大統領の執事の涙の紹介:2013年アメリカ映画。実在の人物ユージン・アレンをモデルとし、34年間ホワイトハウスの執事として仕えたアフリカ系アメリカ人の、歴代の大統領との交流や、妻、反発する息子との関係を描いた映画です。
監督:リー・ダニエルズ 出演:フォレスト・ウィテカー(セシル・ゲインズ)、オプラ・ウィンフリー(グロリア・ゲインズ)、ジョン・キューザック(リチャード・ニクソン)、ジェーン・フォンダ(ナンシー・レーガン)、キューバ・グッディング・Jr(カーター・ウィルソン)、ほか
映画「大統領の執事の涙」ネタバレあらすじ結末と感想
映画「大統領の執事の涙」のあらすじをネタバレ解説。予告動画、キャスト紹介、感想、レビューを掲載。ストーリーのラストまで簡単に解説します。
大統領の執事の涙の予告編 動画
映画「大統領の執事の涙」解説
この解説記事には映画「大統領の執事の涙」のネタバレが含まれます。あらすじを結末まで解説していますので映画鑑賞前の方は閲覧をご遠慮ください。
大統領の執事の涙のネタバレあらすじ:起
綿花のプランテーションで奴隷として使われていた子供・セシルは、白人の農場主に母を慰みものにされたうえ、父を目の前で殺されます。その場にいた他の黒人たちは同僚が殺されても何もすることができず、白人と黒人の間には天と地ほどの身分差がありました。哀れに思った農場主の母親はセシルを給仕係にし、セシルはそこで給仕について学びます。
成人したセシル(フォレスト・ウィテカー)は農場を出ますが、差別意識が根強かったアメリカで黒人が生きていくことは難しく、空腹に耐えかねたセシルは商店に忍び込んで食べ物をあさっているところを、黒人の使用人に見つかってしまいます。セシルは使用人に救われ、白人社会で黒人が生きていくための術を身につけていきます。
使用人としての振舞いを教わったセシルはワシントンDCへ行き、白人向けの高級ホテルで給仕の仕事に就きます。そこでの暮らしは今までとは比べものにならないほど満ち足りたもので、セシルは自家用車を購入したり、一軒家に住めるようになり、グロリア(オプラ・ウィンフリー)と結婚して2人の息子の父となるのでした。
そこでの仕事ぶりを認められたセシルは、ホワイトハウスの執事の仕事を紹介されます。ホワイトハウスにはセシルの他にも多くの黒人執事たちが仕えており、彼らとともにホワイトハウスの執事として勤めることになるのでした。
大統領の執事の涙のネタバレあらすじ:承
「部屋の中では存在を消し、空気になる」。セシルはこの教えを胸に、緊張した面持ちで大統領のもとへお茶を運びます。セシルはドワイト・アイゼンハワー(ロビン・ウィリアムズ)、ジョン・F・ケネディ(ジェームズ・マースデン)、リンドン・B・ジョンソン(リーヴ・シュレイバー)など、歴代の大統領に仕え、時代の移り変わりとともに白人と黒人の関係も少しずつ変化していくことになります。
セシルの長男ルイス(デヴィッド・オイェロウォ)は大学に進学し、キャロル(ヤヤ・アラフィア)という女子学生と知り合います。ルイスはキャロルと2人で公民権運動に関わるようになり、黒人差別撤廃のため、食堂で白人専用席に仲間たちと座り込み、逮捕されてしまうのでした。セシルは息子の行っていることに反対し、強く叱りながらも自分の仕事に打ち込みます。その間に妻のグロリアは孤独を深め、少しずつ2人の関係がぎくしゃくし始めるのでした。
ある日、ルイスやキャロルが乗ったバスが白人至上主義者たちによって襲われ、爆発炎上してしまうという事件が発生します。息子の安否すらも分からない状況で心配しているセシルとグロリアのもとに、ルイスから電話があり、何とかバスから逃げ出したルイスは、またしても収監されてしまうのでした。
