太陽の紹介:2005年ロシア,イタリア,フランス,スイス映画。太平洋戦争終戦前後、最後に残った天皇の処遇。現人神としての天皇が、日本の未来と国の平和を望み下した決断とは。
監督:アレクサンドル・ソクーロフ 出演:イッセー尾形(昭和天皇)、ロバート・ドーソン(マッカーサー将軍)、佐野史郎(侍従長)、桃井かおり(香淳皇后)、つじしんめい(老僕)、田村泰二郎(研究所所長)、ゲオルギイ・ピツケラウリ(マッカーサー将軍の副官)、ほか
映画「太陽 (2005年)」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「太陽 (2005年)」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
映画「太陽 (2005年)」解説
この解説記事には映画「太陽 (2005年)」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
太陽のネタバレあらすじ:終戦直前の日本の中心
皇居の地下で二人の侍従を置き、一人食事をする昭和天皇。ラジオをつけてくださいと頼むと、威勢の良い軍歌が流れだした。別の局では沖縄の絶望的な戦局が伝えられていた。今日の予定は閣僚と軍首相との会見、世界の海洋動物の研究、午餐、午睡、書き物、皇太子様に至急ご返事をと侍従の一人が述べた。陛下がもしここに米軍が来たら日程はどうなるのか、日程を変えるのかそれとも従来どうりかと尋ねると、日本人が一人でもいる限り米軍は来ないと侍従は答えた。軍首脳との会見前、執務机のランプをつけ電気が通っていることを確かめた陛下は、最後に残る日本人が自分だけという事にはならないかという疑問に、それは思い過ごし、天皇陛下が「人間であるかもしれない」と思うこと自体が思い過ごしで、日本人そのもの、天照大神の現身であると思えば、最後の一人の日本人にはなりえないと侍従は答えると、陛下は自分の体は神のしるしを何も持たない、人間と変わらない体だと冗談めかし、戦争を早期にやめられない事や、ローマ法王から手紙の返事が来ないことを嘆いた。会見で、戦局は日々に悪くなり、本土決戦が迫っている事に対し、明治天皇の御歌を引き合いに出し、平和を委ねられたが、いかなる代価を払っても平和を獲得するようにとは遺言していないと語った。会見場を後にすると空襲警報が鳴った。午後、県救出で、平家蟹のホルマリン漬けを取り出し観察する陛下は、この蟹が自分の岸辺をけして捨てない事を研究員に語った。そして、大東亜戦争の原因は日本が擁護した、人種平等について反響がなかった上アメリカで人種差別が起き、それに伴い軍人が立ち上がったとの考えを書記させた。米軍が迫り退避豪へ誘導される中、自分はドイツの首相にロシアではなくアフリカに軍を送るように進言したけどダメだった事、現人神であるという主張に対して体は人間のそれと変わらないと言うと閣僚達の反感と怒りをかった事を訥々と語った。
太陽のネタバレあらすじ:敗戦後、残された天皇の運命
空襲警報と、破壊されていく町を見下ろす夢から目覚めた陛下は、ベッドから置きだすと、歌をまず書き、皇太子へ、敗北について至急話がしたいという手紙を書いた。そして皇后陛下と皇太子とのアルバム、外国のスターやヒトラーをはじめとした政治家の写真を広げた。占領軍司令部からの迎えに陛下が服を整え外へ出て振り返ると、玄関ホールで侍従が目頭を押さえているのが見えた。車に乗せられ走り出すと、ベランダの研究員が頭を下げていた。庭に残された一羽の鶴は鳴き続けた。焼けた街並みと焼け出された人民を見ながら、占領軍本部につくと、陛下は一人、司令官の部屋へ通され、通訳をはさみ連合軍の指令に従うかを問われた。陛下はどのような決定でも受け入れると答えた。英語での何気ない問いに英語で答えると、通訳は英語で話してしまうと司令官と同等になってしまうので日本語のままで話すようにと口添えをした。日本語のわからない司令官はそれを何かの企みと疑い、十日間の拘束を命じ通訳を下がらせたが陛下が通訳を司令官の従者と思っているからか、再び呼び寄せた。戦争に負けたのは国が傲慢だったから。戦闘と平和に、怒りは助言にはならない。外相はイルクーツク、シベリアまで進軍させるように提案したが拒否した。首相は財政を理解しておらず、軍人にばかり耳を貸した。借りたものは返済しなければならない。二兎を追うものは一兎をも得ずと語った。そして最近は海洋生物の研究をしているとも。司令官と通訳には、思い出を語る子供のように映った。
