしまいます。ホテルのバーにいるドイツの将校たちの前に連れてゆかれた彼は、うっかりと教師の名前を告げてしまうことに。教師はやがて逮捕され、拷問を受けます。ルシアンが役に立つと考えた将校たちは彼を密告者として採用し、その地域のレジスタンス参加者の情報を彼から得ることになるのです。
ルシアンの青春のネタバレあらすじ:転
彼はフランス人ゲシュタポの助手となり、その恫喝行為に参加。ドイツ側と通じていることはすぐに町に知れ渡り、下手に逆らうと密告されるというので、誰もがルシアンの言いなりになります。やがて服の仕立て屋のところで背広を作ってもらった彼は、その娘であるフランスに一目惚れします。彼はその力を利用してフランスに融通を図り、彼女を自分のものとします。フランスも実はユダヤ人である父・アルベールのため、そして迫害を恐れている祖母・ベラのため、嫌々ながらルシアンの言う事に従うのです。
ルシアンの青春の結末
しかしアルベールはもはや希望を失い、ルシアンと共にゲシュタポ本部に出頭。収容所送りに。戦況がドイツに不利に傾き、レジスタンス運動は活発さを加え、ゲシュタポ本部も襲撃されます。その報復をしようとしたドイツ軍がフランスとベラを逮捕しようとやってくると、ルシアンはドイツ兵を機銃で殺し、彼女たちと一緒に逃げ出します。無人の農家に落ち着くと、猟の知恵を活かし、食料を調達するルシアン。彼らの生活は平穏でした。しかしそれも長くは続きませんでした。ドイツが降伏すると、ルシアンはレジスタンスによって拘束され、裏切り者として処刑されるのです。
このルイ・マル監督の「ルシアンの青春」は、非常に苦い洞察のこもった、青春に関する人間映画の秀作ですね。
16歳のフランスの田舎の青年ルシアン。
彼は第二次世界大戦の中、レジスタンスとなって山へこもることを夢見ながら、実は全く逆に、ゲシュタポの手先となって、同胞へケチな権力を行使し続ける。
町にひそんだユダヤ人の美少女をモノにするも、そのヤリ口は野暮で尊大。
彼女の父や祖母に、大いに怖がられるが、それをいいことにつけあがるルシアンの青春。
そんなルシアンが、一転、本気で彼女をナチから守る気になり、朝靄の降り注ぐ中、彼女との牧神の午後のような幸福を味わったのも、実は束の間という、その終末を描くルイ・マル監督の視線には、まさに真実への抑制された涙があって、実にいいですね。