終電車の紹介:1980年フランス映画。フランス映画界の巨匠フランソワ・トリュフォーが、第二次世界大戦時のナチス・ドイツに占領されたパリを舞台に描きあげた長編作品です。夜間外出禁止令が敷かれ、劇場を守るために奮闘しながらも、地下に潜伏するユダヤ人の夫と、若手俳優との間で揺れ動くひとりの女優の愛を描き、フランス最高の映画賞であるセザール賞で作品賞や監督賞、主演女優賞など主要10部門を制しています。
監督:フランソワ・トリュフォー 出演者:カトリーヌ・ドヌーヴ(マリオン・シュタイナー)、ジェラール・ドパルデュー(ベルナール・グランジェ)、ハインツ・ベンネント(ルカ・シュタイナー)、ジャン・ポワレ(ジャン=ルー・コタンス)、アンドレア・フェレオール(アッレット・ギヨーム)、ポーレット・デュボスト(ジェルメーヌ・ファーブル)、サビーヌ・オードパン(ナディーヌ・マルサク)、ジャン=ルイ・リシャール(ダクシア)、モーリス・リッシュ(レイモン)、マルセル・ベルベール(メルラン)ほか
映画「終電車」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「終電車」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
終電車の予告編 動画
映画「終電車」解説
この解説記事には映画「終電車」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
終電車のネタバレあらすじ:起
第二次世界大戦中の1942年、ナチス・ドイツの占領下にあったフランス・パリ。パリ市民は自由を奪われ、夜11時以降は夜間外出禁止令が敷かれ、人々は家路を急いで地下鉄の終電車に殺到する日々を過ごしていました。そんなパリ市民の数少ない楽しみは演劇と映画でした。
モンマルトル劇場の看板女優であるマリオン・シュタイナー(カトリーヌ・ドヌーヴ)は、夫である劇場支配人で演出家のルカ(ハインツ・ベンネント)がユダヤ人であることを理由に南米へ亡命したことから、代わりに劇場の経営を取り仕切り、今まさにルカが翻訳したノルウェーの戯曲『消えた女』の上演の準備を進めていました。
マリオンは劇場を存続するために、ナチスに対しては決してユダヤ人を雇わないと誓い、現在の演出家であるジャン=ルー・コタンス(ジャン・ポワレ)は上演許可を得るために、ナチス御用達の演劇評論家ダクシア(ジャン=ルイ・リシャール)と親しい関係を築いていました。
終電車のネタバレあらすじ:承
そんなある日、『消えた女』でのマリオンの相手役として、他の劇場から移ってきた若手俳優のベルナール・グランジェ(ジェラール・ドパルデュー)が起用されました。ベルナールはこれまで数々の女性を口説いてきましたが、マリオンを美しいと思いつつも、口説くことはできませんでした。
稽古が終わると、ベルナールはカフェで複数人の若者たちと何やら話し込み、その一方でマリオンは誰にも気づかれないように劇場の地下室へと向かいました。何とそこにいるのは、南米への逃亡を偽って潜伏していたルカであり、このことを知っているのはマリオンとルカだけでした。マリオンは密かにルカの国外逃亡の手配を進める一方、ルカは稽古の様子を通風孔の管伝いに聞きながらマリオンに助言していました。
しかし、国外逃亡の仲介業者が摘発されたことから、ルカがまだフランス国内に潜伏していることが発覚、更にはナチスの元帥の暗殺に用いられた爆弾が、マリオンの劇場所有の蓄音機に仕掛けられていたことから、劇場を取り巻く環境は次第に悪化していきました。
終電車のネタバレあらすじ:転
ナチスの将校たちがこぞって観覧に詰めかけるなか、『消えた女』は初演の日を迎えました。マリオンは開演時間に遅れてきたダクシアを小さな声で「最低の批評家」と罵り、初日は拍手喝采のもと成功に終わりました。しかし、ルカは初演の出来には満足せず、ダクシアは翌日の新聞でベルナールの演技は評価しつつも結局はいつものように「ユダヤ的だ」と酷評しました。
そんなある日、レストランでダクシアを見かけたベルナールは、彼を外に連れ出し、酷評への謝罪を要求しながらダクシアに暴力を振るいました。何とかその場を収めたマリオンは、ベルナールを厳しく叱り、それから二人は稽古以外で会話を交わすことはありませんでした。
それでも『消えた女』は好評を博し、ロングランも視野に入っていたその時、ベルナールが突然降板したいと申し出てきました。ベルナールの正体は、実はレジスタンスの一員であり、仲間が逮捕されたことを受けてレジスタンスの活動に専念しようと考えていました。ベルナールから正体を明かされたマリオンは思わず彼の頬を叩きました。
終電車の結末
公演期間も残り少なくなってきたある日、ゲシュタポが突然、劇場になだれ込んできました。マリオンから助けを求められたベルナールは地下室に向かい、そこで初めてルカと対面すると彼をゲシュタポから守るために何とか庇い抜きました。
マリオンとベルナールが惹かれ合っていることに気付いていたルカは、ベルナールに「妻は君を愛している。君は彼女を愛せるか?」と問いかけましたが、ベルナールはその場では何も言えませんでした。
やがてベルナールが劇場を去る日が訪れ、ベルナールとマリオンはそれぞれの想いを打ち明け、二人は口づけを交わすと、誰もいない化粧部屋で初めて結ばれました。
1944年8月、連合軍が遂にノルマンディーに上陸しました。パリ解放も目前に近づき、ナチスの敗色も色濃くなり、ルカはようやく813日ぶりに地下室から太陽の下に出ました。
モンマルトル劇場は戦禍にありながらも上演を続け、この日はようやく自由を得たルカの演出による、新たな演劇が上演されようとしていました。男女の愛憎を描いたこの作品でマリオンとベルナールは堂々と主役を張り、カーテンコールで観客からの万雷の拍手喝采を浴びたマリオンは、ベルナールやルカと手を取り合い、晴れやかな笑みを浮かべました。
以上、映画「終電車」のあらすじと結末でした。
ナチス占領下のパリ。モンマルトル劇場の支配人で、ユダヤ人のルカは、亡命を宣言しながら、実は劇場の地下に隠れていた。
それを知っているのは、妻のマリオンと、相手役のベルナールだけ。
地下から演出を指図していたルカは、二人が愛し合っている事を察知する。
パリ解放の日、三人は不思議な関係で結ばれる。
フランソワ・トリュフォー監督の「終電車」は、カトリーヌ・ドヌーヴの熟れた魅力が、全面開花した作品で、彼女の美しさがこの映画を支配している。
舞台女優という役もよく似合って、トリュフォーの映画にしては、異例な程、大人の官能に満ちている。
「突然炎のごとく」のような複雑な三角関係が描かれるのだが、大人の演技が出来る三人の俳優が組んでいるので、リアリティが感じられるのが、とてもいい。
舞台での恋人同士が、現実でも惹かれあい、この二人は実は地下の男に演出されているという、現実と芝居が交錯する二重三重のトリックが、実に面白い。
とりわけ、この三角関係の結末を演じるシーンが、実は舞台の上だったというオチに至っては、え?という感じなのだ。
トリュフォーは、いつもながらの映画のスタイルや技法を弄びすぎるきらいはあるものの、やはりフランス映画きっての技巧派である事を、この映画でも証明している。