ケネディ大統領は黒人差別を撤廃するために公民権法の制定を呼びかける歴史的なスピーチを行ないますが、その後まもなくして何者かによって暗殺されてしまうのでした。セシルはケネディ大統領暗殺の知らせを受けてその場に座り込み、涙を流します。
大統領の執事の涙のネタバレあらすじ:転
黒人による差別撤廃の運動は各地で起こり、アメリカ国内ではベトナム戦争に対する反対運動も活発化していました。そして公民権運動の中心的存在であったキング牧師が暗殺される事件が発生すると、セシルが帰途につくまでに多くの黒人たちが悲しみに暮れ、暴徒化しているのを目の当たりにし、社会の意識が変わっていくことを感じるのでした。
ルイスは黒人差別撤廃で過激な思想を持つブラックパンサーの党員となっていました。セシルは久しぶりに実家へと戻ってきたルイスを追い出し、息子との関係は最悪のものとなります。ニクソン(ジョン・キューザック)が大統領に就任した際には、グロリアは孤独からアルコールに依存するようになっていました。
やがてルイスは党員の過激なやり方に反対し、キャロルやブラックパンサーと決別することになります。セシルはグロリアを孤独に追いやった自分を反省し、2人は再び仲の良い夫婦となるのでした。
一方で次男のチャーリーは大学を中退し、家族の反対を押し切ってベトナム戦争への参加を志願します。夫婦そろってダンスパーティーへ出かけようと準備をしていた夜、チャーリーは戦死者として帰宅することになるのでした。
大統領の執事の涙の結末
大統領はロナルド・レーガン(アラン・リックマン)へと移り変わり、セシルが何度も給仕長に訴えていた白人と同等の給与と昇進という待遇が、レーガンの肝入りでやっと実現されます。セシルはレーガン夫妻の晩餐会にグロリアとともにゲストとして招待され、そこで初めて給仕される側の気持ちを味わうことになります。自分も含めて白人に仕える黒人たちは2つの顔を持ちながら仕事をしていたことを、セシルは改めて思い知らされるのでした。
セシルはグロリアと殺された父親の墓参りをします。そして今や議員となっていた息子ルイスが、かねてから行っていた活動こそが黒人のための戦いであったことを悟り、長年仕えていた執事の仕事を、大統領をはじめ多くの同僚から惜しまれる形で辞職するのでした。
そしてレーガンの人種政策を批判するデモ活動を行っていたルイスの前にセシルが現れ、その活動にセシルも参加し、ルイスと一緒に収監されます。しかしそこにはどこか満足気なセシルの顔がありました。
2008年、アメリカ初の黒人の大統領となったオバマから、セシルはホワイトハウスに招待されます。ホワイトハウス内で待っていると「ご案内します」とやって来た執事に「必要ない」と話し、セシルは歩いていくのでした。
以上、映画「大統領の執事の涙」のあらすじと結末でした。
「大統領の執事の涙」感想・レビュー
-
生まれ育った米国南部の綿花畑を飛び出したセシル少年。ひょんな事からホテルボーイとなり、気の利いた仕事振りで評判が評判を呼び、ついにはホワイトハウスの執事にスカウトされ、8人の大統領へ仕える事となる。
公民権運動、ケネディ暗殺、ベトナム戦争、、様々な出来事や時代の激しいうねりを直接肌で感じ翻弄されつつも、あくまでも空気の如きクロコに徹した彼の、静かな佇まいの内に秘めた思いと美学。それは日々接する大統領達のココロをも、いつしか開いてゆく。
奴隷制度がそう遠くない時代にまだ存在していた事に改めて衝撃を受けたと同時に、人間の尊厳、そして(somebodyでなくとも) nobodyとしての生き方、在り方を深く考え(反省)させられた。
冒頭があまりにも衝撃的で、真夜中に見たせいもあり見終わってもなかなか寝付けませんでした。テーマが人種差別という事で心がザワザワしっぱなし。最後はハッピーですが、深く考えさせられる映画でした。泣きました。