陛下が去ると、ワシントンから入電があり、戦犯は共謀の恐れがあるので自宅に監禁という決定を下した。
太陽のネタバレあらすじ:人間として、現人神として
文机を整え、銅版画を見ていると、隣の間では占領軍総司令部からの贈り物を侍従たちは見ていた。それは大量のチョコレートで、毒見をした侍従があられの方が好きと言うと、ハイ、チョコレートおしまい。と言ってその場はお開きになった。陛下の話を聞きに呼ばれた研究員は、戦争中も科学の研究を続けられていた事を称えた。そして、極光についての話を陛下は聞きたがった。明治天皇が皇居上空で不思議な光を見たというのを大正天皇に話していたからだった。不可能だと研究者が答えると、陛下は明治天皇が話されたことを疑うのですか、と逆に聞いた。研究者は東京の緯度では極光を見ることは科学的には不可能。しかし明治天皇は偉大な歌人の霊感をもってその光を極光と受け取られたのかもしれない、そして家族に伝わるこの話が子供の頃から陛下を不安にさせるのだと打ち明けた。帰り際、何も食べていない研究者に例のチョコレートを持たせた。後日、陛下は庭先で占領軍の兵士たちに写真を何枚も取られた。そして通訳としてやってきた兵士に司令官との食事に誘われ、それに応じた。
太陽の結末:司令官との食事、そして下した決断
現在未解決の問題はただ一つ、天皇の運命だった。先日写真を撮ったのは、天皇陛下が人間だと分かれば、人々は寛容になるだろうという目論見からだった。現人神の気分はどうかという問いに対して、生活は楽ではない。趣味、習性について怪しまれることがあると言って、鯰について語り始めた陛下に、急用があると言って司令官は席を外した。そして戻ってきた司令官は、陛下の家族の所在を訪ねた。現在はアメリカの所業を恐れて疎開させていた。訝しむ司令官に原爆の話をすると、真珠湾の話を蒸し返され、双方とも命令を下したのは自分ではないと言った。今、日本の未来は天皇の決断次第だった。皇居に帰った陛下は、侍従を下がらせると、国の平安のために自分の神格を返上する決断を下した。そこへ皇后陛下が疎開先から帰ってきた。陛下は真っ先に、私は成し遂げた。これで自由だ。もう神ではない。現人神の運命を拒絶した。と話した。そうだと思っていたという皇后陛下に、普通の人に見えるかと尋ねたり、新しい歌ができたと話したり、どこか和やかだった。大広間には皇太子をはじめとする子供たちが帰ってきていて、侍従に呼ぶように申し付けた。そのついでに、陛下は自分の人間宣言を録音した技師の若者はどうしたかねと尋ねると。自決したと侍従は答えた。止めたのか問いただすと、侍従はいいえと否定した。それを横で聞いていた皇后は子供たちの待つ広間へと陛下の手を引いた。光の刺す廃墟、エンドロールの後ろにラジオのかすかに聞こえる。
太陽のレビュー・考察:昭和天皇の悲劇と皮肉
陛下は戦争中も研究を続けるほど科学の研究に熱心だったように描かれている。それは、現人神として、科学を越えた存在である陛下がその研究を行うことで、自分の体が人間のそれと変わらない事に気づき、また、自然現象にも神の視点ではなくあくまでも科学者としての視点を失うことなく、ただ不思議な現象と言うだけでなく、科学的論拠を求めている。その昭和天皇が、現人神であることを返上し人間であるという宣言に至ったのはとても自然になるべくしてなされたように思えてならない。
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